構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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Declining Market Fundamentalism

時代の寵児の主張を正面から批判する記事が出始めたことは、日本でも、外国の勢力に加担する拝金の市場原理主義が退潮に向かっていることを感じさせる。

http://diamond.jp/articles/-/9392

要旨は次の通りである。

光回線を使った高速のブロードバンド通信は、世界最高水準にあり、これは、巨額の赤字を出しながら、設備投資を続けてきたNTTの功績である。ところが、黒字化が見えてきたところで新たな難題が飛び出してきて、横やりが入っている。  NTTの電話部門の会社は、過去10年間続いていた「減収」を脱却して「増収」に転じた。携帯のNTTドコモとデータ通信のNTTデータが減益となった一方で、NTT東西の業績が上向いた。光回線などのインターネット関連の収入が長期低落の電話による収入の落ち込みをカバーするようになったからである。

99年の「NTT再編」で4社に分割され、電話の需要の減退をリストラでしのいできた。それまで、(週休二日制を実質的に導入するなど、高級の体質があるとの批判があったにせよ)、ベースアップを見送り、02年からは賃金を3割カットし、01年から03年までの3年間新卒の採用を凍結するなど、苛烈なリストラの中で、毎年1000億円以上の巨額の赤字を出しながらIP関連の先行投資を続け、“収益構造の転換”が視野に入ってきた。

 この10年間、同社を苦しめた要因は、NTTが持つネットワークは、ドミナント(支配的な地位)になりうる設備だとして、競合他社に有料で貸し出すことが義務づけられ、貸出料金は、光回線の普及を促進するために、01年の時点で向こう7年間の将来需要を予測し、あえて高めに設定した目標を7年分に加重平均した同一料金に固定された。接続料と実績コストには大きな乖離があり、08年から負担を軽減する算出方法に変わるまで、NTTがかぶってきた。

ところが、光回線のネットワークを網羅的に敷設し続けてきたNTTが、10年かけて下げたコストに対し、現状の約3分の1以下の「1400円でできるはず」と言い出した人が、ソフトバンクの孫正義社長である。公聴会の場で「690円で可能」と言っていたが、現在は「1400円で可能」とブチ上げている“破格値”の算定根拠は、いま一つ不明確であるが、総務大臣の「光の道」構想(2015年までに全国6200万世帯すべてに光回線を張り巡らす計画)でも、ソフトバンクからの提案として出されている。この1400円の算定根拠については、実現可能性を信じる人はほとんどいないと言われている。100%の光回線ができれば、ソフトバンクは自社で巨額の設備投資をすることなく、NTTから安価に借り受けることで、事業を展開できるという巧妙な“仕掛け”も隠されている。意気投合した原口一博総務大臣の肝煎りの政策ということで、「光の道」構想は次期通常国会に法案として提出される運びだ。「光の道」構想には、既存の電話回線(メタル線)をはがして、すべて光回線に張り替えるという計画が盛り込まれている。また、ネットワークを持つNTT東西を公社化して、インフラ設備だけを切り離すといった“極論”まで含まれる。

週刊ダイヤモンドの記者の署名入りの記事である。

時代の寵児は、過去に、日本が開発を進めたトロンというコンピュータの基本ソフトの採用について問題を起こしたことがあるが、日本の光技術の進展についても、外国主導の中途半端な技術で、日本の光回線に転換する政策を遅らせることに加担したのではないかと詮索することも可能である。NTT側にコストの高さという問題があったにしても、その価格差から巨万の利益を上げることが、ビジネスモデルであれば、単にたこ足の話でしかない。小泉・竹中政治のひとつの政治過程の闇の部分としてこれから解明が待たれるNHKの民営化の件の手法としても、話題になったことがあるが、減価償却を終えて回収期に入った設備を安価に手に入れて、莫大な利益を上げるやり方でしかない。市場原理主義の迷妄な手法のひとつである。その間の技術進歩は、利益は上がるが低迷してしまう。郵政民営化で、長年の投資で減価償却が終わりつつある簡保の宿を、格安で、仲間内に売却しようとした手法と本質的には同じである。郵政民営化で、不採算の民間の宅配便を、企業合併の手法で、利益の上がらない部門を公的部門に押っつけたやり方とも近似している。

クリームスキミングの、いいとこ取りの典型であり、規制されるべきであるが、この国では放任され、あるいは、いい話の様に喧伝された。世界的には破綻した市場原理主義の虚妄であるから、ようやく、その手法について批判する記事が出始めたことは、ことのほか慶ぶべきことである。

しかも、通信放送のコストは、日本では税金で出されているわけではなく、あくまでも、視聴者や通信利用者の料金から支払われており、ユニバーサルサービスは、共生の思想に基づいて実施されている。施しではない。全国津々浦々に普及させる情報通信政策については、世界的に見ても成功例であり、電話普及の為の債券制度の導入などは、世界的に賞賛された制度であり、非白人の国家の中では唯一の例である。日本の行政当局は、一部の経済資本家に加担せず、全ての国民に便益をもたらそうとする津々浦々主義が正統であり、時代の寵児と一線を画するのは、当然の経緯である。日本に、ミッシング・リンクはない。

市場原理主義は、しばしば、電波の競売などを主張することがあるが、これについては、既に、ヨーロッパなどで、大失政となった経緯もあり、全くの虚妄であったことが実証されている。ヨーロッパの携帯電話会社に投資して巨額の損失を出した手痛い目にあった事件も起きたが、日本の情報通信政策に対しても、外圧が頻繁に加えられた。日米構造協議などその典型であった。誤った政策が臆面も無く押しつけられた。一部の日本側の政治家や経済人が加担した。巨額の市場価値が海外に流出した。サッチャー首相が、要求して設立した携帯電話の会社の利権などは、どこに引き渡されたのか。ようやくそうした市場原理主義の根拠のない暴論や闇の部分の検証が、不当な圧力なしに可能となる時代背景になってきていることを実感させる、要点を衝いた優れた記事である。ご参考まで。

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コメント

Orwellさん、アメリカで共和党が議席を伸ばせば、市場原理主義はまた力を取り戻すことになります。その波は必ず日本に流れ込みます。私は、日本の政治に、それに抗する力はないと懸念しています。私が、NYタイムズにオバマ政権やクルーグマン博士支持の投稿するのは、力及ばずといえども根っこに働きかける意図です。Orwell さんのWSJへの投稿を高く評価させていただくのも同じ理由です。政治信条は私とは相当違うと思いますが、反アメリカ的発言をされている植草一秀氏や副島隆彦氏などが、その激しさを直接海外メディアにぶつけられると良いのにと歯がゆい思いをしているのも本音です。アメリカ合衆国研究所構想も含めて根元と戦う勢力を結集したいですね。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

投稿: 渡辺日出男 | 2010年9月16日 19時40分

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