構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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Free way or privitized roads

山崎養世氏が、単行本を出版したので、紹介したい。『米中同盟を知らない日本人』(徳間書店)である。山崎氏は、ベストセラーとなった『日本列島快走論』で、高速道路の無料化を提言して国土の有効活用を図るべきとして、その道を閉ざしてしまう道路公団の民営化に異議を唱えた気鋭の論客である。第五章に日本列島快走論のエッセンスをまとめている。東京湾アクアラインがタダになれば、房総半島がリゾートと退職者のための別天地になる、淡路島や、四国の架橋が無料になれば、阪神が2時間で太平洋に繋がり、さまざまなことができると主張する。極端に東京に集中した交通体系の変更の提案で、単なる思い付きではなく、欧米での過去の道路政策の歴史、国内の高速道路建設の経緯を踏まえているから説得力がある。高速道路無料化を達成すれば、田園都市が創造できると新たな構想にも発

展させている。『日本はクルマ作りでは世界一です。それなのに,クルマが使えない道路システムを作ってきました。そのために、鉄道のある大都市しか選択肢がない、窮屈な国土ができたのです。もったいないことです。」とまとめる。「中国が小泉政権を生んだ」という第三章は、皮肉なタイトルで、米中間の実質的な経済補完関係がある中で、郵政民営化をシンボルにして対米従属をしながら、規制緩和と市場原理に偏向した政策の内実と背景を注意深く描写・分析する。「小泉改革によって進んだのは東京や名古屋のような景気のいい大都市とそれ以外の地域との二極分化でした。公共事業を切り捨てられた地方の経営はますます苦しくなり財政負担が増える、と言う悪循環が起きています』と。本の題名の基となる、第二章「米中経済同盟で世界は動く」は優れた論文で、黒字でドルを溜め込んだ80年代の日本を狙い撃ちにして米国債を買わせたレーガンの策略と、90年代に手を組んだ鄧小平の振り付けによる米中経済同盟の成立についての解説が内容だ。人民元を切り上げないのはアメリカ、米中がお互いにトロイの木馬になる、との小見出しをつくりながら、1985年のプラザ合意をもたらしたきっかけ、その直前の9月7日に当時の中曽根首相が日本の金融機関の米国際投資を規制し円安を円高に転換する方針を発表したことだったとする内幕に通じるコメントを述べる。もともと山崎氏は、大和証券に勤務したことがあり、中曽根総理のブレーンであった故徳山二郎氏と親交があった。「中曽根発言で、為替は円高に転じ、米国債が暴落しました。ジャパン・マネーのパワーがマーケットを揺るがした瞬間でした」とさらりと書いてある。『円高になれば日本企業が打撃を受け、アメリカ企業が復活する、と言うアメリカの目論見は外れ』、バブル経済に突入し、バブルを崩壊させた後には、米中経済同盟が進む中で、日本の金融はバブルの崩壊の処理に明け暮れたと解説する。山崎氏は、大和証券勤務を経て、米のゴールドマンサックスの投資信託の部門の社長なども歴任しているから、外国資本の動きには通暁している。文章は微妙に書かれて歯切れの悪い箇所もあるが、「戦争か平和か」との第四章では、激動する経済現場での中で著者の経綸問答の積み重ねがうかがえて興味深い。西郷南洲、中江兆民や、あるいは最終章の二宮金次郎にまで触れる。カントの平和論への言及は、日本の経済界の無教養主義の傾向が指摘される中で、なお新鮮である。長い引用になるが、「日本でも、国内の金融機関が二の足を踏んだような会社や不動産をアメリカの投資家が買い(中略)、日本政府がアメリカ政府から5%受け取り、日本の民間がはるかに高い収益をアメリカの金融機関やファンドに渡すと言う構図ができてしまったのです。(中略)財政の悪化が予想される日本が100兆円もの外貨準備を惰性で利回りの低い米国債に運用しているのは怠慢意外のなにものでもありません。(中略)国民の財産である外貨準備は大きく取り崩すか、さもなければ、より高い収益の上がる世界の投資対象に投資すべきでしょう。それと同時に、民間ではできない資源の確保や戦略的に重要な国への投資などにも振り向けるべきでしょう。」と痛烈な批判も吐露している。ちなみに、山崎氏は、郵政民営化問題については、郵貯資金を地域経済や中小企業の活性化のために新たな仕組みをつくり、郵貯の証券化という形で構築することを提案していた。郵貯資金量の2割程度を、国債プラス2パーセントぐらいで回ると言うことで、郵貯にも大きなメリットがあるとの主張であった。。「単純に官は悪で、民は善、こんな論議は世界のどこの歴史を見てもありません、アメリカで20世紀初頭に始まった独占禁止政策と言うのは、横暴なる民間企業をどのようにコントロールするかと言うことだ」と述べていた。『このままでは日本はまた世界から取り残される』ことを憂えて、世界的な視野を踏まえて、より良い世の中にしたいと思う読者のための好著である。高速道路や郵政の民営化の呪文を唱えるだけで、国民資産を有効活用しようとしない怠慢に憤り、世界の環境変化に適応しない日本を憂える思索の結果が、良くまとまっている。

 

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