Darkness behind the Postal Privatization Conspiracies
2010年に書かれた記事である。
“郵政民営化”の企み暴く著書
郵政改革法案の審議が足踏みする中、小泉・竹中両氏が描いた民営化の魂胆が暴かれつつある。11月下旬、『日本の独立―主権者国民と「米・官・業・政・電」利権複合体の死闘―』(植草一秀著/飛鳥新社)が出版された。この中で、郵政民営化をめぐる分析がなされている。
本の主題は、「対米従属派」が牛耳ってきたわが国の戦後政治を主権者国民勢力が刷新しなければならないと訴えるものだが、第二部「小泉竹中政治の大罪」で「郵政米営化・郵政私物化」「『かんぽの宿』不正払い下げ未遂事件」を約40ページにわたって考察している。
同書によれば、竹中氏が進めた四分社化を伴う民営化構想のポイントは、資産の分割と人員の配置にあった。資産分割では郵便事業に必要な不動産だけが郵便事業会社に配分され、残りがすべて、郵便局会社と親会社の日本郵政に配分された。人員は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命への配分が最小化された。
この設計の狙いを、次のように推論する。
ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式は100%売却される。買い手にとっては、張り付く人員が少ないほど取り扱いが容易だ。外資が株式を取得すれば、国民資金300兆円の支配権は外国資本に奪われる。
郵便事業はユニバーサルサービスを維持するために、黒字化が難しい。郵便事業は国営に戻すことが想定されていたのではないか。金融二社の全株式を売却して郵便事業を国に返すと、残るのは郵便局会社。ここに郵便事業に必要な不動産以外の全不動産が残る。
政府が株式の3分の2を売却する時点では、大量の人員を抱えており、株価は低いまま。この安い株式を2分の1以上買い集めて日本郵政を支配した後、人員整理をして郵便事業を国に返す。
すると、人員の少ない巨大不動産保有会社になる。外資が株式を買い集めていれば、巨大な不動産会社を手中に収めることができる。株価も人員整理で大幅に上昇する。
すべては、外国資本への利益供与のために動いていたと推察される。実に明快な説明だ。
「かんぽの宿」売却をめぐる分析では“出来レース”だったことが如実に浮かび上がる。「かんぽの宿」79施設の簿価は、2006年3月期以降に急激に引き下げられた。郵政民営化関連法が成立(05年10月)した直後である。
▽03年4月=1726億円▽04年3月=1620億円▽05年3月=1535億円▽06年3月=672億円▽07年3月=326億円▽公社閉鎖時=129億円▽08年3月=125億円▽同9月=123億円
安値売却を主張する人々は、「かんぽの宿」が年間40~50億円の赤字だったことを挙げる。なおかつ、雇用維持条件が付けられていたから、109億円は適正価格だと主張する。
ところが、08年3月期の事業収支赤字は5億円に過ぎず、10年3月期には10億円の黒字計上が見込まれていた。40~50億円の赤字計数は人為的に創作されたものだと著者。
そもそも「かんぽの宿」は加入者福祉施設で営利事業ではない。福祉目的で赤字になるように料金が設定されていたのであり、収益事業への転換は極めて容易だったと見ることができる。
オリックス不動産に課された雇用維持条件は、「3200人の従業員の中の620人の正社員の中の550人について、一年に限って雇用条件を維持する」というものだった。施設を買い取ってすぐに事業を始めるには人手が必要である。550人の雇用義務は、雇用を守るためではなく、オリックス不動産の事業運営のために設定された可能性が高いと指摘する。
入札では第二次提案にオリックス不動産とHMI社が最終的に残った。ところが、締め切り後に、目玉の世田谷のレク施設売却を日本郵政が突然中止する。その結果、HMI社が辞退し、応札企業はオリックス不動産だけになった。HMI社を辞退させるために同施設を除外したと推論する。
11月21日、国土交通省が「かんぽの宿」売却前に不動産鑑定評価が不適当に安くなったことを調査する方針を示した。これは同書の発表で非難が広がるのを避けるためではあるまいか。
民営化の闇に光が当たり始めたのは、識者の勇気ある告発によるのかも知れない。
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