構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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Fool's Gold 2

ジリアン・テット氏の会見が、東京有楽町の外国特派員協会で、11月6日早朝8時半から10時過ぎまで開催された。同氏は、10年前にフィナンシャルタイムズの東京支局長を務め、日本の金融危機を取材して、日本長期信用銀行の崩壊の内幕を執筆している。米英でそれぞれ「セイビング・ザ・サン」の表題で出版された。日本経済新聞社から邦訳出版されてから、10年が経ち、新著「愚者の黄金ーー大暴走を生んだ金融技術」が、10月下旬に邦訳出版されたので、その紹介も兼ねての会見となった。セイビング・ザ・サンは、ベストセラーとなり、膨大な関係者に対するインタビューと取材を積み重ねて、日本長期信用銀行の崩壊と、それにまつわる内外の勢力の絡み合いを活写して、バブル経済の内実に迫る手法には圧倒されたことを記憶する。

今回の新著も、J・P・モルガンの金融技術開発部隊の実在の関係者の念入りな取材を中心に据えて、リーマンブラザーズの崩壊、AIG保険会社の国有化など、欧米における市場原理主義の虚妄が崩壊していく過程を織り交ぜて、今次の金融危機の本質についての回答を提示する。外国の当局者は、日本のバブル発生と銀行の経営危機について痛烈な批判をした。90年代の終わりには、外国資本の関係者と政策当局者は、たびたび日本を訪れ、市場原理、規制緩和、自己責任、透明性、創造的破壊等々、呪文に聞こえるほどの説教と圧力を加えた。横文字のコンプライアンスなどが氾濫し、ガバナンスとかの術語がまことしやかに横行した。経営者の団体が組成され、外国経営手法の福音よろしく布教されたが、何のことはない、外国の企業組織も不透明で、馴れ合いで、粉飾決算で、損失処理には消極的で、問題の先送りを行っていただけの話であった。外国経営者の手法を褒めちぎり、宣伝団体と化していた経営者団体など、解散すべきである。創造的破壊など、誰も実行せず、あれだけ批判した大銀行や保険会社の驕慢の救済を臆面もなく実行したのが、現実の姿である。

痛みに耐えよ、創造的破壊が、ライオンの咆哮のような立派な政治であるとの幻想が喧伝され、恫喝に近い構造協議が推し進められた。単に、嘘を嘘で塗り固めた投機経済で、ことの至りは、虚妄が破綻しただけの話であった。外国の制度が日本の制度より優れていることなど何もなかった。なるほど、数学者が、金融技術を駆使して、新商品を開発して、信用リスクを移転し、経営の自由度を高め、金融新時代を切り開くなどと喧伝されたが、日本でも数学者官僚が重用されて郵政民営化法案を密室で法案を差配したことが明らかになった程度である。拝金の極悪人の手にかかっては、開発者の善意が瞬く間に、赤子の手をひねるように悪用されてしまうのが、現実の姿である。より『グローバルスタンダード」を採用するようにとご託宣を述べた御用学者が、政府の要職に座長や委員として重用されたが、外国の制度が、合理的ですぐれているなどとは全くの根拠の無い、傲岸無恥の話であることを、テット氏の新著が明解にしている。2007年夏から、ニューヨークとロンドンで金融危機が表面化したときに、不気味なほどに10年前の日本の出来事と一致しているとの感想を邦人の関係者が指摘していたことから、東京に在住して長期信用銀行の破綻を目にしたテット氏は強いデジャビュの既視感に囚われたとしている。長期信用銀行の問題でも、長い法廷闘争に耐え、あるいは自裁した者が真の勇者であった事実をあらためて覚醒させる好著である。

デリバティブの金融技術が、不動産のサブプライムローンと結びついて暴走する過程の描写が、新著の本論であるが、ニースやフロリダの保養地で、訳の分からない数字や記号をふんだんに散りばめながら、仲間内の合宿や、会議にウチ興じる様は、なにか、高時が烏天狗の酒盛りに興じている歌舞伎の名場面の雰囲気を漂わせている。数理モデルに過度に依存しながらの商品開発は、正確な判断能力を失わせるものであったとの指摘も、洋の東西を問わず、ネズミ講が理屈の上では正しくとも現実には、短時間で破綻する現実の世界であるのと同様である。万機公論に決して、外部世界の失敗の教訓を尊重して学ぶべきことを放擲する愚行である。万民を幸せにしようとする協調的な社会目標を立てる後ろ盾としての権威と、世俗の権力を分離して、国家に高邁な責任感を要求するのが、日本の文明制度であり、ないがしろにするような外国勢力と追従者の悪罵には、全く根拠が無かったことが、金融危機の発生とその処理の過程で暴露されている。新著の前書きで、『巨大な信用バブルとその崩壊は、簡単に一握りの強欲で邪悪な人間たちの責任に帰せられるような話ではない。銀行や投資ファンド、そして格付け機関などの大きな欠陥のある報酬制度、歪んだ規制の在り方、監督の不備などによって金融の”システム”全体がいかに道を誤ったかが問題なのだ」と述べている。そうした市場原理主義の誤った政策手法を、後生大事に国内に導入しようとして、失われた二十年を策動した経営者、政治家、官僚の罪は重い。今次世界金融危機の中心となった、拝金の個人主義など、もともと本邦には存在しない外来の浮薄と道義に欠ける経済政策を称揚した小泉・竹中政治の罪は重い。
 
さて、金融危機のまっただ中で、外国企業から業務を移管して、人材救援などを行った企業があるが、日本人特有の義侠心に対して、国際金融資本で恩義を感じる者は極々少数であることを肝に銘じておくべきだろう。認識があれば、裏切られても落胆はしない。自立自尊を求めて外国勢力の不当な介入に対して、愚者の黄金である黄鉄鉱を金鉱と間違えることなく抵抗して、日本の崩壊をくい止めたからには、郵政民営化法をはじめ、制度政策を我が国体に合致する形で復古・回復することこそが、新政治の喫緊の課題である。

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