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Bush Depression and Koizumi-Takenaka Depression

北海道の友人から、ニューヨーク市立大学教授の霍見(つるみ)先生の論文が送られてきた。重要な内容なので、自由な頒布をお認めいただいているとのことである。ニューヨークからの日本復活の処方箋でもある。ちなみに先生は、ハーバード大学のビジネススクールで、ブッシュ前大統領を教えたことがあり、辛辣に批判する論文が、同大学の学内新聞、ハーバード・クリムゾンに掲載されて話題になったこともある。(ちなみに、MBAがいかにでたらめな学位であったかを示すような例である。)(日本でも、アメリカのMBAの学位がもてはやされたが、新自由主義の崩壊で、全く意味のない学問?であった。)

「「オバマ・ニューディール(米国再建)と対日関係」
『国際商業』(2009年3月号)
ニューヨーク市立大学教授
霍見 芳浩

オバマ大統領の歴史認識と危機意識
 2月9日夜8時(米国東部時間)、就任以来初めて、オバマ大統領は記者会見を行い、約1時間にわたって、米国の経済危機と対外危機について記者達の鋭い質問もはぐらかさずに記者団と国民を納得させた。米国民はこれまで8年間のブッシュの嘘と無知に代わって知性と誠実と国民への思いやりがホワイト・ハウスに宿ったとして、国民支持率は78パーセントに高止まりした。リーダーに求められる資質は(1)正しい歴史認識、(2)鋭い国際感覚、そして(3)ノブリーズ・オブリッジ(誠実と弱者への思いやり)である。
 冒頭、米国は、1929年10月末に始まった恐慌(ディプレッション)と相似の危機にあるとの歴史認識を明らかにした。最早、景気後退(リセッション)という生易しい状態ではなく、ゼロ金利とか部分的な減税中心の財政出動での景気の自律回復は不可能だとも明言した。ブッシュが煽り続けたウォール街のマネー・ゲームによる金融制度の崩壊は、経済システムの血液循環である資金の流れを止め(クレジット・クランチ)、製造業やサービス業という実態経済を破壊し、全面的な雇用破壊による国民消費需要の急落は、地方自治体の税収入を急減させて、地方公務員である公立小・中・高校教員や警官から医療関係者の大規模な首切りを拡大している。恐慌の引き金となった住宅ローン市場破壊と共に、地方経済を破壊している。
 連邦準備銀行(日銀にあたる)の昨年来のゼロ金利政策も効目がない。全米で、雇用破壊によって毎日2万人以上が失職し、州の失業保険基金は既にパンク。GDP(国内総生産)は昨年から既に5パーセントのマイナス成長となり、100兆円以上の有効需要が消えて、このままでは、大恐慌のデフレ・スパイラルの深淵に落ち込む。
 1929年末に始まった恐慌を無策のまま、大恐慌(ザ・グレイト・デプレッション)に拡大したのは共和党のヒューバート・フーバー大統領だった。共和党ドグマの「政府は私企業の市場活動に干渉すべきではなく、大量失業者救出は政府の仕事ではない」に固執していた。遂に、米国民はフーバーを見限って、1932年の大統領選挙で民主党のフランクリン・ルーズベルトに米国再建と恐慌脱出を託した。民主党のルーズベルトは、政府の役割とは国民大衆の安全と暮らしを改善することであると信じていた。国民も企業も先行き不安と所得喪失から投資と消費を萎縮させ、国全体の有効需要を急減させ、雇用破壊となっていたから、連邦政府が大胆な公共投資と共に金融と雇用制度の改善を行って恐慌脱出の先導役となるべしというものだった。
 ルーズベルトの「ノブリーズ・オブリッジェ」の信念による「ニューディール政策」に理論的根拠を与えたのは、英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズだった。同じ頃、昭和恐慌の日本では高橋是清首相が、大量失業と貧困農村救済にルーズベルト流の政策に着手していたが、頑迷な国粋青年将校に「問答無用」と射殺された(2・26事件)。

 オバマの課題とブッシュ悪政清算
 ブッシュの唯一の功績は、かつてフーバーが、ルーズベルト政権を誕生させたように、オバマ政権を誕生させ、同時に、米国民をしてブッシュ共和党のドグマの「金権市場原理主義(別名新自由主義)の欺瞞に気づかせたことである。初の記者会見でも、オバマ大統領は約80兆円の大型景気刺激策に反対する上下院の共和党議員の時代錯誤を鋭く突いた。「共和党のこれまでの金融腐敗と大企業と富裕層のみの大減税が、現在の危機を作り出したのに、今でもブッシュ政策の継続を要求している」と繰り返した。
 ブッシュ悪政はまた、金融崩壊に加えて、米国民の違法盗聴や拷問、言論弾圧、労働組合弾圧、司法腐敗、地球温暖化の無視、石油会社と癒着した中東石油依存、そして国民間の人種、宗教、地域、年齢、職種、所得格差による反目増大、つまり、民主主義破壊による分裂国家を作り出し、米国社会を根底から破壊し始めていた。加えて石油と軍事基地を求めたイラクの独断占領や地球温暖化対策の国際協定の京都議定書からの一方的脱退が物語るように「ブッシュ帝国主義(産軍複合体の私益を守る為に、世界中で軍事力を使う)」の行動が世界の総スカンを喰い、米国の安全保障に欠かせない対外関係も破壊された。
 日本への教訓でもあるが、恐慌脱出には、政治、経済、司法、外交社会の諸々の大改革が必要であるから、まず、政権交代が不可欠である。なぜならば、もともと危機を作り出した人間やそれと同じ考えでは危機解決は不可能だからである。
オバマが手本としているルーズベルトは、大統領就任から百日以内に、銀行破産の食い止めを皮切りに、米国の経済、労働、政治、行政、教育、社会、そして司法の改革を同時に推進し、米国を再建軌道に乗せ、第二次世界大戦に勝利し、戦後の未曾有の好況黄金時代(1946~73年)の土台を築いた。まず、経済再建の為に政府と企業の関係を公正化し、各種の公共投資プロジェクトによる失業救済、労働組合の合法化、失業保険と老齢社会保障年金の創設に加えて、金融崩壊の元凶のウォール街暴走を監視する証券取引委員会(SEC)を作り、株式と証券投資の取引公正化と企業会計の透明化のルール確立に加えて、商業銀行と証券業(投資銀行)を癒着防止の為に分離した。
 ブッシュ悪政はこれらのニューディール体制を意図的に破壊した。特に、SECのウォール街監視機能を骨抜きにし、商業銀行と証券業の分離の垣根もはずした。ブッシュ悪政の経済理論は、ミルトン・フリードマン一派の市場原理主義(新自由主義)で、「貪欲は美徳」、「証券業はウォール街市場競争の自律(自主ルール)で、不正防止が可能」、「企業は短期の株価極大にのみ専念せよ」、「労働組合は無用」、」「政府による経済活動規制は悪であり、減税のみが経済成長を促す」というものだった。大恐慌から70年余、米国民の間にも、大恐慌の記憶が薄れ、ブッシュ共和党のドグマになびく者が多くなった。ウォール街の「自主ルール」は、ジャングルの弱肉強食のルールとなり、金融詐欺の横行から金融バブルとなり、バブルがはじけて恐慌を引き起こす。この歴史認識はブッシュ政権にもウォール街と癒着したSECにも無かった。

オバマ・ニューディールは成功するか
 市場原理主義の妄想を捨て切れずに、上院でオバマの「大型景気刺激策」に抵抗していた共和党議員の中から3名がオバマ支持に回り、大統領就任以来3週間足らずで、総額79兆円の「経済復興と再投資法」は成立した。
 しかし、残念ながら、1990年代の「日本の失われた10年」の二の舞となる恐れがある。確かに、79兆円の中身は、「日本の失われた10年」になるまいとして中小企業、中産勤労所得層の減税に加えて、橋や道路そしてインターネットのブロードバンドなど社会インフラで明日からでも整備工事にかかれるプロジェクトに加えて、地方自治体へ財政テコ入れと公立小・中・高校の設備改善と教員待遇改善、そして米国産業と社会のグリーン化など、一石三鳥の手を組み合わせている。しかし、GDPの落ち込みは向こう2年間に200兆円以上と推定されているから、79兆円の財政出動では、危機に見合った「大型出動」ではなくなる恐れがある。しかも、日本と違って、ブッシュ8年間で製造業は空洞化されているから、財政出動による雇用と所得拡大による消費拡大は輸入増となり、貿易収支の赤字拡大となり、景気回復のブレーキとなる恐れがある。また、オバマ・ニューディールの成功を左右するのは、金融再建つまり、ウォール街暴走の歯止めのルール再整備とSEC監視機能強化である。加えて、1992年の不動産金融バブル破壊後の日本の銀行に似て、米国の銀行はシティ銀行やバンク・オブ・アメリカ以下、多くが不良債権の重荷で事実上の破産状態にある。従って、銀行の救済と経営刷新がオバマ・ニューディールの成功の鍵である。
 日本は「失われた10年」から脱出の為に、2002年、事実上の銀行の一時的国有化(公的資金投入と経営刷新で不良債権処理)を行った。それよりも早く、1992年スウェーデンは思い切った「債務超過の銀行の一時的国有化」で、不良債権のウミを急速に出し切り、経営者の大幅入れ替えで金融を再建した。昨秋からの米国の金融崩壊の余波をもろに受けて、英国、アイルランド、ドイツの欧州の銀行も債務超過になり、貸し出し機能停止となった。しかし、政府の思い切った「一時的国有化での経営刷新と不良債権処理」によって、金融再建から経済再建へと向かっている。チビチビ小出しの救済と問題の経営者と政策の温存では、恐慌の引き金となっただけではなく、その後も経済崩壊のガンとなっている銀行は救えない。
 しかし、オバマ大統領も、ガイナー財務長官も、スウェーデンや日本の教訓は口にするが、一時的国有化と大量の公的資金の投入と経営者の入れ替えは避けている。「国有化」という言葉を観念的に毛嫌いする米国民の政治的アレルギーを恐れてのことだが、いずれ早晩、米国の銀行の本格的救済と再建には、住宅ローン市場の再建に加えて、死に体の銀行の「一時的国有化」以外には妙策なしと気づくだろう。いつこれに気づくかにオバマ・ニューディールの成否は掛かっている。

 対外関係の整備
 オバマは昨秋の選挙で、ブッシュ悪政の清算の一つとして、イラク撤兵と世界との共生のリーダーシップを公約した。共に、米国民の多くの願いであるだけでなく、ブッシュ恐慌脱出にも不可欠な急務である。しかし、金融破壊のガン・ウイルスをアジアと欧州諸国にまき続け、米国経済再建の遅れから日本の対米輸出も含めて、米国経済の吸引力が弱まったままでは、オバマ大統領の国際的リーダーシップの確立は出来ない。
 オバマの外交力が試される初の国際舞台は4月上旬のロンドンでの「20カ国首脳会議」である。この会議では、米国発の恐慌を世界的大恐慌へと拡大しない為に、保護貿易主義の台頭のけん制に加えて、米国の金融再建が重要な議題となる。この地ならしとして、2月中旬のローマでのG7蔵相会議で、ガイナー財務長官は米国の銀行救済の細部については及び腰だった。従って、米国の対外リーダーシップの回復は4月のロンドンでの20カ国首脳会議までおあずけとされた。麻生日本の名誉回復の好機だが、日本の恐慌防止の口実で公明党と創価学会を主として利する2兆円の定額給付金のバラ捲きが世界の失笑を買っている。
 また、ヒラリー・クリントン国務長官の2月中旬の中国、日本、韓国、インドネシア訪問は、「外交、経済、防衛」の三位一体のオバマ・クリントン・ドクトリンによる新しい対アジア関係の模索だった。特に中国には、北朝鮮の核脅威解消と地球温暖化防止にもっと積極的に取り組むよう要望した。日本人拉致という日朝間だけのものに固執して、日本が北朝鮮の核脅威解消の為の米朝融和のブレーキとなるのはもう許されない。日本人拉致の解決には、まず、日朝国交回復で、日本人拉致と帝国日本による朝鮮人拉致を同時に清算する。それで日本の独自外交力を世界に示す。

 オバマの対日姿勢と日米関係
 ブッシュは「成長の為のパートナーシップ」の美名の下で、ブッシュ帝国主義の為に日本の人、もの、金を利用するのに専念し、小泉政権以来の自公政権はブッシュの要求に無条件に応じるだけだった。この為に、ワシントンでの日本の存在感は消え、米国は中国との国益のすり合せに終始してきた。米国に追従するのが日本の外交だと自公政権が構えている限り、オバマも早晩、日本の一方的利用に専念するようになる。オバマ大統領の誕生で、米国は世界でそれまでのブッシュ米国の悪イメージを一掃した。国家の安全保障に必要な共生の外交力は、軍事力というハード・パワーではなく、賢い指導者と良き民主国家のイメージというソフト・パワーで決まる。国家の品格はトップで決まる。日本が米国追従を止めて、オバマ米国と国益をすり合せる独自の外交を行うのには、まず、日本の世界での悪イメージ、つまり「帝国日本の戦争責任放置」の一掃が急務である。
 2007年7月、米下院満場一致の対日非難決議(帝国日本軍による植民地と占領地での性奴隷の拉致と監禁の謝罪と補償要求)をオバマ大統領もクリントン国務長官も忘れてはいない。麻生太郎首相は父親が太平洋戦争中に、北九州の麻生炭鉱で英国、オーストラリア、米国、中国の捕虜を強制労働で虐待したのを否定していたが、昨秋、この嘘が日本政府の証拠資料であばかれた。また、麻生首相は「大東亜聖戦の迷妄」を現職のまま説いた田母神俊雄前航空幕僚長を懲罰解雇出来ず、自公政権の国粋右傾化の恥を世界に晒した。
 日本の悪イメージと信用失墜は、海上自衛艦によるアラビア海(外務省はインド洋と日本人向けに偽称)での米・パキスタン艦船への給油では帳消しにされない。この給油行動は日本の商社の利権であり、これには米国民もパキスタン国民も無関心である。また、これまで日本の唯一のソフト・パワーだった経済力と技術力も、「ブッシュ病」に感染した小泉純一郎と竹中平蔵の改悪で、世界の正面教師としてのソフト・パワーは失せている。ブッシュ恐慌以上に「小泉・竹中恐慌」で日本のGDP縮小は続く。麻生首相にはこの危機意識は無い。
 従って、日本経済の再建と対米関係、そしてアジア・太平洋での日本の安全保障の改善には、自公政権に代わる政権を誕生させて、帝国日本の戦争責任の清算が欠かせない。同時に、ブッシュ病の市場原理主義で弱められた経済と民主主義の復元が急務である。まず、小泉・竹中改悪が強行した人間切捨て経営(ワーキングプアの増産)を政府も企業も中止すべきである。
 このままでは、戦後日本を世界の経済大国にした製造業やサービス業の「現場力」と技術革新力は衰える一方である。この行く先は現在の韓国経済の衰退が示している。日本と同様に、韓国はブッシュ病の市場原理主義を無批判に受け入れた。今では、私企業雇用の9割もが「専ら請負い」のワーキングプアで、経済不安と社会不安が拡大している。日本はこの愚を止めて、製造業の復権と金融再建を求める」

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受信: 2009年2月26日 11時38分

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