構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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Marine Industry

先進諸国の港町を訪ねると、ヨットハーバーの大きさと美しさに息をのむ。欧米におけるヨットの趣味は中産階級の家族の楽しみである。
ヨットの語源はオランダ語らしく、香港の中国返還の時に、チャールズ皇太子が王室の船に乗船して去っていく場面があったが、あれがヨットである。大型の豪華船がヨットで、小型の帆カケ船はヨットととは呼ばず、セールボートという。
ヨーロッパの世界進出は、大航海の時代からの帆船の伝統文化は連綿として引き継がれている。常陸の五浦の岡倉天心記念館には、インド往還のタゴール関係の遺品に混じって、天心が使った釣り船が展示されているが、特徴は米国東部の様式の、キールの入った伝馬船である。キール(船の重心を下げるための流線型の錘)を用いた帆船は、小型でも一万トン級の船に匹敵する航海能力があるという。天心が目ざとく見つけた海洋力の源泉のキールは、国力のひとつとは認められず、外洋船舶の普及は未だしである。海の日が制定され、各地で試乗会などが開催されるが、関係者は段々高齢化している。堀江謙一氏が、太平洋横断を果たしてから、何人かの冒険者が生まれ、無寄港の世界一周やらに挑戦した者もあるが、国民的な英雄として迎えられたわけではない。イギリスあたりの帆船雑誌を見れば、中古で、円価数十万から数百万の小型船が大量に流通しているから、ちょっと高めの自動車を買うと思えば手に入る額である。普及しないのは、置き場が高い、マリーナ施設の使用料が高止まりになっていて、しかも金持ちの道楽と看做され、漁港がどんどん整備されても、小型帆船の係留施設が国費でどんどん整備されたという話は残念ながら聞かない。日本国民が海への関心をそぐような占領当局のなごりか、いらざる規制が残存して、小型船舶の安全備品や電子機器はすっかり国際競争力を失ない、高止まりの原因だ。国産の小型帆船の造船業も、あきらかに下火だ。
四方を海に囲まれた日本の戦後の発展は、特に太平洋沿岸に、重工業の配置と連携して、大港湾を整備した。工業地帯を港湾につなげて、立地して、国力を進展させた。が、昔話だ。日本は海洋戦略を失った。日本の海運も実際には、船員のほぼ全員が外国人で、日本人の外航船員はったったの2500人しかいない。日本の海運会社は、世界各国で船員確保の為に学校を造り、外国の商船大学に特設クラスを設けて、外国人を採用して人材不足を解消するばかりだ。経済合理性ばかりをみているのか、国の安全保障に対する関心は薄く、市場原理主義に毒されているようだ。イギリスは、自国の外航船員の所得税を全額免除しており、訓練の経費を補助するとか、船員の自国での確保を目指して差額を補助するなどの政策を取る国も結構あるから、ほかに方法がないというのは詭弁である。日本船籍の船もほとんどない。日本の海運会社の運航する船は、税金が安いパナマなどに船籍を置いている船だ。銀行の不良資産処理には血道をあげるが、日本人船員や、日本船籍の船を増やすために、公的資金という名の税金を投入する話は聞かない。海運会社がセールボートのレースを講演した話など聞いた事がない。
液化天然ガスの輸送船などは、日本船籍の船で、船長や機関長などは日本人で充当する特例もある。液化天然ガスの輸送船は、危険物の輸送船と一緒で、安全性の確保が大切だからだ。一昔前に、中東に海上自衛隊の掃海艇を派遣したことがあったが、その時には、インド洋の荒波を小さな木造船で超えさせないで、海運会社の大型タンカーに積んで、アラビア海まで輸送すべきと考えたことがあるが、航空会社もそうだが、国運の絡むときに限って、官民論を主張して、無関心を装う。
プサンや中国の港が、日本の物流の拠点のひとつになりつつあるという。海上輸送の生命線が、中国や韓国に握られかねない状況である。港湾行政については、国から港湾管理の権限を奪っておけば、軍港整備に乗り出すのが阻止できるとの占領軍当局の思惑があったとの見方もある。今こそ、港湾行政の法体系を、国と地方とが協力して、国策として抜本的に改正していく必要がある。
東シナ海は、漁業被害をもたらすエチゼンクラゲばかりではなく、ごみの海と化した。中国が揚子江に建設した三峡ダムが生態系を破壊して海洋の環境を変えたからくらげの大量発生があるとの説もある。ごみは、日本各地の海岸に漂着して汚染する。原子力潜水艦の領海侵犯に謝罪しようともしない北京当局が難色を示すことは当然であるが、日本沿岸を汚染しないようにせよととの要求を継続すべきである。
国連の海洋法条約草案が議論されていた頃に、ウッズホールの海洋研究所で、紅海の海底のマンガン塊や貴金属資源の調査分析が行われていた。近年日本でも深海底の資源探査の技術や基盤整備が進展する朗報もあるが、94年の国連海洋法批准から、海洋行政の全体は、失われた十年が続いている。韓国が海洋水産省を新設して、日本海を東海と呼称せよとか、あるいは、海底調査を進める中で、この国の外務省の海洋法対策本部は廃止されるなど逆行・後退が続く。北朝鮮の不審船を追跡して銃撃し(以前に取り逃がしたときの運輸大臣は国内法に従って追跡中止を命令したが、案の定、ロンドンのタイムスは、国際法に従えば撃沈すべきで、海賊船を取り逃がしたとからかわれた)、東シナ海の海底から引き上げ、北朝鮮の国家犯罪、領海侵犯を証明し、尖閣の灯台を海図に明記するなど、活躍目覚しい海上保安庁の予算が増えた話は聞かない。統一的に海洋戦略を議論する閣僚会議すらない。
セールボートの話に戻る。国民各層が、小型帆船を家族で週末に乗って楽しめない日本の現実は、世界に遅れをとった海洋行政の貧困の証左である。普及の妨げを取り除いて、青少年に海に親しむ機会を与え、海洋水産省を新設するなど、海洋国家日本復活への近道を開くことを期待する。

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コメント

>以前に取り逃がしたときの運輸大臣は国内法に従って追跡中止を命令した
具体的な中止命令は出ていません。そのような国内法の根拠もありません。法律上は相手国の領海線まで追跡可能です。航続距離や速力の関係で巡視船での追跡が出来なくなったため、海上警備行動発令を防衛庁(当時)に要請しました。

>活躍目覚しい海上保安庁の予算が増えた話は聞かない。
昨年度より予算、人員の拡大が認められています。海上保安庁は政府機関の中でも概算要求がほとんどそのまま承認された珍しい例で、額も創設以来の規模といわれています。

>統一的に海洋戦略を議論する閣僚会議すらない

すでに国務大臣を構成員とする総合海洋政策本部が設置されています。

投稿: とおりすがり | 2007年11月20日 14時25分

とおりすがりさん、ご指摘ありがとうございました。

投稿: Orwell | 2007年11月21日 01時10分

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