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Corrupt Postal Privatization 92

クロネコ宅急便と呼ばれる運送業のヤマト運輸が、郵便小包を目の敵にして、訴訟を起こしていたが、今月になって最高裁の判決があり、ヤマト運輸の敗訴が確定した。

2月17日の報道は、次のとおり。

「 旧日本郵政公社(現・郵便事業会社)が郵便小包「ゆうパック」を不当に安い価格で扱い、大手コンビニ「ローソン」と取引を始めたのは不公正として、宅配大手のヤマト運輸が独禁法に基づき取引停止などを求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(近藤崇晴裁判長)は17日、ヤマト運輸の上告を退ける決定をした。

 ヤマト運輸敗訴の1、2審判決が確定した。

 1、2審判決によると、旧公社は2004年8月、ヤマト運輸と宅配便の独占契約を結んでいたローソンとの提携を発表し、新しい料金体系を導入した。ローソンはヤマトとの取引をやめ「ゆうパック」の取り扱いを始めた。

 1審東京地裁判決は「旧公社のゆうパックの取り扱いは増加したが、赤字が増えているとは認められない」などとして、不当廉売に当たらないと判断。2審も支持した。(共同)」

 旧日本郵政公社(現郵便事業会社)を相手取った郵便小包(ゆうパック)の不当廉売訴訟でのヤマト運輸が負けたわけあるが、そもそも、上告すること自体が、単なる政治宣伝の様相を見せていた。

 同社の社長は、「公正な競争を、と私たちは問うている。中途半端で訴訟を終わらせるわけにはいかない」などと、去年の12月に、東京高裁判決を不服として最高裁に上告したと発表したが、宅配便業界では最大手の同社がシェア4位のゆうパックを目の敵にする矛盾を突かれた同社社長は「問題は国の信用をバックに事業を拡大してきたこと」と反論。「ヤマト側に実害が出ていない」とした高裁の棄却理由についても「当社の経営努力で損害が見えにくいのは事実だが、他社ではシェアを落としているところもある」などとの苦しい弁解をしたという。

 ヤマトが旧日本郵政公社を東京地裁に提訴したのは2004年9月で、当時新聞各紙に一面広告を載せるなど、全くの政治宣伝の手法をとり、小泉劇場の一翼を担った。新聞広告を、しかも、全面広告を各紙に載せるわけであるから相当な金額のものであったことは容易に想像され、郵政民営化論を推進するお先棒を担いだことが容易に想像された。郵政を悪者にする手法であるから、ヤマトと取引関係にあったローソンを郵政公社が奪い取った経緯などが同情を集めこともあったが、実は、ヤマトが、ローソンなどと独占契約していた中身は、わかりやすく言えばクロネコ以外の業者、ゆうパックなどの取次店になることを排除する契約があったことは、ほっかむりのままであった。訴訟は、06年1月に地裁で棄却され、翌月、東京高裁に控訴した。

一審、二審の裁判については、「ヤマト側は準備した資料も杜撰で、業を煮やした裁判長からヤマトの弁護士が注意を受ける一幕もあったほど。やる気は伝わってこなかった」とのマスコミの反応が見られたし、事実、ヤマト側は「世論を喚起することに意味がある」との政治宣伝をすることが目標であったようで、勝訴する期待は元から希薄だとする見方が有力である。

 かつて、旧運輸省など国を相手取って裁判を起こし、規制の扉をこじ開けてきたのはヤマトのお家芸であるが、見込みが乏しい裁判にいつまでもこだわり続けるのは、やはり、郵政へ揺さぶりをかけ続けることで、「信書便」分野への進出を有利に進められると考えているからではないかという見方がある。ヤマトは「メール便」なる郵便もどきの商品を開発しており、ヤマト運輸の規模の1兆1600億円のうちメール便は1300億円程度に達している。1兆円を超える規模の郵便事業会社の信書のシェアの一部を奪うことが目的であるとも考えられる。信書便法自体が、ざる法の気配があり、信書の定義もあいまいで、現実には、何でもありの無秩序の状態となっているが、残念なことに、日本の規制は、重量、価格、形状という三要素による規制ではなく、封筒に入った内容による、つまり、信書か否かという、外形では判断できない、開封してみれば検閲することになってしまうと言う自己矛盾の規制であるから、そうした、法的にはグレーゾーンに位置するメール便を維持するためには、訴訟を次々と提起して置くことが得策であると判断した側面があったのかも知れない。

総務省の調査研究会・中間報告でも、座長はこれまた、信託銀行の社長がつとめるという異例の市場原理主義になびいた研究会であるが、世界的に共通性が全くない、「信書便」という日本独特の定義を残しながら、参入業者に課しているポスト10万本設置義務の緩和などを盛り込んでいるが、この中間報告を土台に今年6月、本報告有利に展開するためにも、裁判で郵政を悪者に仕立て上げるために、訴訟という政治宣伝を継続する必要があったのではないか。

 なるほど、ヤマト運輸は単独できめ細かな全国配送網を作り上げており、単に数の上での比較であるが、ヤマトが全国に配置した集配拠点は昨年、約3700カ所に達している。郵政の約3600カ所をすでに上回っており、さらに拡大するというが、ちなみに、ゆうパックとクロネコとのサービスの違いはそれほどないというのが定説である。一方的に値段を安いと強調していたが、それは、大差のない額であってそれぞれに特徴があり、消費者からすれば、問題にならないものと考えられていた。コンビニの多くが、ゆうパックを取り扱うようになったのは、そうした現実があったからである。

ヤマトが裁判にこだわる理由として考えられるのは、社内の内部抗争から来るという見方がある。メーンバンクの銀行出身の社長が就任して、クロネコヤマトの生みの親である故小倉政夫氏の長男が降格人事と写る人事が行われている。若殿の出奔と形容されるように、米国留学に旅立っている。

社内抗争や、競争激化による現場の内部統制の弛緩などに眼を向けないで、求心力を保つために外部に敵を作り攻撃をするという、お定まりの目くらましの経営のためにも、ゆうパックという「仮想敵」を作り上げることが必要だったのではないかと指摘する向きもある。

クロネコは、ゆうパックに比較して、圧倒的な数の取次店を確保してきた。しかし、その確保は、先述したとおり、ゆうパックを排除する契約で、裁判が起こされるまで、そうした契約が、コンビニ円巣ストアなどと交わされていた事実は知られていなかったとされる。利便性の点からの優位性を、独占的に他を排除する契約で維持してきたものが、ローソンと旧郵政公社の契約によって壊されたとするのは、事実上の優位性の上にあぐらを書き続けたいという独善を主張するだけに過ぎない。理論的には、宅配市場は、寡占状況にあり、度を超せば私的独占が生まれかねないので、むしろガリバーとなった巨人の方を規制することが妥当であるが、どういう訳か、市場原理主義を謳歌した日本の小泉・竹中政治のなかでは、そうした、横柄が許容されてきた。

訴訟によって、相手を追い込んでいくやり方は、米国で一時はやった手法でもあり、そうしたやり方が、日本で野放図に許されていいはずはない。さて、敗訴が確定したのであるから、新聞広告を全面広告でだして、負けた事実を喧伝することもまた公平ではないかと思うが、もちろんそんなことをするわけもない。郵政民営化の虚妄の一つの蜃気楼でしかないからである。

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