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Takatoki 2

太平記の巻第五に、関東田楽賞翫のこととある。

「またその頃、京都の町まででは田楽に興ずることが流行して、身分の高い人も低い人も皆これに熱中した。そのさまはまことに世にもまれな見ものであった。都や地方の口ずさみになったので、鎌倉でもこの噂を前々から聞いていて、新座・本座の田楽師たちを都から呼んで、毎日毎晩田楽に興じていた。熱中しすぎて、主だった北条一門や大名たちに田楽師を一人ずつアヅケテ、その舞装束を飾り立てさせたので、これは誰様の田楽師、あれはなにがし殿の田楽師などと呼んで、金銀・珠玉や綾・薄物で身を飾ることといったら、見て驚くばかりであった。宴席に出て一曲歌うと、高時をはじめとして見物の大名たちが、我劣らじと直垂や大口袴を脱いで投げ与えた。これを集めて積むと山のようになり、その費用は幾千万金とも知れないほどだった。

 ある夜酒宴があった時に、相模入道高時はかなりの酒を飲み、よいに浮かれて立ち、しばらくの間舞い続けた。それは、若者たちがする宴席を盛り上げるまいでもなく、また、戯言を節回し面白く見せる演技でもなかった。相模入道ただ一人が立って数時間舞いなさったので、それほど面白みがあるとも思われなかったのに、新座・本座の田楽氏たちがその座敷に並んで座り、それぞれがはやし立てた。彼らは拍子を取り替えて、「天王寺のや、よれぼしを見たいものだ」などと歌っていた。ある侍女がこの歌声を聞いて、あまりの重石ラサにふすまの破れから中の様子を覗くと、新座・本座の田楽氏たちと見えたのは、一人として人の姿ではなく、妖怪の類の鳶が山伏姿で現れたようであった。この侍女はびっくりして、使いの人を走らせ、城入道安達時顕に告げ知らせた。知らせを聞いて、城入道が太刀だけを手に、中門を足音荒く入ってきたその音を聞くと、妖怪たちはかき消すようにうせてしまった。高時入道は前後不覚に酔いつぶれ、横になっておられた。城入道が灯火を手にしてこの酒宴の座敷を見てみると、たしかに天狗が集まっていたものらしく、踏み汚した畳の上に、鳥獣の足跡が多くついていた。城入道は、しばらくの間虚空をにらんで立っていたが、目に映るものは何もなかった。相模入道は酔いから醒めても、ぼんやりとしていて、全く覚えがなかった。(つづく)

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