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Independence

国際情勢が転変している。大東亜戦争後にはじめて遭遇する世界の体制の変更の兆候が見られる。アジアの英雄伝を執筆した、坪内隆彦氏が月刊マレーシア七月号に寄稿した論文である。Photo日本の防衛政策についての、自立自尊の日本を造りあげようとの主張であり、傾聴に値する。著者の了解を得て、当ブログに掲載することとした。ご参考まで。

「 対米自立のために自主防衛体制を確立せよ

北朝鮮がミサイルを発射した翌日の五月二十七日、アメリカの政治評論家チャールズ・クラウトハマー氏は、フォックス・ニュースに出演し、北朝鮮の核開発阻止のための交渉というゲームはすでに終わったと指摘した上で、いま北朝鮮に対して取るべき行動は、日本が核武装国家として宣言するよう勧めることだと語った。彼は二〇〇三年一月にも、『ワシントン・ポスト』紙で、中国に北朝鮮の核開発を阻止させるためには、「ジャパン・カード」(日本の核武装)を切るしかないと主張、二〇〇六年十月にも、ブッシュ政権が日本の核武装を支持するよう訴えていた。ブッシュ大統領のスピーチ・ライターを務めたデビッド・フラム氏もまた、二〇〇六年十月にブッシュ政権に対して、日本に核拡散防止条約(NPT)の破棄と核抑止力の構築を奨励すべきだと書いた。
 アメリカにおける日本核武装支持論は、経済や社会に対する国家や政府の介入を最小限にすることを主張するリバタリアンからも唱えられてきた。彼らは外交政策についても、政府の役割を制限する立場から、非干渉主義を説くからである。二〇〇三年には、リバタリアンの「ケイトー研究所」のテッド・カーペンター外交・安保政策研究担当副所長が、北東アジア地域の「核の均衡」をつくるために、アメリカは日本や韓国の核保有を支持すべきだと主張した。しかし、これらの議論は所詮オバマ政権には影響を与えないだろう。
 逆に、オバマ政権は日本核武装への警戒感を強めていると見た方がいいのではないか。クラウトハマー氏の発言の直後の五月末、キッシンジャー元米国務長官は、北朝鮮の核開発停止に向けた取り組みについて「中国が何もしなければ、韓国と日本は核兵器を保有する」と警告を発したのである。また、『ニューズウィーク』国際版編集長ファリード・ザカリア氏も、日本が核武装すれば、中国からの強い反応を呼び起こし、域内の軍拡を招くと語っている。
 昨年五月に米議会調査局がまとめた報告書は、日本が核武装を決断すれば、北東アジアに連鎖的に核保有国が生まれると指摘し、核拡散防止条約(NPT)など不拡散体制は「修復不可能な打撃」を受けると警告した。さらに報告書は、日本は核武装によって国際的名声を失い、国連安保理常任理事国入りの可能性はなくなると断じた。
 いま、北朝鮮の核開発の進行によって、北東アジアの核拡散が深刻な問題として浮上しているのである。韓国でも核武装論が台頭しつつある。与党ハンナラ党の金東聖・国会議員は「われわれも核兵器を開発することが、北朝鮮に核を放棄させる最も効果的な方法」と述べている。また、『月刊朝鮮』元編集長の趙甲済氏は、「北朝鮮の核武装に立ち向かえる唯一で効果的な方法は対応核の開発だ」と主張した(『産経新聞』二〇〇九年六月二十日付)。
 アメリカがその同盟国に対する攻撃に対しても報復攻撃すると宣言することによって、同盟国に対する攻撃も抑止できるという「核の傘」の論理は、これまでも論争を呼び起こしてきた。アメリカ政府は、核拡散防止(核独占体制の維持)のため、「核の傘」は成り立つと主張してきたが、そんなものが成り立つはずはないという主張も根強い。かつて、フランスのドゴールは「ソ連の攻撃からパリを守るために、アメリカはニューヨークを犠牲にすることはない」と言い切り、核武装を進めた。
 今回も、韓国における核武装論の台頭に慌てたアメリカは、改めて「核の傘」は成り立つのだと熱心に主張している。早速六月十六日には、オバマ大統領が韓国の李明博大統領に会い、「拡大抑止力」という表現で、核の傘を改めて明文化した「米韓同盟未来ビジョン」に合意している。
 二〇〇七年五月に開催された日米安全保障協議委員会の共同発表が、アメリカの日本に対する拡大抑止に具体的に言及したのも、そして今年六月二十五日に、次期駐日大使の有力候補に取りざたされたジョゼフ・ナイ米ハーバード大名誉教授が、下院外交委員会アジア太平洋小委員会の公聴会で証言し、日本への拡大抑止の信頼性を高めることが必要と強調したのも、傘が決して〝破れ傘〟ではないと信じこませるためにほかならない。
 日本の防衛当局もアメリカの核の傘に頼る姿勢を崩していない。防衛省防衛研究所研究部第一室主任研究官の塚本勝也氏らは、独自の核保有を目指したが、それを途中で断念したスウェーデンや台湾の事例を踏まえた上で、「……日本国内においては核武装の選択肢は必ずしも合理的と考えられておらず、そうした政策が積極的な支持を受ける状況にはない。とはいえ、海外を中心にそうした懸念が存在する以上、日本が非核の選択を行っている現状の合理性を対外的に説明する必要があ」ると述べている(塚本勝也・工藤仁子・須江秀司「核武装と非核の選択─拡大抑止が与える影響を中心に」『防衛研究所紀要』二〇〇九年一月、四十二頁)。
 しかし、国際情勢は大きく動いている。やがて、北朝鮮の核戦力がアメリカを射程に収めたとき、「北朝鮮の攻撃から東京を守るために、アメリカはニューヨークを犠牲にすることはない」との議論が噴出してくるだろう。
 しかも、中国への経済的依存を深めるオバマ政権がは中国との協調に傾斜していく可能性がある。対米追従外交の継続は、我国の自立的対中政策展開の上でも、大きな障害となりつつある。
 つまり、安全保障の観点からだけではなく、自立的外交政策の確立の観点からも、自主防衛体制を急ぐ必要がある。      (二〇〇九年六月二十八日)」

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