構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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Right before the Dawn

夜明け前だ。先の見えない激動期であればあるほど、精神主義に堕することなく、四海の状況を的確に把握して、国民に過不足なく情報開示して、冷静に彼我の力を分析して対処することが大切である。自らの力を過信して国民に弱点を伝えないマスコミの横行を許し、小村寿太郎や金子堅太郎の尽力を虚しくして、坂を下り始める端緒となったのが、日露戦争後の日比谷焼打ち事件であった。その悲劇を繰り返してはならない。
 当時の指導者は、政治も軍事も、前線にある参謀も、刀を鞘に納める時期を気にする謙遜を心得ており、事大主義の毒はなかった。小村はハーバード大学を最初に卒業した日本人で、金子もワシントンやボストンに友人を持っていた。ヨーロッパ各国にも、情報能力に長けた外交官や軍人を配置していた当時の日本国の対外情報力と比べて、現在の経済大国日本の能力はどうだろうか。国運を賭ける留学生の数はめっきり減ったし、企業も外国派遣の俊秀の教育を怠り、国内の処世術に長けた人士が登用される内向きの雰囲気である。
「常識ある主脳力の存在しなかった事、往年の山縣、大山、山本権兵衛、と云うような大人物に欠け、政戦両略の不充分の点が多く、且軍の主脳者の多くは専門家であって部下統率の力量に欠け所謂下剋上の状態」になってはいないか。
 世界第二の経済大国になっても、外国依存の戦後体質が染み付いており、自民党政権下の対米追従に対する厳しい批判があっても、いつまで外国軍隊の駐留を認めるのかとの疑問が湧き起こっても、まともに応えることができないのが現況である。失われた20年の中では、同盟国からの市場原理主義の提唱に疑義をはさむことをせず、特に冷戦後の一国主義にエルビスプレスリーの物まねで追従し、金閣寺で足利義満ならぬ日本国王もどきの接待に追われたことは、慙愧に堪えない。
 郵政民営化の時に、自動車会社の社長が鉢巻をして刺客選挙を大勝させたにもかかわらず、経済危機の中で単なる外国企業の扱いしか受けないのは、国際関係が冷厳であるばかりではなく、小村や金子のような、外国の中枢に近接できる人材が民間に欠けている事態を露呈している。ASEAN諸国連合を創設してシナの台頭に備えたアジアの知日派の指導者が、日本の経済大国化と日本のプレゼンスとの関連性の薄さを指摘していたが、どうやらアジアの兄弟友人も減ったようだ。前の湾岸戦争で、日本人がサダム大統領のゲストになった事例で明らかになっていた。木造の掃海艇がインド洋の波涛を越えるときに海運会社が横目にしただけで、航空会社も緊急脱出の用意をしなかったことではっきりしていた。決死の着陸をして、日本人を救出したのは、トルコの航空会社であった。「陸海軍の不一致」のように、国策になればなるほど、官民非協力の、根拠のない民業圧迫論がはびこった。
 同盟国の米国で大きな政治的な地殻変動があったからには、同盟の価値と意義とを再定義して再確認をしなければ、日英同盟のように空洞化していくことは必定である。経済的には、米中間の方が準同盟になっているのではないのか。米国はもはや、居丈高な一国主義をとらないことを明言しているが、オバマ大統領の提唱する核のない世界が、東京裁判史観などを変更する契機を秘めているのか、日米関係をどう再構築していくのか、同盟の相手国の国内の変化は、むしろ好機であるとしてが米国の研究を開始すべきである。
 残念ながら、中枢の対米研究所が一つもないのが日本の現状である。シナは、全米各地に孔子学院を展開して政治宣伝を強化している。日露戦争の最中に、日米間でフィリピンをめぐる密約が交わされたが、最近の軍事的な膨張と海洋進出は、決定的な不安定要因として働くことになるから、太平洋地域における米中関係の将来を見極めることも、日本の存立の基本条件として肝要である。
 経済進出ばかりが重宝されたが、そろそろ対外政略の研究を振興すべきである。ウィグル、モンゴル、チベットなどから、圧政で日本に逃れる人士も増えているから、勇者を日本の国柄に共鳴する友人として支援することも必要である。太平洋の分割の野合が現実化するとは思われないが、現実の脅威から目をそむけるようなダチョウ国家になってはならない。いずれにしても、経済力ばかりでなく、持てる力の全てを冷厳に評価・判定する必要があり、特に軍事力については、自立・自尊の方向で、ただ乗り論など早々に遺棄すべきではないのか。外交能力の強化も、喫緊の課題である。米国は30年代の混乱の中で、外交官養成学校などを本格的に創設しているが、経済低迷の渦中の今こそ、大東亜戦争直前に設立した中野学校などを先例としながら、官民の別なく、地球的な視野を備えた専門人材増強に踏み切ることが課題である。「兵法の研究が不充分であったいう事、即孫子の、敵を知り、己を知らねば、百戦危うからずという根本原理を体得」することである。
 昭和12年に刊行された「国体の本義」の主張の如くに、神がかり的な狭隘なナショナリズムを排して、科学の力に基礎をおいた合理的な思考回路を国民的に涵養することが必要である。現代日本の繁栄は合理的な思考で、ものづくりで西洋世界に伍しているからである。金融立国などと騒いだ割には、外国勢力に収奪されただけで終わったが、劣っているのであれば、シティやウオォールストリートで徒弟になって、習得する以外にない。フランスは、城壁の階段を登ることのできるシトロエンを作り、ドゴール将軍のディアマンのロケットはコンコルドとなり、ついには、航空機製造を商業的にも成功させた。日本に天然資源はない。知識と人材だけが頼りだからこそ、ものづくり能力を破壊しようとする陰謀があるのだ。「あまりに精神に重きを置きすぎて、科学の力を軽視」してはならない。精神主義など、何の足しにもならないのだから。

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