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Corrupt Postal Privatization 75

「経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”  2009年02月06日

「かんぽの宿」情報開示拒む郵政に、メルパルクや宅配でも不透明の指摘

 国有財産の売却手続きは公正だったのだろうか――。

 メディアで連日大きく報じられ、騒ぎは大きくなる一方だ。それにもかかわらず、「かんぽの宿」をオリックスグループに売却しようとした問題に関して、日本郵政は一向に、積極的に説明責任を果たす姿勢をみせない。あえて言えば、西川善文日本郵政社長は、自前の委員会を作り、手続きが公正だったと証明してもらう考えを示唆しただけだ。お手盛りが懸念されているのに、お手盛りの委員会を作っても疑問を晴らせる道理はない。

 いや、疑問が晴れるどころか、逆に広がる様相も呈している。ここへきて、日本郵政の資産賃貸や事業提携にも問題があったのではないか、との見方が浮上してきたからだ。
驚くべきことだが、関係者の間では、「(郵便貯金事業の一つだった)メルパルク(旧郵便貯金会館)の賃貸を巡って、不透明な入札が存在したのではないか」と疑惑を指摘する声があがっている。
昨年8月に正式に公表していた日本通運との間の資本提携についても、かんぽの宿で問題が表面化するきっかけとなった「総務大臣の認可」を避けるために、急遽、スキームを変更したのではないかとの疑いが浮上しているという。

 日本郵政の姿勢に、監督官庁と国会は苛立ちを強める一方だ。
鳩山邦夫総務大臣は立入検査に乗り出す構えを見せ、野党も民主党の「次の内閣」で総務大臣となっている原口一博衆議院議員らが中心となって「徹底的に追及する」という。

売却の経緯を頑なに明かさない日本郵政

 急ごしらえで杜撰なものになった郵政民営化の法制度が原因で、今、日本郵政の情報開示義務はエアポケットに陥っている。
実態は政府が100%株式を所有する“国営株式会社”になったに過ぎないにも関わらず、完全な民間企業になったかのように振る舞い、国営時代のくびきから逃れているだけでない。
日本郵政クラスの規模を誇る民間上場企業ならば当然の義務となっている、株主への説明責任も果たそうとしていない。

 はっきり言おう。今回の問題は、その不透明さを解明するだけでは不十分だ。経営陣が適正な経営を行い、これまですべての案件で国有財産を適切に活用してきたかの検証と、現行制度の法的、制度的、構造的な欠陥の是正は避けて通れない課題になっている。

 日本郵政自身の議事録を引用しよう。

 西川社長は、1月29日の定例記者会見で、言葉だけみると非常に低い姿勢で「専門家から成る検討委員会を設置いたしまして、このオリックス不動産あて譲渡案はひとまず横におきまして、この問題を原点に立ち戻って、再度検討してまいる所存でございます。で、現在は、委員会の人選等、準備作業を行っている段階でございますが、できるだけ速やかに検討委員会を立ち上げたいと考えております」と発言した。

 だが、「ひとまず横に置く」という言葉の解釈はユニークだ。案件を白紙撤回して、ゼロから、衆人環視の下で手続きをやり直すという意味ではないのである。単に、西川社長が人選する委員会で、「過去の手続きが正当だった」というお墨付きを得ようというだけなのだ。

 換言すれば、どれほど疑問を投げ掛けられようと、オリックスの100%子会社「オリックス不動産」に、かんぽの宿の売却を決めた経緯は明かさないということだ。
鳩山大臣に再三「出来レースと受け止められる懸念がある」と問い質された案件を、お手盛りのできる委員会で正当化しようというのは無茶だろう。

 ちなみに、筆者の手許にある日本郵政作成の資料を総合すると、昨年5月、かんぽの宿の買収に名乗りをあげた企業は全部で27社あった。

 そこで、まず、日本郵政は予備審査を行い、5社を失格にした。残りの22社は、郵政の言う“第一次提案”の提出を許されたが、なぜか15社が辞退してしまった。実際に、提案に漕ぎ着けたのは、7社に過ぎなかった。
さらに、日本郵政は、この7社をふるいにかけて、3社を残した。この3社を対象に、第2次提案を募ったが、またもや1社が辞退した。
一部報道によると、2社の中では、109億円のオリックスが、ホテル運営会社の61億円を上回り、勝ち名乗りをあげたというのだ。

 しかし、日本郵政は頑なに、オリックス以外の26社の社名の公表を拒んできた。最後に落ちた企業以外は、入札額や辞退の理由さえ伏せている。
耳を疑うのは、その拒否の理由である。民主党に提出した書面で、「(社名、入札額の開示は)株価が変動するなど経営に影響を及ぼす可能性がある上場企業もある」と拒んでいるからだ。何ヵ月も前の企業買収の失敗が株価に影響すると本気で信じているのだろうか。

 ちょっと視点を変えてみよう。
最終的な売却条件はどういうものだったのだろうか。
繰り返し、日本郵政に問い合わせて得た公式回答は、「ラフな言い方になるが」と前置きしたうえで、
(1)(かんぽの宿の)事業をする、
(2)(日本郵政の)承諾を得ない限り、2年以内に転売しない、
(3)現行の給与水準で、(希望する現従業員と)雇用契約を結ぶ。民間企業は簡単に人員解雇をできないから、何年維持といった条件は一切ない――というものだ。

 この程度の条件が、1、2次あわせて、16社もの辞退を呼ぶほど厳しいものとは俄かには信じ難い。
実際、ある総務省幹部は「ある国内金融機関系のファンドから、辞退を強要されたと聞いている。このファンドは、従わないと、ゆうちょ銀行など、日本郵政グループの他の取引を失う可能性があると示唆されたそうだ」と明かす。

 さらに、週刊新潮2月12日号の記事「『かんぽの宿』109億円オリックスに『400億円』で負けた」の中で、400億円での買収を示唆した大阪の不動産業者らの企業連合が、5分間の面接しか受けられず、門前払いを食ったとの情報も紹介されている。

 それでも、日本郵政は「ファンドが事業を継続するわけはない」と言い、事前に排除する選考手続きに一切問題がないと言わんばかりの態度をとっている。

鳩山総務相も業を煮やし立入検査を示唆するが

 繰り返すが、2年程度の転売禁止が条件ならば、ファンドだって受け入れるところは多いはず。むしろ、最初に3条件を示したうえで、競争入札を実施して初めて透明で公正な競争メカニズムの働く入札だったと言えるはずである。
現段階で公表されている話や取材で得た回答をどう繋ぎ合わせても、今回の手続きが、国民のため、少しでも高く国有財産を売却する努力を日本郵政がしたかどうか、大きな疑問が残っていると言わざるを得ないのだ。

 日本郵政の姿勢に業を煮やしたのは、鳩山総務大臣だ。
2月2日の参議院の本会議で、専門家に調べてもらいたいとしていた、それまでの態度を硬化させた。きっぱりと「入札経過の詳細な説明がない。日本郵政株式会社法に基づく立ち入り調査も視野に入れたい」と断言したのだ。
この発言によって、日本郵政株式会社法の第15条に規定された「立入検査」権の発動を示唆したのである。

 さらに、翌3日。鳩山大臣は、閣議後の記者会見でも「悠長にやっていることではない。らちが明かなければ立入検査ということです」と強調し、日本郵政に改めて圧力をかけた。

 余談だが、1月29日付の日本経済新聞夕刊が、ほんのひとときだけ、日本郵政の方針転換を印象付ける報道をした。
夕刊1面で、「入札資料を全面開示 立ち入り回避狙う」の大見出しを付けて、「これまで慎重だった入札に関する全資料を総務省に開示することを決めた」と報じたのだ。
ところが、その夜、当の日本郵政に確認したところ、「立ち入り検査を回避するために、全面開示をすることなど検討していない。当社は、これまでに鳩山大臣や総務省から開示を求められた情報を淡々と開示していくだけである」と報道を完全に否定する始末だった。

 むしろ、総務省事務方や民主党の一部では、日本郵政が検査を逃れるため、資料を廃棄するような問題が起きないかという懸念が持たれている。
このため、原口衆議院議員らは、国政調査権の活用を視野に入れて、国民新党や社民党と合同調査チームを立ち上げる準備を進めている。国会での集中審議を行い、西川社長やオリックスの宮内義彦会長を参考人として招致することも視野に入れている模様だ。

メルパルク貸借でも一般競争入札の形跡なし

 そうした中で、かんぽの宿以外の新たな疑問として急浮上しているのが、東京、横浜、名古屋、京都、大阪など全国11箇所のメルパルクの「定期建物貸借権協定」だ。

 かんぽの宿の主たる業務が、簡易保険加入者のために宿泊サービスを提供することだったのに対し、メルパルクのそれは、郵便貯金の宣伝・周知が目的で、イベント会場の提供や結婚式サービスなどを手掛けてきた。
そして、郵政民営化に伴い、かんぽの宿と同様、日本郵政株式会社が事業を承継していた。

 そして、昨年6月に、詳細は伏せたまま、京都市に本社を置くワタベウェディング(資本金41億7600万円)と建物の貸借契約で基本合意したと発表していた。

 今回、指摘されているのは、このワタベウェディングを貸借先として決定した過程だ。
かんぽの宿をオリックス不動産に売却すると決めたときと同様、手続きの不透明性が問題視されているのだ。
というのは、ワタベウェディングは、メルパルクの事業運営なども受託しているが、この決定の際に、やはり一般競争入札が行われた形跡がなく、恣意的な決定がなされやすい「企画コンペ」が行われたとされるからである。

 当時の関係者によると、実は、それまで運営を受託していた財団法人の「ゆうちょ財団」が職員の雇用を維持するため、運営費の大幅削減を打ち出し、入札への参加希望を表明したところ、日本郵政から「入札は行わない」と参加を拒否された経緯があるのだ。

 最終的に、ゆうちょ財団が雇用していたメルパルク職員の多くは、それまでと同じ雇用条件で、ワタベウェディング側の受け皿会社に転職できたという。
だが、これでは人件費がほとんど下がらない。運営コストがほとんど変わらないとすれば、いったい何のために事業運営組織をすげ替えられたのか不明という。今なお、手続き全体を疑問視する声が根強く残っている。

 また、日本郵政が1月23日、日本通運との間で合意していた宅配便事業の統合に関して、唐突に「統合プロセスを一部変更し、統合を実施することになりました」と発表したことも、その狙いに疑問の声があがっている。
日本郵政は「何ヵ月も検討してきたことで、(不純な動機で)急に変更することなどできるわけがない」と反論しているが、その中身が、「当初株主間契約で予定していた会社分割に代えて4月1日から段階的にJPEXに事業を継承する」との変更だった点に首を傾げる向きは多い。

 民主党では「日本郵政の会社分割が総務大臣の認可事項で、かんぽの宿売却で疑義を呈されるきっかけになったことに対応した措置ではないか」とみており、前述の原口議員が徹底的に追及する考えという。
また、総務省でも「会社分割の認可は不用になるが、事業計画の変更となるので知らぬ顔はできない」と実態解明に強い関心を示している。

 一連の疑問は、決して直ちに不正があったということを意味しない。この点は、関係者の名誉のために強調しておきたい。
ただ、疑問の対象になっているのが、国有財産の処分や再活用、巨大な国営事業の再編だ。言い換えれば、政府が国民への説明責任を負う問題なのだ。
それにもかかわらず、法的に厳密な開示義務がないことを盾に取り、情報を隠す今回の日本郵政の対応は、麻生太郎政権を窮地に追い込むばかりか、政治や民営化への国民の不信を助長する行為に他ならない。

 問題がここまでこじれた以上、今、起きている問題の解明だけでなく、こうしたことを許さない法整備も喫緊の課題になったと言わざるを得ないのではないだろうか。」

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