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The Revolt of the Bureaucracies 2

中野剛志著「官僚の反逆」の第一章は、虚妄の行政改革と題している。

まず、官僚とは何かを、マックス・ウェーバーの論文を議論の出発点として定める。行政組織ばかりではなく、私企業の官僚制的な組織を含めて、官僚制現象について考察する。最も純粋な官僚は,自動化されたマシーンのようなものであるとする、官僚制現象の特徴を,計算可能性として抽出している。ウエーバーが、近代資本主義が求める美徳は、「非人間化、冷酷で紋切り型の,融通が利かない,血が通っていない,ことが特質である。大衆民主政治においては、民主政治とは言う者の,大衆は実際には政治に参加しているとは言えず、自治が実現しているわけでないとする。古賀茂明については、倒錯であると直裁に批判して、「古賀と言う元官僚は、ウエーバーに言わせれば,改革派どころか,官僚制の徹底を目論む純粋な貫楼主義者だと言うことなのだ」と指摘する。

大衆は何故官僚を批判するのかという問いには、名望家支配を完了すると今度はさらなる平準化を目指して、官僚制を次なる攻撃目標とするとしている。

東京大学の高橋伸夫教授の「虚妄の成果主義」が、経営学の観点から制かスギを徹底的に論破していることを紹介した上で,古賀はそうした企業の実態をも知らないと揶揄している。日本の企業の人事は、年功序列制ではなく、年功制であり、激しい競争が展開されていることを指摘している。「日本的経営の問題を解消すべく導入された成果主義は,却って日本企業のパーフォーマンスを低下させ,無残な失敗に終わった。行政への成果主義の導入もまた、公務員の業績を低下させることになるであろうことが容易に類推できるとする。人間の能力を客観的な指標によって的確に測定できるとしたことが誤った信念である。営利目的ではない公務員の業績は,一層測定することが不可能に近い。成果主義が採用されれば、公務員は複雑な仕事をしなくなる、むつかしい仕事からは逃げるようになること必定である。

人事の一元管理も問題がある。政治家の介入による情実人事が横行することになる。適材適所の逆が横行する。政治主導の意味のはき違えがお今会われている。従順な官僚の危険性について、官僚達が,どんな政権がせいりつしても、その意向に忠実に従うようにする改革は、政治主導ではなく、官僚制化の徹底である。内閣の人事の一元化が行われれば、日本の行政機関は遙かに官僚制化するだろうと指摘しているう。

古賀の提案する,回転ドアの方式の官民の人事交代に対しては、ワシントンとウォール街とが政治と金融との癒着をアメリカで引き起こした原因であるとする、サイモン・ジョンソン、MIT教授の厳しい糾弾を紹介している。

改革が癒着を招いた例として、小泉政権下で、推し進められ、宮内義彦オリックス社長が委員長を務めた,規制緩和委員会の例を紹介している。

政治も官僚制化していると指摘して、マニフェストそのものが、定量的ではない,質的な理想を排除するとしている。

人間から成り立つ社会を、予め定めた計算可能な規則、定量的な目標、工程表、検証体制などで管理できるはずがないのである。マニフェストを実行するだけの政治家は、本当の政治家ではなく、官僚に過ぎないのだ、とウェーバーを引用する。(つづく)

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