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Medical Care 7

中国人なら病気になってはダメ。医療費現金前払いの国でーーーフィナンシャルタイムス

(フィナンシャル・タイムズ 2008年8月29日初出 翻訳gooニュース) リチャード・マグレガー

数年前に初めて中国の病院に足を踏み入れた時のことは、なかなか忘れられない。上海の冬、まだ明けやらぬ凍てつく寒さの中、妊娠中の妻を産科病棟に急いで連れていった時のことだ。妻がそういう状態だったからというだけではなく、あの朝のことは強烈な印象として残っている。

というのも、すぐには産科病棟に入れてもらえなかったからだ。それよりも先に私はまず、電車の発券カウンターのようなところに並ばせられて、3万元(約40万円)を払わせられた。そこではクレジットカードが使えたのがせめてもの幸いだった。というのも中国ではほとんどの病院が、現金の前払いを求めてくるのだ。

とても不愉快な経験だったが、ただの不愉快で済んだのだからまだマシだ。多くの中国人にとっては、生死を分ける深刻な問題なのだ。中国の人たちは、たとえ命に関わる深刻な病気でも、たとえ子どもでも、治療費を前払いするまでは医者に診てもらえない。

中国は国家統制経済から市場経済に移行した。その狭間にあって中国の医療システムは巨大な台風の目と化してしまった。急成長を続ける中国経済の影響は中国国内にとどまらず世界各国に波及する。同様に中国の医療システムの問題もやはり、影響は中国にとどまらない。

病気になったら破産してしまう。この恐怖が大きな要因となって、中国人は貯金をする。高い貯蓄率に伴って投資率も増え、さらに最近では経常黒字拡大と共に輸出拡大を助長している。

医療や教育や年金は、かつて国家が提供するものだった。都市部では国営企業が。農村部では人民公社が。どちらもかつては中国国家を支える柱だったが、ここ数年では人民公社は解体され、国有企業は民営企業にとって代わられつつある。そしてその後にできた空白を埋めているのが、利用者負担のシステムだ。

政府の資金援助がないため、中国の病院は(中国には一般開業医の制度はない)どこも、薬漬けの薬局みたいな場所と化した。病院は安定収入の半分を、薬の売上代で得ている。残りの収入は検査代で、だから中国の病院には西側よりも優れた検査機器をそろえたところがある。

中国の医療システムは、医師を含めて誰もができるだけ薬をたくさんを売ったほうが潤うという、そういうインセンティブが随所に組み込まれている。たとえば医師の給料は、どれだけたくさん処方箋を書いたかに連結していて、目標値も設定されている。その結果、裕福な中国には優れた病院があって、貧しい中国はせめて診療所だけでもあれば幸い、ということになる。病院入り口で患者に「金を払え」と迫る病院を責めるのは簡単だが、金を取れるうちに取っておかないと病院が成り立たないのだ。

中国で今年発覚した最大級の汚職事件は、医薬行政トップの関係するものだった。これは、決して偶然ではない。鄭篠萸・前国家食品薬品監督管理局長は、新薬承認をめぐり約649万元(約1億円)相当のわいろを受け取った罪で死刑判決を受けた。刑は7月、執行された。

一番さかんに処方されるのは、抗生物質だ。そして抗生物質の使いすぎは、悲惨な結果を招いている。中国衛生部はこのほど、肺炎にかかる子どもの約7割が、抗生物質の使いすぎで治療薬に耐性ができてしまっているという調査結果を発表。中国で最も市民の収入レベルが高い北京、上海、広州の3都市では、7割が9割に跳ね上がるという。

中国の薬漬け医療の問題は中国内でもよく知られていて、マスコミはそれを逆手にとってゲリラ取材をしている。たとえば今年には、中国人ジャーナリストが患者のふりをして10カ所の病院を訪れ、尿検査で尿の代わりにお茶を提出。病院10カ所のうち6カ所が、尿ではない尿に「潜血」を見つけて、ただちに薬を処方したという。

中国では、政府が何もしないでいるということはあまりない。この医療危機についてもそうだ。農村部では、地方自治体や個人による保険負担と病院の診療費キャップを結びつけた、協同組合的な医療保険制度が開始。大都市では、低所得者のための家計に応じた医療保険が始まり、5月には病院の収入となる薬価差益に上限を設けた。全国レベルでは、20近い省庁が関わる委員会がこの問題を注視している。

胡錦涛(フー・チンタオ)中国国家主席は、国民皆保険の青写真を作るよう政府に命令したというのが、大方の受け止め方だ。そして命令された官僚たちは、いったいコストがいくらぐらいかかるのかと戦々恐々としている。しかしおそらく来年には、全国展開を目指した基本医療保険の試験運用が始まるだろう。

国と言うのは公平な医療制度、あるいは優れた医療制度がなくても繁栄できるし、超大国になることだってできる。現に、アメリカがそのいい例だ。そして中国の様々な問題を一気に解決するための特効薬などない。しかし中国の医療制度改革がどういう形をとるかというのは、胡錦涛体制がどれくらい大胆に、どういう方向に向かっているのかをわかりやすく量る雛形にはなる。

医療制度の問題はさらに、中国にとってもっと大きなテーマと密接に絡み合っている。つまり、何をどこまで市場原理に任せたらいいのかという問題だ(医療業界の拡大は中国衛生部の利益につながる。このため衛生部は、民営化のしすぎに消極的だ)。

課題はほかにもある。誰が医師を監督すべきなのか? (一党独裁国家では、国家権力から独立した職業集団は成立しにくい。中国では最近になってようやく、自己統治力をもつ職業集団が少しずつ発足しつつある) そして、医療改革に中央政府はどのくらいの予算をつぎ込むべきか? (中国財政部は豊かな税収で潤っているが、使い道のはっきりしないまま省政府など地方自治体に予算を回すことを嫌っている)

そして私の場合。妻の入院前に前払いした金額から、実際にかかった医療費を差し引いた差額を、退院する際に返金してもらった。なので、生まれたばかりの子どもを片手に抱いて、そしてもう片手に重たい現金の札束を握って、病院を出て行くことができた。しかしこういう、めでたしめでたしな結末は、そうそう滅多にあることではないのだ。

以上、http://news.goo.ne.jp/article/ft/world/ft-20070831-01.html

中国は、一党独裁の超資本主義国となっている。まあ、アメリカの市場原理主義に毒されてしまったようである。市場原理主義そのものが、一部が豊かになってそのうちに還元されるという、根拠のない夢物語のイデオロギーである。

中国の心ある人々は、日本の簡易保険制度を導入しようと心を砕いた。今、日本では郵政民営化が強行されて、日本の公的な医療を間接的に支えた郵便局の簡易な医療・生命保険制度が廃止されようとしている。

民営化発足が10月一日、それまでに、郵政民営化法を、参議院だけでも凍結する決議案を採択してほしいものだ。それで、アメリカ流の民間保険制度の根拠を崩すことになるから。

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