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Corrupt Postal Privatization 25

http://diamond.jp/series/machida

ジャーナリスト町田徹氏が、ダイヤモンドオンラインに特集記事を掲載している。同氏は元々日本経済新聞の経済記者であったが、月刊誌の会員制の雑誌である選択に移り、その後、独立している敏腕の記者である。郵政民営化についても独自を取材を行っており、小泉元総理の郵政民営化への執着は私怨によるものであると書いて話題になったことがある。

「出来レースの温床となる懸念も。「かんぽの宿」売却で表面化した郵政民営化の問題点

 国民の財産だった「かんぽの宿」をオリックスグループにまとめて売却する計画が暗礁に乗り上げている。鳩山邦夫総務大臣が「李下に冠を正さず」「国民が出来レースと受け止める可能性がある」「今のところ私が納得する可能性は限りなくゼロに近い」との主張を展開し、日本郵政が求めた関連手続きの認可に難色を示しているからだ。
 このトラブルに賛否両論が湧き起こり騒ぎが大きくなる一方だが、両論がそろって見逃している大事なポイントがある。そのポイントとは、まず、今回のトラブルが起こるべくして起きたものだということだ。しかも、今回は、たまたま案件が大きかったために事態が表面化したが、これが珍しいケースでない疑いもある。つまり、「水面下では、こうした問題含みの案件が横行していたのに、監視の目が届かず、闇から闇に葬られていた疑いが強い」(総務省中堅幹部)というのだ。
 原因は、民営化の制度設計段階で、反対論を抑え込もうとして、民営化の大義、理念、基本哲学などをきちんと議論しなかったことにある。民営化による効率性の追求と、公共事業としての長所の温存が両立できるかのような誤解を与えておきながら、何も具体的な指針を決めず、民営化の実現だけを急いだ結果、今回のようなトラブルが避けられない宿命にあった。
 偶然だが、日本郵政は3月末に民営化の決定から3年経過後の民営化状況の点検・見直しの期限を迎える。もう一度、抜け落ちた制度設計の不備を洗い出し、国民のために役立つ民営化を再考するタイミングと言えそうだ。
「今のところ私が納得する可能性は限りなくゼロに近い」――。
 鳩山大臣は14日、記者団にこう語り、改めて日本郵政の「かんぽの宿」のオリックス不動産への一括売却を容認しない考えを表明した。日本郵政の西川善文社長を総務省に呼び、焦点の案件について説明を聞いた直後の発言で、案件が完全に暗礁に乗り上げたことが浮き彫りになった瞬間だった。
 今回、問題になっているのは、北海道から沖縄まで日本郵政が70ヵ所で展開している宿泊事業を一括して売却しようという会社売却の案件だ。この事業自体は、民営化の際に、「2012年9月までの譲渡・廃止」が法的に義務付けられていた案件である。好立地に低料金で利用できる施設も多く、高齢者を中心に根強いファンもいる。国営事業時代から採算の改善が進まず、民営化後も40億円前後の赤字を出す体質から脱却できていないため、日本郵政自体も売却が急務という立場を採っている。
 どれぐらいの資産価値があるのかというと、土地・建物などをあわせた簿価は123億円に達する。建物や関連設備は償却が進んでいるだろうから、当初の投資金額はもっと大きかったはずだ。ところが、借入金があるほか、最低1年は雇用を維持することなど売却に条件を付けたこともあり、2度にわたり27社もが参加する入札を行ったというが、応札額が簿価を上回ったところは1社もなかった。オリックス不動産(オリックスの100%子会社)の109億円が最高応札額だったというのだ。
 この問題で、鳩山大臣が突然、口火を切ったのは6日夜のことだった。オリックスや同社の宮内義彦会長を「立派」と褒めた後、それでも日本郵政がかんぽの宿を一括売却することは、「国民が出来レースとの疑念を持つ可能性がある」と疑問を呈したのだった。この夜、九州選出の自民党国会議員の新年会の席に出た大臣を直撃し、政局の取材でもしようと考えていた記者たちが戸惑ったことは想像に難くない。なにしろ、大臣が問題にしたのは、すでに12月26日付けで、当の日本郵政が入札を終えて売却契約が成立したと発表を済ませていた案件だったからだ。
 この第一報段階で影を落としたのは、民営化からまだ3年も経たないのに、監督する者とされる者に別れた総務省と日本郵政の間の不協和音だった。三井住友銀行出身の西川善文社長ら外部出身者が幹部ポストを押さえ、旧郵政省出身のキャリア官僚らのほとんどを経営陣や枢要ポストから排除したことなどが響き、両者のコミュニケーションは、ちょっと前まで同じ組織に属していたとは思えないほど悪いことで知られる。
 ちなみに、今回の売却は、民営化の際に、かんぽ部門から持ち株会社に移管していた「かんぽの宿」の事業を従業員や施設を一体でいったん会社分割して別会社化し、これを譲渡しようというもの。この別会社化は、日本郵政株式会社法第11条で、「会社の定款の変更、剰余金の配当その他の剰余金の処分、合併、会社分割及び解散の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない」とされ、総務大臣の認可マターとされる問題だ。
 バブル崩壊以降、金融機関と金融庁・証券取引等監視委員会の間では珍しくなくなったが、通常、国内で認可案件といえば、どこの業界でも監督官庁と事業者の間で事前の調整にそれなりの時間が費やされるのが常識だ。ところが、日本郵政によると、今回の案件を総務省に伝え、認可を申請したのは12月22日のこと。年末のドタバタの中で、天皇誕生日の祝日も間に入り、発表までわずか2日しかなかった。総務省が案件を十分に把握し、大臣に説明する時間があったのかどうか。つまり、両者のコミュニケーションの悪さがトラブルの原因ではないかと取り沙汰された。
 だが、鳩山大臣の6日の発言や、その後の補足説明を聞くと、問題がそれだけではないことは明らかだ。というのは、鳩山大臣は、
(1)倫理の問題。宮内義彦オリックス会長は郵政民営化を推進した一人で、お手盛りとみられかねない、(2)きめ細かく地元資本に譲渡し、地域活性化に役立てるべき、(3)市況が悪い。売り急ぐ必要はない―との指摘もしていたからだ。
 翌7日、オリックスはホームページ上で、大臣の出来レース批判が見当外れと言わんばかりの議論を展開した。筆者の取材にも同じトーンを繰り返したが、「(宮内氏が議長だった)総合規制改革会議などは答申で郵政民営化を提言していない」(社長室)という主張だ。
 これに対して、大臣は「当初取り上げようとしたし、(郵政民営化を担当した)経済財政諮問会議と連携すると宮内議長が発言していた」などと指摘、態度を硬化させた。確かに、宮内氏は、規制緩和や公営事業の民間への転換だけでなく、郵政民営化を議論の俎上に乗せていく段階で重要な役割を果たしている。オリックスの反論に大臣が苛立ちを強めるのは理解できる面がある。
鳩山大臣の主張を 野党は歓迎、新聞は批判
 野党は、鳩山大臣への賛成一色だ。9日の衆議院予算委員会でも「入札したこと自体が理解不能。(宮内氏は)郵政民営化の原動力」(民主党の枝野幸男議員)、「株価が昨年急落、信用リスクがある」(国民新党の亀井久興副代表)と鳩山大臣を支持するエールが相次いだ。郵政は、自民党・特にかつての経世会の集票マシーンとして知られた「特定郵便局長会」や、革新系の有力支持団体だった労働組合など巨大な組織票を抱える。加えて、小泉純一郎内閣が志向した構造改革路線には今なお反発が強い。このため、野党に限らず、政府・与党のこの問題に関する主張は、ある程度、そうした要素を割り引いて聞く必要があるだろう。
 一方、新聞各紙には、鳩山大臣を批判し、日本郵政やオリックスを支持する論調が少なくない。例えば、日本経済新聞は、9日付の社説で「総務相の待ったに異議あり」という見出しを掲げて、「大臣が入札結果に介入するのは常軌を逸している」との主張を展開した。この記事を、オリックスは「良識ある方の多くの意見と同様ではないかと受け止めています」(社長室)と評価し、「今後の動向を静観する」(同)と筆者にコメントしている。
 だが、前述した通り、今回の売却案件で手続き上必要な会社分割は、総務大臣の認可マターである。適正な案件かどうかの確認を怠れば、責任を問われるのは、大臣自身だ。その大臣が疑問を持ったら質すのは当然。それが常軌を逸する介入に当たるとは考えにくいのではないだろうか。特に、日本郵政が2度にわたる競争入札をしたというが、総務省には「正確には企画コンペと呼ぶべき手法で、恣意的に高得点を付けて落札者を決められる可能性は排除しきれないはずだ」(中堅幹部)という指摘もある。そうなると、鳩山大臣が「識者に調べてもらいたい」と構えるのは自然ではないだろうか。
 そして、こうした賛否両論が見逃しているのは、そもそも「かんぽの宿」が100年以上に及ぶ国営独占事業の収益金の一部で建設・運営されてきた事業であるという厳然たる歴史的事実である。
 どういうことかと言うと、旧郵政事業は、郵便の信書を国営郵政事業の独占としてきただけでなく、郵便貯金や簡易保険も国営にしかできないと言われたユニークな金融商品を抱えてお金を集め、かんぽの宿も含めた資産を蓄積してきた経緯があるのだ。言い換えれば、当初から、こうした事業や商品・サービスを民間に開放して競争を導入していれば、国民はもっと安価で多様なサービスを受けられたと考えられるのである。
 こうした余分な負担を国民に求めた根拠こそ、その資金を、過疎で赤字の地域でも郵便局を維持・展開し全国一律のサービスをするというユニバーサルサービスや、国民への福祉事業とされたかんぽの宿などの財源とすることだったのである。
 さらに肝心なのは、小泉内閣が郵政の民営化によって、市場や民間企業の効率性と、ユニバーサルサービスに代表される国営の長所を両立できると主張しながら、その具体的な折衷の姿を設計しないまま、あるいは示さないまま、実現を最優先して民営化を断行してしまったことだ。例えば、かんぽの宿は5年後までに売却することだけを法的に義務付け、どういう観点・方針から、どういう手法で売却するかを明確に決めていなかったのだ。繰り返すが、この点からも、今回のような疑問を、鳩山大臣が持つのは当然のことなのだ。むしろ、民営化を決めたときから予想された問題なのである。
「かんぽの宿」に限らず売却案件の適否を調査すべき
 そこで最後に浮上してくるのが、民営化から3年近くが経とうとしている今回になって、初めて問題が発生したのか、という疑問である。これまでの案件は、すべて完璧な処理がされていたというのだろうか。
 残念ながら、その答えは否である。というのは、NTTなど過去の他の民営化と違い、郵政民営化では資産売却の監視基準が緩いからだ。実は、郵便事業や郵便局では10億円未満の不動産売却が許認可の対象から外れている。このため、鳩山大臣が今回持ったような疑問について、これまで日本郵政の売買案件をチェックする機能が、どこにもなかったのだ。意地悪な言い方をすれば、大臣が懸念した「出来レース」がやりたい放題の民営化となっていたのである。
 さらに根深いのは、こうした出来レースをやり易くしかねない、ある種の土壌作りが、国営郵政の末期だった日本郵政公社時代から醸成されつつあった事実だ。このことは、初版を2005年11月に出版した拙著『日本郵政』でも企業名を記載したリストを掲載して警鐘を鳴らしたが、当時、「民間のノウハウ取得」を理由に、一般民間企業から公社へ出向する「天上がり」が急増。2005年7月段階で、その数は14人に達していたのだ。今回の案件の取材で、関係者の中に「直ちに不正とは言い切れないかもしれないが、天上がり者たちは、いずれ戻る予定の出身元企業にとって有利な行動を取りがちだ」と指摘する声もあった。
 鳩山大臣に望みたいのは、今回のかんぽの宿の売却案件の適否の調査・判断だけではなく、こうした出来レースの温床になりかねない構造にメスを入れる調査・再改革である。」

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