今週月曜にに発売された週刊朝日は、、鳩山前総務大臣が日本郵政をめぐる政治騒動について2時間半にわたるインタビューをまとめた特集記事を掲載した。次のアドレスに掲載されている。http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20090701-02/1.htm
記録に残すために、画像部分などをのぞいて、文章のみを引用しておきたい。
「日本郵政問題を巡って麻生太郎首相(68)は、盟友・鳩山邦夫前総務相(60)の“更迭”、そして西川善文社長(70)の“続投”と強引な幕引きを図った。それに対して世論は、内閣支持率の大幅下落という明確な「NO」を突きつけた。鳩山氏がクビをかけてまでこだわったのは何だったのか、麻生首相との間に何があったのか、そして、今後どこへ向かうのか──鳩山氏がその“核心”を赤裸々に語った。
──鳩山さんの“更迭”は、麻生首相の判断ミスだったのでは。
総理は人柄がよろしい人なんです。私は総理が騙(だま)されたと思っています。もっと言うと、ハメられたんじゃないかと思う。「(日本郵政の)西川善文社長は郵政民営化のシンボルだから、絶対に切ってはいけない」と進言され、総務大臣だった私を切り、内閣支持率が下がった。そして、いま総理は窮地に陥っている。「麻生降ろし」が始まって喜んでいるヤツらがいるのではないか。彼らは、この結果を予想していたのではないでしょうか。
私は「カサカサ文明」と「しっとり文明」というふうに表現するんですが、そもそも日本人はカネを重視するのではなく、非常に和を重んじ、弱い者を助けるような社会だった。そういうしっとりした幸せな社会をつくりたいんです。それが私が言う環境革命の根底にあるんです。
ところが、今の日本の文明論は儲(もう)かればいいという感覚ばかり。そういう感覚は、欧米的であって、日本的ではない。私は日本的文明のほうが優れているという確信があります。小泉(純一郎)さんがやった郵政民営化という大改革に私も賛成しました。賛成した以上、私としてはよりよい民営化とはどういうものか考えてきました。それが現状は、国内のハゲタカが群がって郵政民営化を食い物にして、ぐちゃぐちゃにしてるんではないかという状況になった。西川体制の民営化ではそれが見え見えだった。
2400億円のものを109億円でたたき売った「かんぽの宿」は、氷山の一角にすぎない。巨悪が潜んでいる可能性は十二分にあると見ています。
私は、いわば「郵政民営化の掃除人」です。不透明な部分があるから、それを表に出して掃除する。だから、むしろ小泉さんや竹中(平蔵)さんに表彰状をもらってもおかしくないんだと、国会で何度も言ってきた。でも、彼らの反応は、よっぽど「表に出て」は困るものがあるのか、あるいは、国内のハゲタカが栄養失調になる恐れを感じたのか──そうとしか思えないのです。
私は、総務大臣辞任後、今回の総理の判断の背後には「振付師」がいる、と言ってきました。それは、二つの意味があります。
一つは、菅義偉(すがよしひで・自民党選対副委員長)さんや中川(秀直・元幹事長)さんといった外部の圧力です。彼らが、西川さんを切ると「麻生降ろし」に繋(つな)がる、と脅しをかけた。それに総理は流されたんです。
─麻生首相から後継人事に関する手紙をもらったと聞きましたが。
4月7日に、温かい手紙をもらいました。そこには、
〈西川さんの後継問題でお悩みでしょう。あくまでも参考ですが……〉
と数人の名前が書いてあった。それは、これまでメディアで報じられた名前ではありません。私もオープンにしていませんが、とにかく総理は謙虚に、しかし、確かに示唆してきたんです。
それで私は、日本郵政社外取締役の奥田碩(トヨタ自動車相談役)さんを中心にお願いして、ずいぶんいろいろと動いてもらった。ところが突然、「西川さんは切れない」と一変した。
5月18日にあった日本郵政の指名委員会で、西川さんら取締役9人全員の再任が決まりましたが、総理の“変化”に気付いたのはそれ以前、恐らく4月の下旬くらいでしょうか。この“変化”は、私にとって残念でした。
もう一方の「振付師」は、内閣官房です。いま内閣官房は、ものすごく弱体化している。かつて二階堂進・元党副総裁や大平正芳元首相が官房長官だった時代は、官房長官が先を見越して様々な判断をバンバンしていた。そのような人物がいなくなってしまったのです。
本来、調整・根回しをするはずの内閣官房が、まったく機能していません。今回の日本郵政を巡る問題でも、通常、こういうことがあれば内閣官房が動く。ところがその力がないから、総理ご自身が心配して私に手紙をくれたのです。
総理は官僚の言うことをよく聞いてしまう。内閣官房の官僚たちの“作文”を鵜呑(うの)みにするから、国民が納得できるような説明ができないんです。鴻池祥肇(よしただ・前官房副長官)さんがいれば、違っていたでしょう。確かに女性問題はだらしないんだけど(笑い)、あの人がいたら今ごろ、西川さんがクビになって、私は堂々と総務大臣を続けていたかもしれない。官邸力がまったく地に落ちていることに、総理が判断を誤った原因があります。
総理の判断ミス 資格が問われる
──このままでは郵政民営化は胡散臭いものとみられるのでは。
国家的損失です。政治的な勘の悪さと見識の悪さでしょう。国民目線がまったくない政府だということです。当たり前のことを当たり前の感覚で行動すると、閣僚のクビが飛ぶ。そして、その当たり前のことをした私を国民が「頑張れ! 頑張れ!」と激励する。これは異常なことですよ。
──鳩山さんは麻生氏を首相にするため、ずっと支えてきました。麻生首相は、「総理」になる前と後で何か変わったのでしょうか。
基本的に、人間性が変わったとは思いません。私は割と「人格」を重視するほうなんです。古代ギリシャの哲人政治ではありませんが、“いい人”が政治をやるべきだと思う。その意味で、総理は人柄がいい。気配りの人で、情の人です。
政策的には、経済重視の総理と環境重視の私とでは合わない面がある。いつまでも企業経営者の感覚が抜けないのも気になるところではあります。実際、西川さんの人事問題で、総理が「民間に政府が手を突っ込むべきではない」と言っていたのも、誤った振付師に言わされていたのでしょう。総理は自ら企業経営者だったもんだから、企業に詳しいし、そっちに意識がいく。でも、日本郵政は「株式会社」ではあっても、厳密に言えば、政府が100%の株を持つ「特殊会社」です。その経営はまったく別物ですが、発言を聞いていて、ひょっとして特殊会社と(麻生首相の家業の)「麻生セメント」がこんがらがっているのかな、とちょっと心配になることがありますね。(笑い)
いずれにしても、日本郵政の人事問題は総務大臣の認可権限であり、総理が決断する話ではない。「よきに計らえ」と言っておけば、何の問題もなかった。それが、自身の舌禍が続き、支持率も上がらない中で、妙に弱気になって“圧力”に流されたのではないでしょうか。
しかし、今度のことは、総理が騙されたとはいえ、騙されちゃいけないのが総理なんです。そう考えると、なかなか難しいかもしれないですね。
私は麻生内閣を作るために一生懸命やったから、そうは思いたくないんですが、ああいう判断ミスは総理大臣としての資格を問われても仕方がないんじゃないでしょうか。
最後には戻ってきてくれると…
──その麻生首相は、期待されていた早期解散をなぜしなかったのですか?
まずは麻生カラーを出して人気沸騰させてから、と思っていたんだけど、なぜか沸騰しなかった。
麻生さんの欠点を挙げるとすれば二つあって、一つは、人がよすぎて人の意見を聞きすぎる。それも、後から来た人の意見をね。最後に会った人の意見が麻生さんの意見になってしまう。
もう一つは、保守的すぎること。党内バランスを考えてしまうのです。
世の中の人は、総理にまったく逆を期待していたでしょう。私も逆のタイプだと思っていた。ところが、思ったよりも保守的だった。反骨精神が足りないんだよなあ。「失敗したくない」という思いから、決断できず、国民目線を失ったのかもしれません。
そもそも、総理大臣は激務すぎて、考える余裕がないのです。考える余裕がないから、人の意見を聞くと流される。だから、「らしさ」がなくなったんだと思います。
そう感じたのは、「定額給付金」の時でした。
担当大臣(総務相)だった私は、総理大臣室で「絶対に所得制限はできない」と申し上げた。ライン引きの根拠となる税務情報は、使えたとしても5月になるから、今春には間に合わないと説明したら、総理は「わかった。技術的に無理なんだね」と言っていました。記者会見でも「(定額給付金は)全所帯にいく」とはっきり言っていたので、私は大いに満足していたんです。
ところが、その後の経済財政諮問会議で「金持ちがもらうのはおかしい」という意見が出ると、総理は「さもしい」発言をしちゃった。あれほど説明したのに、私が信用ならなかったのかと悲しい気持ちになりますよね。あれはショックでした。
ただ、総理は今回の郵政問題でも、逆ブレして最後には戻ってきてくれると思ったんですよ。ところが、肝心の時にブレてくれなかったんだね(笑い)。まあ、総理も見る目がないが、私もないということでしょうか。(笑い)
──民主党に戻って、兄・鳩山由紀夫代表と一緒にもう一度、政界をかき回すことはないのですか?
一つの考え方ではあるけれども、現実的には考えられないですね。
もしも総選挙で民主党政権になったら、日本郵政を巡って私が問題にした事柄は、すべて真相が明らかになって、西川さんの“更迭”を始め、だいたい私の思ったとおりになるかもしれません。結果オーライになっちゃうのかな。だけど、民主党には政権をとらせたくない。
兄貴とは感覚が違います。兄貴が総理大臣になったら、麻生さん以上に庶民感覚がない内閣になっちゃうでしょう。
麻生さんと兄貴を比べたら、間違いなく麻生さんのほうが“いい人”ですよ。兄貴は、人を利用する天才だからね。「歩くしたたかさ」ですから。兄弟で子どものころから一緒に遊んでるけど、何でこんなに感覚が違っちゃったのか。
──いま総選挙を前に「離党」「新党」などとも言われていますが、今後のことをどう考えていますか?
きれい事は言いません。現実的に、いま離党は考えていない。
辞任以来、東京、久留米の事務所は電話が鳴りっぱなしです。「頑張れ、応援するぞ」と激励の言葉をいただく。ただ、「自民党は応援しない」という。自民党の危機ですよね。自民党をたたき直す方法は何かないか、考えているんです。自民党には、私が新党を作らないですむ状況であってほしい。自民党が「善悪判断」「政治判断」がちゃんとできる政党に生まれ変わってもらわないと、いずれ私はいられなくなる。
新聞などの一連の報道で「暴走バト」とか「欲の塊で、総務大臣を辞めたんじゃないか」とか書かれていますが、腹が立ちます。「欲の塊」ならもっとうまく生きてますよ。(笑い)
実は、総務大臣を辞める1週間ほど前、総理と飲んだんですよ。そこで私はこう申し上げました。
「私はこれまで、総理になれっこない麻生太郎の選対本部長をやるのはバカだ、といろんな人に批判された。ならば、この“いい人”を総理にしようと『太郎会』を結成し、人とカネを出して2年間、“錬金術師”の思いで頑張った。麻生内閣を作るために走り回って、十二分に充実した日々を送ることができて感謝します」
そして、こう続けたんです。
「ただし、私は性質(タチ)が悪いですよ」
総理は「どういう意味?」と聞いてきましたが、要は、私は「欲」がないんです。これまで5回も大臣をやっていて、こういうこと言うのもおかしいかもしれませんが、出世欲がない。
捨て石の覚悟で勝負に出るのか
私が重視しているのはただ一つ、「世直し」です。それができないならば、自然の中に入って趣味の蝶(ちょう)を追いかけているほうが幸せだ。いつ国会議員を辞めてもいい。だからタチが悪い。つまり、「西川さんをクビにしないと納得しませんよ」という話です。総理が理解したかどうかはわかりませんが。
私に「私心」があるとすれば、世直しのきっかけを作って、後世の人に、そのきっかけを作った鳩山邦夫は素晴らしかったと言われたい。生きているうちは、大したことをやらなかったと言われても、歴史が「先見の明があった」と評価してくれれば本望ですよね。私は、初当選の時からずっとそう思ってきました。
──自民党をたたき直すと言うなら、鳩山さん自身が、総理総裁を目指すべきでは?
いろんな人から、こういうことは言うな、ああいうことは言うなと言われていましてね(笑い)。最終的には自分の言葉で話しますから。
先日、広島で講演会がありました。その時、一緒に壇上に上がった政治評論家の岩見隆夫さんが、こうおっしゃったんです。
「本人がいるから言いにくいけど、あえて言えば、時代が節目を迎えている時には、誰かが無謀と思われても行動を起こさないといけない。歴史とはそういうものだ。鳩山さんが新しい行動を起こしてくれることを望むね」
かねて岩見さんは、私に新党を作れと言ってきた。特に、酔っぱらうと凄い(笑い)。岩見さんの言葉は響きますよ。
誰かが捨て石にならないと変わらない──悩むところです。もちろん、政治は「数」の勝負だから、仲間がいないといけない。しかし半面、「捨て石」の覚悟を持った人間がいないと歴史は正しい方向にいかないし、誰かが新しい時代を先取りしないといけない。
私が総理になりたいと思っても絶対になれないと思う。だけど「捨て石」を覚悟した時に世直しができるし、万が一、いや、1億分の1の確率で、「総理」という話があるかもしれない。その時は、やりますよ。」
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