構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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Socio-economic Gap

新潟大学の田村秀教授の「自治体格差は国を滅ぼす」は、中央と地方の格差のみならず、地方自治体間の格差がいよいよ拡大していることを描写してその解決策を探ろうとする良書である。いわゆる勝ち組の自治体の例として、千葉県浦安市、愛知県の豊田市、兵庫県の芦屋市を例に挙げ、負け組み自治体の例として、北海道の夕張市、千葉県の木更津市、大阪市の西成区を挙げて、それぞれの問題点について開設する。勝ち組といえども、実際にはいろいろな問題を抱えており、また負け組みといわれる自治体にしても、その負け方の諸問題について分析する。模索する自治体としての例には、群馬県の大泉町、三重県の亀山市、徳島県上勝町を挙げる。そして、新潟県絡み高草の問題について触れ、終章では、中央と地方の共存を探る。結論はもちろん、地方間の格差が国を滅ぼすというものである。

千葉県の浦安市は、ディズニーランドのある、昔は、山本周五郎のあおべかものが李で有名であった、東京湾奥の漁村が海岸を埋め立てて、地下鉄が通り、住宅街として変貌していくさまを書く。財政が豊かで、すばらしい日本一の図書館があり、税収は毎年三百億円を超える自治体である。地方交付税が交付されない不交付団体の例である。埋立地であるから、地震対策で一抹の不安もあるという。

愛知県豊田市は、言うまでもなく自動車会社の企業城下町である。日本一豊かな市である。豊田市の税収は、宮崎県よりも多く、山形県の税収の規模である。現下の状況では想像できない話であるが、企業城下町は、会社と運命を共にする。

高級住宅街で有名な芦屋市の例であるが、住んでみたい町のナンバーワンが関東では自由が丘であるが、関西では、2位の西宮市を大きく引き離してトップであるという。しかし、芦屋市の中でも所得構造は二極分化しているという。高齢化の進行も、豪邸の町を蝕んできているという。阪神大震災の傷跡も大きく残っており、財政の健全度は黄信号だという。

炭鉱で栄えた町夕張は、高齢化比率が日本一高いという。炭鉱会社の廃山の尻拭いを自治体がしたのが、財政破綻の大きな原因だと指摘するものも多いという。夕張メロンは成功したが、観光政策は、スキー場などを高く交わされ?失敗して、今年の三月には財政再建団体に転落したことは、話題になった。行政サービスが最低水準になり、市民生活を直撃した様子を活写する。誰の責任かと問い、田村教授は、市議会でもあり、もちろん市当局でもあるが、炭鉱の閉山というエネルギー政策の転換が原因であるから、国にないというのは無理があると指摘する。北海道にも、責任がある、しかし、官だけではなく、松下興産や北炭といった企業も責任があるのではないかと指摘する。夕張市の未来は多難であるとして、夕張市内で繰り広げられる国の直轄事業は、なんとも皮肉であるとして、「国が夕張市を本気で支援するつもりがあるのなら、これらの大規模事業(ダムや国道の付け替え工事)を見直して、その余ったお金を夕張市に助成してもよかったのではないか」と指摘する。

負け組みの木更津市は、東京湾横断道路の開通に伴う、地価の高騰と暴落の間に起きた。駅前はさびれた。これは、当ブログのコメントであるが、海底トンネルが、むしろ、格差を作り出した張本人である。高速道路の民営化などをせずに、そのトンネルを、ほとんど無料にすれば、東京都のアクセスは、日に200台のバスが通うわけであるから、住宅街として転化しえたのに、民営化して、料金の低減などと焼け石に水のおざなりのシャカイジケッケンである。

大阪市西成区は格差社会の縮図として捉える。あいりん地区ばかりではなく、さまざまな顔があるとするが、日本で一番寿命の短い地域となっており、人口密集地域で、高齢の単身男性が住む町といえる。生活保護の問題についても触れている。著者は、そうした格差社会の現実に圧倒されるかのように、「自己責任の一言だけですますことだけはやめようではないか」という。欧米やアジアのスラムと比べると、はるかに静かで犯罪も少ない。同胞の生活を奪い困窮化させている大きな原因を探るべきであろう。

群馬県大泉町は、日本一外国人の割合が多い自治体である。大泉町の場合はブラジル人とペルー人である。第二次産業の、単純労働者不足を補うために、流入したわけであるから、大泉町は、ある種の企業城下町でもある。もちろん、国全体としては、外国人労働者をどの程度まで受け入れるべきかという議論は、まだ国民的なコンセンサスを得ていないものと、当ブログでは理解しており、一部の企業などのように、外国人労働者を裏付けなく導入することは、国を危うくするものと考えている。企業の社会的責任の問題もあると著者は指摘する。教育が大きな問題になっているという。

亀山市は、シャープの液晶工場で有名であるが、徳島県の上勝町は、高齢化する自治体であるにもかかわらず、横石知二氏という、異能のリーダーが、料亭などで、料理に添えられる四季の花や植物の葉など、妻ものというそうであるが、その妻ものの特産品を開発したからである。上勝町の取り組みは文字通り異色で、ごみのリサイクル率はなんと80%にもなるという。ゴミ収集車が一台もないという。

深刻な本である。新書版であるから、全国の書店でも入手はできる。自治体関係者には必読の書ともいえる。中央と地方の助け合いが大切で、地方の中央の猿真似を排除する。市場原理主義者たちが、安易に自己責任をいい、格差を放置して、一部のもののみが富むことがいいなどと、格差を容認することが以下に間違っているかがわかる本である。今日の勝ち組が明日の負け組みともなる、負け組みがずっと負け組みであるはずもない。「人々が愛着を持てるような、そして心の豊かさを実感できるような地方を再生しようではないか」と訴える。

なお、同教授による、データの罠は、同じく集英社から出版されているが、データの使い方で操作することなどについて、数字の読み方について考えさせるこれまた良書である。たとえば勤労者の所得が上がったとするが、この場合には、100人以下の事業所の数字を含まないと考えるべきであるというように、データの取り方によって、操作されることを分析したものである。マスコミを使って市場原理主義者はプロパガンダの手法で、数字を操作したりすることがママ見られるので、データ分析から事実と虚妄とを見分ける方法論について記述した良書である。

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