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Straight Forward

政治評論家の中村慶一郎氏が、郵政民営化の修正法案について、根本的な問題を含めて、その妥協の実態について優れた評論記事を書いている。

「通信文化新報 2012年4月2日号

[直球政論]政治評論家●中村慶一郎
増税より復興対策、社会保障の抜本的改革を
繰り返すな“小泉郵政民営化”と同じ愚挙

 郵政事業の運営を見直す問題は3月22日夜、最終的に自民党も含めた与野党間の基本合意に達した。さらに詰めの党内手続きがとられ、全てがまとまれば賛成各党の議員提案によって今の国会で現行の郵政民営化法を修正する形で成立の運びとなる見通しだ。
 3月の半ばを過ぎて、与野党間の水面下の折衝は連日連夜のように続けられていた。中心になったのは井上義久、斉藤鉄夫(公明)、森山裕(自民)、下地幹郎(国民新)各議員らである。武正公一、樽床伸二(民主)、園田博之(たちあがれ日本)各氏らも協議に密接に預かっていた。
 折衝の焦点は、第一にユニバーサルサービス確保の問題であった。これは「日本郵便株式会社に、郵便局をあまねく全国に設置する義務を課す」「政府は、郵便事業に係る基本的な役務の確保が図られるよう、必要な措置を講じるものとする」などの表現により明記された。
 次に最大の対立点となったのは、子会社である金融2社(貯金と簡保)の株の扱いについてであった。今回の折衝で主導的役割を果たした公明党の案は「最大限売却する」というものであったが、自民党内には「全株の早期売却」を主張する向きがあり、簡単にはまとまらなかった。最終的には「その全てを処分することを目指し、できる限り早期に、処分するものとする」との表現で合意した。時期を明示せず、また市場での売却とせず、処分としたことなどにより株の扱いに広い許容範囲を持たせたのであろう。これらは自民党内の事情を勘案しつつ、妥協を探った同党の森山氏の立場も考えた苦心の所産であったのだろう。
 3月23日昼、国民新党の下地幹事長から逐一報告を受けた亀井静香代表は、安堵の表情は示したものの喜びの感情などは少しも示さなかった。
「私は一昨年4月、郵政改革法案を提出した時の担当大臣だ。その私が、自分で出した法案を取り下げて、いわば名も捨て名誉も捨てて議員提案による修正案提出に応ずることにしたのだ。だから、今回の合意を100点だなどとは思わぬし、万々歳とも思わない。しかし、公明党の提案に乗って、たちあがれ日本の協調も得て、また自民党とも合意して進む他に道はなかったのだ」
 亀井代表は、このように言って下地幹事長の労を謝すと共に、出席の議員たちに了承を求めていた。
 それにしても2005年9月、小泉純一郎ブームに熱狂的に浮かれる雰囲気の中で現在の郵政民営化法が成立してから6年半、亀井代表にとって、国民新党の同志議員にとって、そして郵政の労使関係者にとっても何と苦難の日々が続いたことだろうか。今では多くの国民が、小泉政権の民営化法は間違いであったと認めていても、これを直す道筋をつけるのに実に6年半を要したのである。それが民主主義であると言えばそれまでだが、6年半の回り道は不毛以外の何物でもなかった。
 郵政見直し問題の水面下折衝が続けられている頃、同時並行のように民主党内では消費税引き上げ法案をめぐる党内協議が連日、延々と続けられていた。その模様をテレビで見ていて私は「ああ、これは6年半前の郵政民営化の時と同じ不毛の論議である」と思った。郵政民営化がそうだったが、消費税も何もそう急いで事を進める必要はないからである。
 小泉時代も、郵政の前にやるべき政治課題として景気回復や格差是正などがあった。野田佳彦政権の場合も、国民が求めているのは同じである。まず第一に、デフレ、円高からの脱却と雇用環境の改善だ。国内経済の活性化を通じて世界全体に貢献していくことも求められている。
 東日本大震災の被災地、被災者に対する復興支援が、これと変わらぬ国民的課題である。さらに5月の首相訪米を控え、沖縄の基地問題解決に真剣に取り組むことも重要であろう。消費税の前に、社会保障全体の抜本的見直しが求められるのは言うまでもない。消費税増税は、これらの課題処理の後、国民に理解を求めていけばよい。
 ところが3月の下旬、民主党の有力議員(小沢系)と懇談した時に、その議員が「消費税増税には、野田首相の面子がかかっているんですよ。もう降りることはできないでしょう」と言うのを聞いてビックリした。その時に私は、確かに野田首相に面子はあるだろうが、国民にも面子(主張)はある。その国民の立場を見誤ってはならない。郵政民営化の時と同じように、結果として愚挙につながることを繰り返してはならないと心底から思った。」

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