構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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Pension

山崎養世氏が、オンラインのニュースレターを配信している。

いつも読ませる内容だ。今回は年金問題である。山崎氏は、高速道路の無料化や、郵政の民営化や、道路公団の民営化などで問題点を鋭く指摘してきている。

そのニュースレターの転載である。

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____山__崎__通__信_____________2007.7.4_第42号
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┃また、年金ですね
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 昨年、安倍政権が誕生したときに、VOICE誌の2006年10月号で「郵便局が
 年金の担い手」という論文を寄稿しました。どうしてそう考えるのか、
 少し長くなりますが、山崎通信の読者の皆様にご説明します。

 ここ数年、選挙の季節になると、年金で大騒ぎになります。
 当然のことかもしれません。年金ほど、有権者と国家が広く長くつながって
 いるものはないからです。日本は平均寿命80歳の長寿国ですから、年金の
 つながりは平均60年にも及びます。

 年金は、国家と国民の間の約束です。国民は、成人すると同時に、年金の
 保険料や税金を払わなくてはいけません。一方、国は、一定の年齢になった
 国民に、その人が亡くなるまで、約束した額の年金を支払わなくてはいけま
 せん。国民年金と厚生年金の平成16年度の支払の合計は35兆円に及びます。

 年金は、最大の国営の金融サービス業でもあります。国家は、国民がどんな
 に仕事を変わろうと、国民から受け取った保険料を確かに記録しなくては
 いけません。そして、一定の年齢になった国民に、間違いなく約束した年金
 を支払わなくてはいけないのです。そのためには、国は、個人と雇用者双方
 と、膨大なデータとお金のやり取りをしなくてはいけません。その仕事を
 担当する社会保険庁で、記録や支払いに何千万件もの間違いがあることが
 判りました。問い合わせが殺到したら、社会保険庁の窓口もインター
 ネットもパンクしてしまいました。これまでに、そんなお粗末な情報
 システムに、1兆4000億円もの公費や国民の保険料をつぎ込んできました。
 さらに、保険料を横領した職員もいたようです。社会保険庁への信頼は地に
 墜ちています。

 そもそも、社会保険庁は、年金という巨大な金融サービス業の窓口サービス
 を国民に提供するようにはできていません。たとえば、成人、つまり年金
 加入者が1000万人程度いるはずの東京都で、窓口となる社会保険事務所は
 年金相談センターを含めても32ヶ所しかありません。30万人に一つです。
 これでは、殺到する問い合わせに答えられるはずはありません。何時間も
 待っても、サービスを受けられずあきらめた人たちが大勢いました。
 どんなに悔しい思いをされたことでしょう。もらい損なった年金が分かった
 人も、社会保険事務所では自分の年金を受け取れません。また、金融機関に
 足を運ぶのです。

 これからは、「年金チェック」が国民の常識になるでしょう。国民からの
 問い合わせが増えるでしょう。年金通帳や年金カードができれば、問い
 合わせやデータの確認が日常のことになるでしょう。そのために、社会保険
 事務所を衣替えした事務所を全国に何千ヶ所も作り、窓口サービスを展開
 する巨大な組織にするのでしょうか。それはむだでしょう。

 社会保険事務所の仕事を税務署にやらせよう、という案もあります。でも、
 税務署も、東京都で48ヶ所しかありません。そもそも、税務署は税金を国民
 から取り立てるところです。保険料を納めない人から取り立てるには役に
 立つでしょうが、年金の膨大な金融サービスを行うようにできていません。
 年金の金融サービスの充実と、官僚組織を肥大化させない対策を両立させる
 組織ができない限り、年金不信は続くでしょう。

 実は、少子高齢化が進む日本の年金には、もっと大きな問題が二つあり
 ます。20年前の日本にも、移民などにより若い労働力が増えて成長を続ける
 今のアメリカなどにもない問題です。

 一つは、日本の年金の基本の仕組みは、現役世代が引退世代の年金を負担
 する仕組みですが、少子高齢化が進めば維持できないのです。これから、
 団塊の世代が引退して、年金をもらう人が大きく増えるのに、現役で働き、
 保険料や所得税を払う人は大きく減ります。そうなると、現役が引退世代の
 年金を負担する、という国の年金の半分以上を支えている仕組みは、うまく
 いかなくなります。今の現役世代は、引退世代に比べて、年金の収支が
 はるかに悪くなります。今の子供たちの世代では、もっと悪化します。

 消費税で年金を賄うという案があります。確かに、世代間の不公平問題への
 一つの答えです。消費税は、引退世代を含め、買い物をするすべての世代が
 負担するからです。でも、いまでさえ国の年金の1年間の支払は35兆円に
 上ります。これに対して、年間の消費税収は10兆円強しかないのです。大幅
 に消費税を上げれば、景気が悪化して他の税収が大きく減るジレンマに
 陥ります。消費税にだけ頼るのも危険です。

 少子高齢化に対応するための仕組みは、国の年金の中にあるのです。それが、
 国民が現役の時に払った保険料の一部を積み立てて、国がまとめて運用する
 制度です。いまは、国の3年分の税収に等しい150兆円の積立金があります。
 このお金を年間7%で運用できれば、10兆5000億円もの収入になります。

 80年代までは、この仕組みはうまく機能していました。資産運用の主な対象
 である国債の金利は高く、その次の運用先である日本の株は大きく上昇した
 からでした。この調子でいけば、少ない保険料でも、将来いっぱい年金が
 もらえそうでした。

 ところが、90年代からは、二つ目の大きな問題に突き当たりました。低成長
 と低金利の時代になったのです。80年代のように年金の資金を日本の資産
 中心に投資しても、大したリターンは上げられそうにありません。運用の
 主役である国債の金利は、いまだに1%台です。日経平均も少し上がって
 きたとはいえ、かつてのピークの半分以下です。高速道路を無料にする
 ぐらいの思い切った国内経済の活性化策を打ち出さなくては、日本全体の
 景気回復は望めません。

 一方、21世紀の世界は米中経済同盟を基軸にしたグローバリゼーションの
 時代です。中国やインドや東欧の安い労働力や不動産に惹かれて、世界中
 の企業が新興国に生産と消費の舞台を移しています。新興国の生産コスト
 が安いから、世界の物価は上がりません。すると、金利も80年代より
 はるかに低くなります。その分、世界の企業収益は急増し、株や不動産も
 上がり続けています。

 投資の立場だけからいえば、大きくリスクを取って、日本以外の成長地域、
 とくに、新興国や統合で活性化されているヨーロッパの株や不動産に、
 中心を移すべきでしょう。でも、150兆円もの国民の資金を預かる国の
 機関が、そんな大胆な運用に踏み切れるでしょうか。リスクが高い運用
 には暴落が付き物です。国の年金に暴落が起きた時には、猛烈なつるし
 あげにあうでしょう。たとえ長期では高いリターンが期待できても、
 政府ではそんなリスクを取れないでしょう。

 国が、年金資産を運用するリスクを取れないのなら、企業や個人が取れば
 いいという仕組みも、実は、日本にはあるのです。企業年金や個人の
 401k型と呼ばれる、国の資産運用に頼らない自己責任型の年金です。
 問題は、そうした年金が伸びないことです。

 一つには、企業にも、国と同様に、従業員の年金資金の運用のリスクを
 避けたい、企業年金をやめてしまいたい、という動きが広がったためです。
 経営者への監視が強化されていることも、リスク回避の傾向を高めます。

 個人がリスクを取ってはどうでしょうか。いま、日本から海外への運用の
 主役は圧倒的に個人です。外貨預金や、新興国など海外の株や債券に運用
 する投資信託などが、爆発的に増えています。個人が、リターンの高い
 運用を進めているからです。

 ところが、従業員が自分でリスクを取って資産を運用する401k型年金は
 伸びていません。あまりにも不便だからです。というのは、401k型年金は、
 加入者一人一人への金融サービスが必要になるうえに、国の年金との関係
 をチェックするなど複雑な手続きが必要です。しかも、預金や保険から
 投資信託まで扱い、いつでも、個人の要望によって運用が変われば、
 記録しなくてはいけません。これをレコードキーピング(記録保管)と
 いいます。

 企業や民間の金融機関では、全国での本格的なレコードキーピングが
 難しいのです。401k型年金は、転職したときに、次の企業に個人の年金
 資産を持って行けるメリットがあるはずでした。ところが、次の企業の
 制度が整っていないと、うまく移せません。こうした金融サービスを
 担うところが出てこなくては、401k型年金のような自己責任型の年金は
 増えないでしょう。すると、国の低い利回りの資産運用しか残らなく
 なります。これでは、国民全体の年金の財政は改善しないでしょう。

 かといって、社会保険庁がこんな手間のかかる、個人への401k型年金の
 金融サービスができるはずがありません。やらせるべきでもないで
 しょう。どこか手を上げないだろうか。ここでも、年金の金融サービス
 に大きな穴があいているのです。

 そんなことを思って、安倍政権が誕生したときに、VOICE誌の2006年
 10月号で「郵便局が年金の担い手」という論文を寄稿しました。
 郵政民営化の方針は決まったけれども、国民が納得する郵便局の経営の
 方向は見えてきません。郵便局を、新たな半官半民のメガバンクに
 衣替えするのでしょうか。民業の圧迫ではないでしょうか。郵便局で
 なくてはできない仕事、民間を生かし、補完し、共生する仕事が
 できないのでしょうか。そう考えると、年金の金融サービスこそ、
 民間企業では難しく、郵便局の強みを生かし、しかも、民間を補完する
 仕事になるのではないでしょうか。

 郵便局が社会保険庁と大きく違うのは、国民の信頼度と満足度が高い
 ことです。金融機関としてのサービスや信頼度において、銀行や保険や
 証券会社に比べて、郵便局は常にトップクラスにランクされてきました。
 確かに、郵貯や簡保が、国家の信用を使ってきたことはあります。でも、
 郵便局は親切、便利、信頼できるという国民の声があるのは確かです。
 何千万件もの郵便貯金や簡易保険が間違っていたという話は聞きません。

 それなら、年金のデータを、個人情報の取扱いに注意して、郵便局に
 接続し、年金通帳を発行してはどうでしょうか。郵便局の窓口に行けば、
 年金の記録をオンラインで照合でき、国が払っていなかった年金が
 あれば受け取り、逆に加入者に払い漏れがあれば支払いができるように
 すれば、社会保険事務所で何時間も待つ必要がなくなります。

 郵便局は、全国に24000もあります。日本最大の金融インフラをもって
 います。そこでは、300兆円に上る膨大なお金の記録とやり取りが行わ
 れています。一番大切な信頼という財産も持っています。年金の窓口
 業務に使わないのはもったいない話です。

 さらに、郵便局は、これからの時代に必要な個人の自己責任型の年金で
 ある401k型年金の担い手にもなれるはずです。民間ではできなかった
 レコードキーピングなどのサービスも、郵便局の全国ネットワークを
 活用すれば提供可能に思われます。そうなれば、全国どこで転職して
 も次の職場に自分の年金を持って行けるのです。市場原理、リストラも
 当然、という経済運営が進み、転職が当たり前の世の中になったのです
 から、転職を前提とした401k型年金が普及するようにするのは国の義務
 でもあるでしょう。

 401k型年金では、国債はもちろん、さまざまな金融機関が提供する預金
 や保険、投資信託を国民が選びます。郵便局は、それらを提供する金融
 機関とシステムをつなぎ、記録を保管するのです。もちろん、郵便局と
 個人の間をオンラインでつなげば、もっと便利になります。

 年金の難問の解決、郵政民営化の後始末、どちらも大変です。でも、
 お互いの足りないところを補う、モッタイナイの精神を発揮すれば、
 道が見えてくるのではないでしょうか。

以上、転載したがちなみに、山崎養世氏のブログのアドレスは次のとおり。

http://blog.livedoor.jp/zackyamazaki/

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