構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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佐藤優氏の新刊書、「国家の謀略」はある種の情報工学について、その技法を紹介する本である。秘密戦についての教科書みたいな本である。インテリジェンスは国家の機能であるが、その手法は日常生活でも応用できる可能性がある。考えようによっては、ある種の碁や将棋のようなゲームの一種類であって、人間の使いようによっていかようにもなる技法である。著者は技法は似通っていても、その根本にある精神が違えば、結果は異なるという。陸軍中野学校では、「誠心」を標榜していたから、それが相手の利益にもなり、アジアの諸国の独立につながっていったと、著者はいう。思い当たる節も多くある。当ブログにも、最近ロシアでの、第二次大戦中の、アメリカの核技術の奪取に関する記事を掲載したが、国家と民族に対する忠誠が、肝心要であるようである。興味深いエピソードが、次々とつづられる。(もちろん、日本語の本としては興味深くとも、この類の本は実は、世界的にはかなり出版されているのであるが、とも思う。)急速に弱体化する日本の国家としての再建のためにも、もしかしたら、役に立つかも知らない、知的な刺激をもたらす本の刊行となっている。市場原理主義や、構造改革という名の亡国の改悪と対峙するためにも怜悧な情報工学の技法が必須であるので、一読を進めたい。

新自由主義の経済政策を日本が採り続けるか否かについても、在京の情報筋は関心を示しているといい、その問題意識を例えば次のように書いている。「新自由主義政策に基づき、官から民への移行が起きれば、姉歯建築士のような偽装設計は必ず起きる。論理的にはこれは自己責任の問題で、日本政府が耐震強度偽装マンションに公的な資金を導入することはありえない。しかし、政治エリートの中には公的資金投入を主張する声がある。公的資金を投入しないという決定を政府がすれば、新自由主義の政策をこれまでどおり、日本が推進すると見ることができるし、そうでなければ、予測に不確定要員が加わる。姉歯問題が分水嶺になる」といった協力諜報の話題になっているそうだ。

プロパガンダ原則から、小泉・竹中政治の圧勝の理由についても一節を割いてある。1.守勢法と攻勢法ーー情勢が劣勢であるときは宣伝は攻撃する。小泉総理は、改革を止めるなというスローガンを前面に出して、郵政民営化反対派を徹底的に攻撃した。これに対して、民主党は、郵政公社の改革で対応可能という既成組織の用語ととられるような守勢法をとってしまった。2.受動法と能動法ーー弁解したり、説明したり、細かい食い違い、欠点などを指摘することは得策ではない。小泉首相は、民主党代表の批判を無視して、対話を成立させないようにして、複数のモノローグが成立するような状況に仕向けた。3.一回法と反復法ーー郵政民営化なくして改革なしというスローガンを何度も繰り返した。ゲッペルスの言うように、嘘でも繰り返せば本当のように聞こえるという悪魔の手法である。民主党の八項目のマニフェストなど誰も関心を寄せていない。4.抽象法と具体法ーーー抽象的なものを避ける、宣伝を受けるものの利害に訴えよというのが、ソ連の宣伝の要諦であったが、小泉首相は、郵政民営化で、28万人の公務員が削減されると一方的に主張することで、税金の無駄遣いがいっそうされるとの印象を国民に植え付けた。もちろん、郵政には税金は一円も支出されていないので、その論理は嘘であるが、「人心に食い入るような、つまり、国民の生活困難、窮迫した不満を、郵政に振り向ける宣伝として大いに効果が上がった。5.理性法と感情法ーーー為政者相手には理性法がよく、一般大衆向けには感情法がいい。民主党は理詰めの理性法だけであったが、小泉首相は感情法で、髪を振り乱して、スローガンを叫び、竹中郵政民営化担当大臣は、有識者と称する階層にもっともらしく理屈っぽく説明するという役割分担ではなかったか。と、分析している。

現実は亡国の郵政民営化や一連の改悪となりつつある。政治宣伝の謀略の技法を知るためにも有用な単行本の出版となった。市場原理主義者だけに、こうした情報の技法を独占させてはならない。同じ技法を用いて、さらに、事実と誠心を加えて、日本という国家と国民のために、自由な言論の反撃を加えなければならない。

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