構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

« Food Supply | トップページ | New World Order »

Izumo Shrine

出雲大社では平成の大遷宮が始まっている。奥出雲町は、出雲空港から、大社とは逆方向の、斐伊川上流にあり、広島県と境を接する山間の町である。松本清張の小説砂の器の舞台となった町である。旧仁多町と旧横田町が合併をして三年前に組成されている。町長は、旧仁多町長の岩田一郎氏である。「所得のないところに定住はない」との考えで、一貫して自立・自尊を追及して、「町を経営」してきた稀有の自治体の長である。
仁多米は、ブランド米として全国に知れわたった。山間地の棚田を猪の害から守るために大事に囲う。全国の休耕田という、農民から見放された田はない。有機肥料を使用して、密な生産管理を行う。仁多米の貯蔵庫は籾のままの定温管理で、注もキロ当たり200円は高い。生産農家の手取りも高くなる好循環である。仁多米の販売は、町営の会社で行う。町長自らが社長で都会に販売促進に出かける。椎茸の生産・販売も行っている。原菌は、大企業から購入していたが、今では自ら菌床の栽培も手がけている。集荷・選別し、市場に空輸する。軽いから飛行機利用でも採算に合う。椎茸をはじめた頃は、人口流出が続いていて、町外からも椎茸生産農家を募集した。うたい文句は、七百万円の収入を目指すと言うもので、100世帯を超える応募があり、その内13世帯が参加した。新しい町民の子供達が、二十歳を超える年齢になった。地元の人は優しく「定住さん」と呼んで、町の風景に溶け込ませた。椎茸会社の子会社をつくって、舞茸の栽培にも挑戦を始めた。奥出雲振興という町営の会社では、玉峰山荘の経営をしている。亀嵩温泉という鉱泉に大型の宿泊施設を建設して順調な経営である。サービス向上に徹底している。奥出雲振興には酒造部門もある。美味の仁多米を使って相乗効果を出し、大吟醸の酒を、完全自動の醸造設備で生産する。道の駅も二箇所経営している。奥出雲振興の会社は年間2千万円を町に納入するという黒字の経営振りである。下水道も完備させた。町営のバスは、本数は少ないものの、町内均一料金を断行して、民間バス会社が路線を撤退させる中で、採算にのせた。旧仁多町では、いち早くケーブルテレビを導入して、町が直接経営を行っている。第三セクターで経営せずに、冷厳に採算比較を行っての町の直接経営で、岩田方式と役場職員がよぶ真骨頂である。町立病院もある。町のライフラインとして積立金を活用しながらの経営で、漫然と垂れ流しするような経営ではない。町営の火葬場の隣の、葬儀会館も町立である。平成の大合併の中で、旧仁多町の経営状況と比べると、一方の旧横田町の状況は、財政的には困窮の状況にあったから、下水道やケーブルテレビなどのインフラの整備が遅れ、合併後は両地域の平準化が課題である。奥出雲町は、町内全戸に光ファイバーを引き込んだ全国初の設備を完成させている。まもなく、テレビ電話の導入が行われ、年間1000万円の事業費にとどめながら、地域全体をひとつの家族のように、元気な高齢者を増やしていくという目標とする斬新な事業を開始している。椎茸栽培が、農産新技術を導入して企業化を図ったと同様に、情報通信の最先端技術に着捨てられた国営の農地開発の惨状を克服するために、高糖度のトマト栽培技術を持つ
会社も誘致している。中央政府の失敗を、災いを転じて福となす意気込みで、再活性化のために町が取り組んでいる様は圧巻である。
さて、岩田町長は、町の経営にとどまらず、全国森林環境税を創設するという提言を行っている。全国の森林の整備が進まないのは、森林整備費が、国50%、県20%、山林所有者30%の負担率となっており、山林所有者等がその負担分を拠出できないからであると主張する。財政が厳しい県では、枝打ちなどをやめており、間伐でも森林組合が積立金を取り崩して山林所有者の肩代わりをしているのが実態である。森林環境税によって、全国の森林整備が進めば、炭酸ガス削減の京都議定書の削減目標6%のうち,3.8%を山林が吸収することが出来るとする主張で、産業界でこの部分の排出を抑制するとなると、かえって約18兆円に相当するGDPを削減することになると試算している。それは、雇用者所得を5兆円減少させ、100万人の雇用を減少させるともいう。森林整備に必要とする費用は、年間約7500億円を試算している。森林環境税を導入して財源確保を行い、例えば、若者が山漁村に帰って、一定の給与が確保されるまで雇用者に対して助成するなど、所得の底上げを行い、その結果、森林整備や漁場従事者の定住を促進して、これが少子対策にもなると主張する。離職して都会に戻らざるをえない現状である。都市と地方との格差が、竹中・小泉政治で顕著になる中で、(奥出雲町だけで見ると、森林関係交付税の額は、平成19年から、配分割合が面積を25%、人口を75%としたところから逆に一億円の減少となっている改悪である。)従来の課税客体を、水道水、工業用水、発電用水を、課税客体とする主張を修正して、森林環境税の課税客体に、化石燃料を加えることも提唱している。ガソリン税が一般財源化される機会を捉えて、森林環境を維持するための財源の代替できるとする主張である。
郵政などの民営化、規制緩和、公共支出の削減と一連の国家破壊を行った新自由主義の跋扈を食い止めるためにも、奥出雲からの提言を実現させたいものである。読者諸兄に、日本の再建を祈願するためにも、遷宮の大社から、山間の奥出雲町に旅程を伸ばして、現代の共同体の営為と努力の実例を体感してはいかがかと、お願いする。

|

« Food Supply | トップページ | New World Order »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/209267/43334938

この記事へのトラックバック一覧です: Izumo Shrine:

« Food Supply | トップページ | New World Order »