構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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Out of Focus

郵政民営化 西川体制でやれるのかと題する社説を朝日新聞が掲げた。7月13日である。的外れである。

組織が緩んでいないかと不安にさせられるような話も耳に入るとあるが、緩んでいるのは経営陣の方ではないのか。前総裁は、郵便局マスタープランと称する、郵便局いじめの改悪案を提示して、総スカンにあったが、将来に対する不安があるから、士気が下がっているのである。トヨタ生産方式も、郵便局の現場では不評である。マネージメント自体が、はやりのアメリカ経営型で、実態に合わない市場原理主義の色彩が濃厚な経営手法であった。「局長がいつも現場を留守にして、職員任せにしていて、果たして民営化の荒波へ漕ぎ出せるのだろうか」などと書くと、ほとんど言いがかりで、特定郵便局長に対する中傷だ。参議院で否決された法案を反故にして、衆議院を解散した刺客選挙をどう捉えているのか、などとの大議論もなく、大新聞にしてはまったく弱いものいじめで見識がかける。議会制民主主義を反故にした民営化法案の議論であったから、当事者の郵便局関係者が必死になって、その是正の糸口を見つけようとするのは当然のことであり、見方によっては健気な努力とするほうが正鵠を得ている。確かに、郵便局は民営化の成否を左右するが、4分社化で、郵便局会社の経営基盤をおろそかにして、制度設計を間違えた付けが回ってきているのではないのか。「有能な窓口になれないと、ゆうちょもかんぽも郵便局を見限って独自の販路の構築に精を出す可能性がある、そうすると経営が行きづまる」と書く。だから、おかしいのではないのか。竹中側近が、金融と非金融の分離が郵政民営化の本質だとどこかで回顧していたが、そうして、郵便局会社が路頭に迷う可能性は、法案審議の時から指摘されていたではないだろうか。大新聞の論説がその程度の論点にも気がつかなかったとは驚きである。だからこそ、三事業一体のシナジー効果を狙った、同じ屋根の下での、経理区分を明確にした一体経営が優れていると採算の主張があったにもかかわらず、修正案も出さず、しかも、新旧勘定を分離して、郵貯と簡保とを廃止して、今の国民資産を、独立行政法人に管理させるという奇策を、しかも国鉄の民営化のときすら採用しなかった制度を導入したのは、財政赤字の補填を意図しているのではないかと、邪推?させるようになったのである。郵政民営化の基本的な問題についての認識が、あまりにも浅薄であり、国論を二分する議論があったことを忘れtかのような社説である。

「懸念が出ているもうひとつの理由は、・・西川善文氏の求心力不足にある」という。そもそも、西川氏が就任したときに、経済からも、利益相反の声があったことを忘れたかのようである。郵便貯金の廃止を主張していた全国銀行協会の会長職にあったものが、前向きの経営に当たれるわけがない。人間は、国策に関する意見を会社を替わっただけで変える人にたいした人物があるわけがない。しかも、金融庁長官の職にあった人が、副総裁になっているなど、人事の私物化が行われたからではないのか。最近生田前総裁が、引き連れてきた要員もどんどん去っていることも書いていない。西川氏の登用については国会での議論もなかったが、そうして民主主義の基本の適正な手続きが不足していたことを指摘する方が、見識のある大新聞の社説だろうと思う。だれも、イトマン事件のこととか、旧住友銀行絡みの、真昼の暗黒のような事件のことも思い出したくないことは事実であるが。

前職頭取時代からの兼務である社外役員についていることが問題だという。たしかにそうだが、本質は、公職にあるものが、厳密に職務専念義務に違反しているかどうかの話だ。もし、前職の引継ぎだと、ただしに、その兼職を辞任すべきだと主張するのが、大新聞社の論説であれば迷いがない。公の組織を私物化すること自体が許されない。

社説の末尾にはこう書いてある。「現場をになう職員は、トップのふらふらした構えを見ている。」と。これは正しい。職員だけではなく、国民の大多数が、民営化でいいのかと考えている。もう、地方では、サービスダウンが起きておりこんなはずではなかったとの声が上がっている。国会での質問趣意書に対する回答が、サービス水準の維持ができているというものであっても、それは、形式的な話で、どうにもならないあきらめの気分が蔓延していることも良く知られている。末尾の表現は、最後に「西川体制で郵政民営化を乗り切れるのか、心配だ」と書くが、郵政民営化自体が、そうした私物化、市場原理主義、アメリカ追従の一部の政治家、経済人の追及した地方切捨ての政策であって、大新聞が社を上げて賞賛するような話ではない。もともと制度設計に欠陥があり、日本の社稷を破壊しようとすることであるから、まさに、ふさわしい人事というのが、それまでの朝日新聞の論理であれば、一貫することになるのかもしれない。

最近、ダイヤモンド社から、金融の罠と題する、郵政民営化が金融の安定を破壊するのではないかという警告の書が出版されたが、そうした金融論の分析もない。

朝日新聞は戦前から、左に揺れ右にゆれ、定見のない新聞として知られているが、各面での記事はともかく、小泉:竹中政治の亜流に追従した経営者が、全国津々浦々にてんかいする大組織を経営ができるわけがないのではないだろうか。再来週に迫った参議院選挙が、天王山となっているのは、社会保険庁のずさんな話とは別に、営々として日本の発展のために基礎をになってきた郵便局がばらばらにされる事態を見て、これを見直し修正させようとする、ささやかな抵抗が、いずれは大きな伏流水となり、美しい滝となって地表に現れるタイミングだと考えた方が美しい話になるのではないだろうか。民営化と称する官僚支配の「米営化」では、うまくいくわけがない。失われた十年の中で、経営が悪かったのは銀行であって、郵便局ではない。資金運用に失敗したのは、郵便局ではなく、政府のしきん運用当局ではなかったのか。事実を把握しない社説は、心配を通り越して怖い話になる。

最近、朝日新聞について、同社の総合研究所主任研究員の今西光男氏が、緒方竹虎の苦悩の逸話を交えながら、資本と経営の視点から朝日新聞社の問題を分析する好著が出版されたが、どうにも、7月13日の社説は、大政翼賛会張りに郵政民営化論礼賛を前提にするあたりは、朝日新聞の危機がこうした現代の社説にも現れているようである。(新聞 資本と経営の昭和史、朝日新聞社 1400円)

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