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Fake Market

全国の映画館で、アメリカ映画の「エンロン」が上映されていたが、そろそろDVDになって、ビデオ屋さんに出回るころかもしれない。エンロンとは、不正会計が発覚して2001年の12月に破綻した全米売上高第7位の大企業としてもてはやされていたエネルギー複合企業のことである。アメリ力における、「錬金術」の幻が明らかになった空前の規模の経済事件を描いた映画だ。
 ノンフィクションに近く、CNNや新聞記事、その他の現実に撮影された映像を構成してつくられている。国家と人間の暗部を抉り出すような二時間の長編映画で、圧倒する資料の集大成である。「時価総額」という上場会社の評価基準を用いて、株価を操作し、巨大な資金調達と、ストックオプションなどで、企業から資金を収奪していくさまが描かれている。
 証券アナリストも、会計事務所も、銀行などの金融界も、誰も異議を唱えず、新たなビジネスが出るとほめそやすばかりで、実態のない空の城が崩壊していくまでの過程を描く。ブッシュ政権との癒着ぶりも現実の大統領の記者会見の映像や、会長ケネス・レイとの写真などを駆使して、隠しようもなく暴いている、令名のグリーン・スパン氏が、エンロン賞という賞の受賞者であって、その式典の模様の記録映画の挿入などは、アメリカという国の中枢にいた人間がかかわっていた実態を示している。
 アーサー・アンダーセンという会計事務所は、そのいかさまを見抜くことをせず、むしろ加担したとして、破綻したことは、もう周知のことである、パイという財務担当重役は、さっさと会社を逃げ出して、いまでは、コロラド州の土地を買って、大地主の生活をしている。〔なんと飛行場つき〕とのすっぱ抜きなども映像となっている。米国議会の聴聞会の追及場面などは、実写の記録を使っているので、圧巻である。
 時価会計で、粉飾の決算を用いて、市場を欺き、天文学的な負債を隠滅する手法などを明らかにする。特別目的事業体、即ち連結決算から外すことのできる空虚な子会社をつくり、資金を流用して、あるいは横領する手口が明らかになる。ブロードバンドを市場化するという名目で、通信回線の帯域幅までを投機の対象とする、あるいは、天候デリバティブというような、投機の派生商品までを生み出す過激さがいかんなく描写される。企業拠出型の年金がまったく食い物にされ、自社株買いで、無価値になった株券を抱える社員の悲惨も描き出される。
 エンロンという悪魔の企業が、牙をむいたことがはっきりしたのは、カリフォルニア州の大停電であったが、停電の真犯人がエンロンであったこととその内幕を、エンロンの取引人の会話記録のテープをもとにして、映像で抉る。なすすべもない州知事と、エンロンに加担する?アメリカ大統領の関係も当時の取材記録の映像で明らかにする。
 日本の関係者も、「本当に危ないところでした。日本でもエンロンの影響下で、青森県や山口県の一部で、発電所をつくって電力の自由化を促進する話まで現実にあったのですから」と語っている。エンロン事件が、明るみに出たのが9.11直後だったが、多くの識者は、9.11よりも衝撃的であったするほどの、資本主義の根幹をも揺るがす大事件だった。アメリカの経済・政治のいかさまと、具体的には、会計制度の欠陥が露呈したわけである。
 ライブドアの事件が、検察の追及を受けるようになったのが、1年前の1月17日だから、この国でも、あわてて日本版の法規制が始まっているが、エンロン事件ひとつを見ても、この事件に加担した日本の関係者は野放しの状況にある。電力の自由化、高速道路の民営化、通信・放送のインフラの切り売りなど、エンロンを真似た動きが、この国でももてはやされたことがつい昨日のことのようだ。
 政府の規制緩和会議の議長の職にあった者の会社が、ニューヨークにエンロンと合弁会社をつくっていたことを忘れてはならない。日本の法律では、不正行為を働いた経営者に対する処罰はきわめて軽いどころか、「利益相反」の経営者が横行している現実がある。 郵便局を目の敵にしていた銀行の頭取が郵政会社の社長になり、監督機関の長官が、郵政金融会社の実施責任者になるなども、おかしなことである。また、不正な手段で取得した利益を完全に没収されることもないようだ。中央銀行の総裁が、そうした連中に加担して、まだ失職もしないという、アメリカ以上の「拝金」の異常な事態がこの国では継続されている。会社法の改正などは、むしろ逆行した、倒錯の改悪だったのではないだろうか。
 残念ながら、この国では、マスコミも、政権が代わったいま、ニュース映像を活用して、映画「エンロン」のような歴史の保存・検証のための番組をつくるようなところは皆無で、見当たらない。
 郵政民営化論の実態は、エンロンのような虚飾に満ち満ちたものである。郵政などの公企業を市場に参加させて、操作して、私物化しようというだけの、ウォールストリートのこわもての連中が参画した陰謀の気味が濃厚だ。この映画を見れば、市場がいかに不完全なものか、悪魔のような経営者連中に、いかにだまされやすいものか、株式会社という制度がいかに脆弱なものであるかがよくわかるし、野放しになった人間の欲がいかにすさまじいかがよくわかる。
 小泉政治の市場原理主義礼賛は、エンロンを礼賛するようなものだった。市場原理主義が採用される郵政民営化の真実と背後関係に関心のある向きに、この映画「エンロン」を観られるよう勧める。
 そして、国民資産の収奪に対抗して、強靭で心やさしい日本をつくる方がよっぽど大切である。
 

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