構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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Coup d'etat

2007年2月に書いた拙文が他のサイトにあった。転載する。ご参考まで。それにしても、日本は菅政権になって、いよいよ新自由主義の政策の色が強くなった。外国勢力の影響が強くなっている。困ったことです。タクシンが失脚したことを書いている。今年は、夏にようやく総選挙が予定されている。

[タイのチェンマイに行ってきました。その昔よく訪れたのは、在チェンマイの邦人がわずかに20~30人の頃で、タマモト事件が話題になった時代でした。それが、現在は領事館に登録しているだけでも2000人を超えたとかで、反日の雰囲気はもう見当たりませんでした。日タイ友好の機運が4半世紀の努力でつくられてきたことがよくわかりました。市場原理主義に与しないで、着実に日本なりの信頼を勝ち得ていくことの意味を実感する旅でした]

 その昔、タイの大蔵大臣に慶応大学の卒業生が就任したことがある。ソンマイさんである。タイはなぜ、成長率をもっと上げないのかと質問したら、そんなことぐらいわからないのかと、若い日本人を諭すようにお話をいただいたことがある。ソンマイさんは、こう話された。東北タイはじめ地方部の生活水準を上げるほうが大事で、貧富の格差をいかに縮小していくかが大切だ。経済を活性化させて成長路線をとることはいとも簡単だが、それでは国のためにならないと。プレム首相の時代で、貧困撲滅運動をスローガンに掲げ、実際にまだタイ共産党が残っていたり、半島向けの大陸からの謀略放送があったりした頃のことだ。
 ASEAN成立後間もない時期で、フィリピンのシーシップ氏や、インドネシアのアリ・ムルポト将軍、そしてタイのタナット・コーマン氏などの優れた政治家がバンコクを往来し、日本からも大来佐武郎氏などがやってきて経済開発のために尽力していた。
 あれから、4半世紀。タイのチェンマイへ行く機会があった。チェンマイは、去年のクーデタで追放されたタクシン前首相の出身地である。シナワトラという絹織物の出店が、バンコクのペブリ通りから入り組んだところに店を構えていた。もともと北部の華僑としては、有名な絹商人であったが、最大の富豪になったのは、タクシン首相本人の商才である。警察官僚出身ではあるが、通信技術の変遷に対応して、携帯電話事業を起こしたことがその富の源泉であったことは疑えない。人工衛星を打ち上げてもいる。
 失脚の原因は、税金を払わなかったとか、いろいろ伝えられているが、チェンマイで聞いたのは、やはり、携帯電話会社を格安で、外国政府の息のかかった、投資会社に売却したことではなかったかとの意見が多かった。
 携帯電話の技術革新は、まず失敗した事例は見当たらないほどであったし、制度としては、電波のオークション制度が世界的に失敗したぐらいで、開発途上国でも大いに発展している。日本でも、携帯電話の創業の時期に、サッチャー氏の英国政府は、市場開放の圧力をかけて、電波利権を確保したが最近に至って経営難から日本市場から撤退している。莫大な額で売却して、資金を還流させている。もうアジアの国で、携帯電話が普及していない国は数えるほどであるが、資本の往来する市場としては金城湯池の世界であったことは容易にうかがえるところである。それが汚職の原因ともなった。
 タイでは、先人の努力にもかかわらず、急成長する中で、社会経済格差が、拡大したわけである。ソンマイさんなどが主張した格差是正の理想はなおざりにされ、国が分断されかねない危機意識が、クーデタの引き金を引いたものと思われる。
 4半世紀前でも外国資本に対する警戒心は相当なものである。51%のルール、すなわち外国人には決して支配権を渡さない、株式の過半数を渡さないことに対するこだわりは相当のものだが、最近は名義貸しの抜け穴が横行して問題化していた。アジアで列強の植民地にならずにすんだのはタイと日本だけだが、そうした厳格さ(決して表面には出さないが、微笑の内内に秘めて)にも国益を守ろうとする姿勢に反映されている。 タクシン氏はアメリカの広告会社などを顧問に雇って復権を狙っている趣で、先月の来日を含め各国を往来して宣伝にこれ努めているようだ。これに対抗して、最近、暫定政府側が読売新聞の独占インタビューに応じて意見を表明していたことは特筆すべきである。読売新聞はタイのネイション誌と長い提携関係にあり、実態を反映していた記事であった。タイの国軍司令官としては初のイスラムの名家の末裔の出身であり、政治的な野心はないと言い切っている。本音だと思う。
 自国民のためではなく、巨万の富で私腹を肥やし、外国にたやすく国民資産を売り渡してしまうことは、独立の気風の強いタイでは我慢のできないスキャンダルであったと思う。この国でも、携帯電話事業会社が、ヨーロッパの会社に投資をして、莫大な損失を喫したことが近年あった。どこか共通するような事例である。外国資本の携帯電話会社が経営不良と見るやさっさと売却して撤退したのは、先述の事例であるが、もともと無料(?)で獲得した公共の電波権益を利権化して咲いたあだ花であったのかもしれない。

 郵政民営化の問題も上述のような国益の観点から再考する必要がある。3年以内に金融部門の株式を公開するというが、誰の利益のためなのか。国内に貧富の格差、地域間の格差を拡大させることにはならないのか。株式の売買で、支配権が外国に移ることはないのか。営々として蓄えられた莫大な国民資産が一部の資本家の手に移ってしまうことにはならないのか。それを防止するどんな手立てが考えられているのか。 きわめて非民主的な、憲政の常道に反する政治手法で採択された郵政民営化法は、むしろそうした危惧を内包する体系となっている。
 タイでもタクシン氏は、強権的な手法をとった。言論にも容赦のない弾圧を加えたし、無実の人物を投獄するようなこともまま見られた。タイ南部でのイスラム教徒のマレー人の弾圧は、強硬なものであった。老婆心ながら、日本の投資家や企業家の中にも多少与した者があったのではないかと心配する。報道によれば、中国はさっさと内政問題として中立を声明している。さて、わがほうはといえば、欧米の一部と組んで、一部日本人が投資法令のことを問題しているというが、海外でも欧米の市場原理主義者たちとは一線と画す方が、アジア各国との良好な関係を維持するためのたしなみと思う。
 この国では、タイの混乱を他山の石として、春の統一地方選、そして夏の国政選挙で勝利して市場原理主義の改廃を求めて政策転換をさせ、例えば、郵政民営化や道路公団の民営化、医療制度など一連の私物化路線の改悪を見直すことが必要である。そして、市場原理主義の放埓に呻吟するアジアの各国に希望を繋げる仲介の役割を、日本が果たしていかなければならない。

 

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