構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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Sicco Remembered

2007年9月28日の日付が残る。懐かしい原稿である。郵政民営化は実行に移されて,簡易保険の事業は、大正時代以来の社会政策の幕を閉じる,と書いている。

僅か四年の間に、夕日がつるべ落としのようになるように、政策を誤ると国は急速に傾く。この記事を書いた後に早速圧力がかかったことを思い出している。東京に外国の利権団体の関係者がいてそこからの圧力であったが、おかしなことである。その国では政権交代があって、医療保険制度の改善が追求されているが、骨抜きにされたとの見方もある。

シッコの映画は,いわばベストセラーの映画であった。ご関心の向きは、ビデオをご覧下さい。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%B3

医療の市場化、郵政民営化は亡国の改悪だ。
映画劇場で市場原理主義の惨状を思う。

 マイケル・ムーアのシッコという映画が日本でも封切りになった。シッコとは、お病気という俗語だが、アメリカの医療保険制度の欠陥を追及した話題の映画だ。保険に未加入の人口が約五千万人あり、病院に行けないで死亡する人が、毎年約一万八千人だという。世界保健機構の順位では、医療保険の充実度は、世界第三十七位。一昔前でも歯科治療の法外な値段は有名で、出張や留学する場合には、海外旅行保険をかけていくのが常識だった。盲腸炎の手術がニューヨークでは、200万円はかかるとの調査で(日本では33万とか)、保険がなければ、大変なことになる。医者にかかるにはいちいち保険会社にお伺いをたてる制度で、どの病院を使えとか、保険の適用・不適用を指図する。その団体の審査医が、とにかく10%ぐらいの保険の申請は拒否しろ、そうすれば、給料が上がり、昇進する、成果主義?の医療体制になっている。電気のこで中指と薬指とを切断したときに、どちらの指をつなぐかを保険会社が指図する。(筆者の知人がベトナムで五本の指を落とす事件があったが、合気道の名人で、あわてず騒がず指を病院に持ち込み、縫合手術に成功した。アメリカだったら、機転はきかなかったか。)金が払えなくなると、タクシー券を渡して、患者を路頭に放り出す。もちろん救急車は有料だ。アメリカの病院の周りにはホテルがあるが、これは入院費が高いので入院しないためで、退院を急ぐのは、料金が高いからである。カナダは国民皆保険制度だから、車で国境を越えて病院に行く方が格安で、医療費用捻出のための偽装結婚すらある。世界貿易センターのテロの後の瓦礫の中で英雄的な仕事をした消防士に呼吸器に障害が出て、一本125ドルの薬を保険会社が認めないので治療を控えていたが、テロリスト収容所のあるキューバに行ってようやくまともな治療が無料で受けられた。同じ薬が一ドルもしない。イギリスは、租税負担の国立病院では無料診療で、病院までの交通費すら払い戻す。日本にもまだないのだが、パリには24時間の医者の往診サービスがある。さすが、国境なき医師団の発祥の地だ。子供が生まれると、週二回、ベビーシッターのサービスもある。夕食の用意もする。出生率が上がるわけだ。フランスは食料の自給率も百パーセントを越えている。フランスの航空会社を、何で民営化しないのだと聞いたら、世界で一番おいしい機内食を出しているのに、何でそういうことを聞くのかと食ってかかられた。日米構造協議とやらで圧力をかける側の医療制度が劣悪であることを天下に明らかにした映画である。アメリカの業界の意見は、アメリカ人の声を代表しているわけではない。ヨーロッパの医療制度が発達したものであることを見せつける。
勿論、ただより高いものはないような話もあった。モスクワの暖房は無料だったが、暖房を止められると凍死するから、政治的な主張をする活動家は携帯の白金カイロをうらやましいと思うのが本音だったし、病院も格安ではあったが、注射針も使いまわしして、家畜用の麦をパンにして食べた共産主義国の話も多々あった。イギリスやフランスやイタリアでは、無料だからといって医療水準が低いわけではない。アメリカのように一部の医療水準は高くても、多数の国民が医者にかかれない国は先進国といえるだろうか。日本は昭和36年にやっと国民皆保険の国となったが、映画シッコでは日本の例は残念ながら紹介されていない。医療改革と称して、自己負担の割合が増えたり、企業の保険組合が赤字になったりして、財政赤字を理由にどんどん改悪を進めて、世界の医療保険優良国の地位から外れてしまったのかもしれない。
 日本の国民皆保険は、一朝一夕に成り立ったわけではない。国民の医療費の重圧から解放するために、医療の社会化を目指した、鈴木梅四郎のような人物の思想と行動が結実したものである。(1928年に医業国営論を著し、衛生省を頂点とする医療国営を提唱している。同書は戦後原書房から再刊されている。)郵便局の簡易保険なども、大正の時代に、国民の医療費を補うために設計された無審査の、どこでも、だれでもはいれる、画期的な文字通りのユニバーサルな制度であった。(現在でも、危険な職業の、例えば自動車レースの運転者などが入れるのは簡易保険だけである。)
 小泉・竹中劇場政治の日本では、規制改革会議と称する市場原理主義を追従する連中が、病院の株式会社化とか、介護の民営化とか、混合医療の解禁とか、人間の病をネタに金儲けするアメリカ保険業界の手法が、次々と強気で提案された。郵政民営化でも簡易保険を廃止せよと迫られて、米国の保険業界のロビーストが暗躍した。郵政民営化が10月一日に実施されれば、簡易保険は大正以来の社会政策の歴史を閉じる。郵政民営化自体が、アメリカ保険業界の陰謀が作用したことは、もはや明らかである以上、早急に凍結、見直しを図り、不要の混乱と破壊を回避しなければならない。
 この映画を見れば、日本がアメリカを真似して導入した色々な分野の構造「改革」が、亡国の改悪にしか過ぎないことが容易に想像できる。市場原理主義は、同胞・はらからの安寧と幸せを四方に念じる、日本の国体にはなじまない。

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