New World Order
これまた2年前に書き留めた備忘録である。当たり外れがある。ご参考まで。
米国で、バラク・オバマ上院議員(民主党)が、大統領に就任してほぼ一年が経った。新政権の登場まで、一年半の準備期間があったが、共和党のレーガン大統領の時代からの市場原理主義の跋扈による、世界金融危機の引き金をも引き起こしかねない緊迫した状態の中での政権交代であったから、オバマ新政権の閣僚には、ゲイツ国防長官のように、ブッシュ前政権からの継続した人事もみられたところである。極めつきは、大統領選を競ったヒラリー・クリントン上院議員を国務長官に起用したことに象徴されるように、米国の歴史上初の黒人大統領として、妥協色の強い人事で発足している。
しかし、一年を経過した今、政権交代期の混乱が沈静化して、オバマ新政権の方向が具体化する年であるから、その動向を的確に把握することが重要である。特に、日本の場合は、共和党の政権に追従した時代が長く続いたために、オバマ大統領の所属する民主党政権に対する人脈などのパイプが不足していることが指摘されてきている。米国の失業率は、10%を超える高水準にあり、国内の不満が外国企業等に向けられる懸念もなしとはしないので、いわゆるトヨタバッシングの動向に注目することは、米国市場に橋頭堡を持つ日本企業にとって、重要である。対米市場戦略を一新させ、あるいは再定義することに全力を傾注することが求められる年である。米国の変化に対応して、日本企業のグローバル企業の展開は、また変化せざるを得ないが、オバマ新政権の出方によっては、日本においても登場した新政権と同調する可能性も残されている。日本国内では、従来の共和党政権の関係者の意見が強調されて、悲観論が伝わる傾向があるが、現実に権力を奪取しているのはオバマ新政権であるから、米国内政に対して不偏不党の中立を保ちつつ、積極的に対応することが肝要である。
米国における、ものづくり企業は、市場原理主義の政策のもとでは、徹底的に冷遇され、中国などへの海外移転がはかられたが、そうした動きは停止する方向である。財政経済政策としては、ケインズの拡大均衡論の政策に戻ることが必至であり、米国市場においても、原子力発電や高速鉄道などのインフラ建設のプロジェクトが推進される可能性が大であり、これに対応した人脈作りなど、米国国内における営業推進体制の構築が必要である。さらには、米国の政策変更の影響が大きい中南米での活動や、米国と準経済同盟の関係に至った中国などに与える影響について検討して具体的な対策を講じて、従来の市場原理主義型の経営方針を改めることが必要である。
米国における政変とも言い得る政権交代があり、日本国内でもこれに影響を受けた政権交代があり、歴史のパラダイムの転換の時期にある。ものづくり企業にとっては、実体経済を優先することであるから基本的には歓迎すべき転換であるから、基本と正道に立ち返って、内外で積極的な市場開拓を行う提案活動を行うことが必要である。
世界の金融危機の引き金をも引いたウォール街に対する、アメリカの新政権の対応は強烈なものである。1月14日に行われたオバマ大統領の演説では、「我々は、国民の皆様方の大金を取り戻す、わずか10セントでもだ。」と強い語調の挑発的な言葉で、金融危機責任税を課すことを発表した。新政権は、発足時と機をいつにした世界的な金融大混乱の中で、金融機関に税金を投入して救済に踏み切ったことに対する批判の高まりに呼応したものである。米国下院では、救済法案を一時は否決したが、金融危機の高まりとともに、保険業界などの救済に踏み切ったが、金融会社の役員給与が天文学的な額が支払われ続けるなど、米国内には、ウォール街に対する反感が残り、オバマ新政権は、そうした勢力を温存しているのではないかとの疑惑も高まっていた。
1月21日には、商業銀行によるヘッジファンド投資の禁止や、金融機関の肥大化を制限する金融機関を規制する新しい規制法案を発表している。1月28日、米国上院は、連邦準備理事会のバーナンキ議長の再任を巡る承認投票をおこなった。ブッシュ政権の最後のポールソン財務長官こそ、オバマ政権を去ったものの、サマーズ氏や、連邦準備理事会のバーナンキ議長など、ブッシュ政権下での実力者が居残ったままでの経済政策の運営であったから、「反ウォール街の姿勢」を見せることが必要であったが、反対票は史上最大の三十票となり、賛成が70票にとどまり、審議打ち切り動議も、77票で可決される、つまり、議論の継続を求めた意見が23票もあったことである。オバマ大統領は新規制法案を発表する中で、「彼らの金融界が戦う気なら、こちらも戦う用意がある」と過激な発言を行っていることからもわかるように、日本国内ではほとんど報道されていないが、激しい政治闘争が継続している。
1月19日に行われたマサチューセッツ州の補欠選挙では、共和党候補に大統領の与党民主党からの候補が、しかも民主党勢力の強いところで、敗北するという番狂わせがあり、余計に「反ウォール街」の姿勢を明らかにせざるを得ない状況に追い込まれたものとみられている。上院の議決数に現れた批判票は、それなりに、オバマ政権の努力を評価されたとの数字であるとの見方ができる。日本では、米国の格差社会となった過酷な現実をあまり知らされていないから、黒人大統領が就任するに至った激しい国内政治・経済の状況について、認識を改め理解を深めることが必要である。
余談になるが、マイケル・ムーアが監督した映画「キャピタリズム」が、日本全国で上映されている。米国における自動車産業を中心としたものづくり産業が、銀行や保険など金融資本が政治を手中に収める中で、衰退していく様を活写する内容の映画となっている。80年代に登場したレーガン政権においては、メリルリンチ証券の会長から就任した財務長官が、大統領にも指図をする、金融資本に支配されるようになった米国の実態が、早わかりできる映画となっている。
ものづくり企業においては、社員教育・研修の一環として、映画「キャピタリズム」の鑑賞をすすめるのも一策である。米国事情に疎いものづくり企業の経営陣や中間管理職はもとより、多くの社員が米国の政治・経済の実態を早わかりする映画として、一覧を勧めておきたい。労働組合の推薦と言うよりは、経営者側からの推薦であればこそ、ものづくり企業においては、なお効果が高い可能性があるのは、市場原理主義万能の時代においては、日本の労働組合は、非正規労働の問題など、世界的にも金融立国論と安易に妥協した嫌いがあるが、その点、ヨーロッパでは依然として、同一賃金、同一労働が原則である。だからといって、国際競争力がそれほど低下した話も聞かない。
映画の中には、株式会社ならぬ生産組合方式のエンジニアリング会社の成功例も紹介されており、また、知的財産権にこだわらない、小児麻痺ワクチンの開発者の事例も取り上げられている。
1月27日、オバマ大統領は、大統領就任後初の一般教書演説を行った。http://www.whitehouse.gov/photos-and-video/video/2010-state-union-address
一般教書演説は、日本の総理大臣が行う、所信表明の演説よりも詳しく、予算の裏付けを示す演説であるが、米国の政策がどのように具体化するかを知ることのできる議会演説である。一般教書演説の中で、高速鉄道網の整備に約80億ドルの予算を配分する計画に触れて、その内容は、翌日の28日にホワイトハウスから発表されている。31州で高速鉄道を建設して、鉄道の敷設はもとより、駅、トンネルなどの施設建設によって、雇用拡大、景気浮揚策を打ち出している。大統領はオバマ副大統領とともに、フロリダ州のタンパを訪れて、同州内にあるディズニーワールドに鉄道でいけるようにすることを発表している。同時に、ニューヨーク州の北部にも鉄道を建設することに言及している。日本は新幹線技術を保有しており、米国の鉄道再生のためにもっとも貢献できる可能性がある。大統領と副大統領とがそろって、雇用と景気のための投資案件としてめだまとしたことからも、意気込みが伝わってくるから余計に、日本側のものづくり企業の積極的な対応が求められている。自動車産業に対する関与は、日本企業が、米国自動車産業を没落させた悪者に仕立て上げられる可能性があるので、注意深く対処することが必要である。その点、高速鉄道敷設については、米国の威信を害さない限りにおいては、むしろ日本の高度な技術を紹介することが得策である。日本のものづくり企業は、高速鉄道の再先進国として、米国国民に対する広報宣伝活動を開始するタイミングであり、ハイブリッドあるいは各種の電気自動車と異なり、日本国内で確立した技術を輸出することであるから、リスクがもともと低いことも有利性の一つである。
一般教書演説の翌日に掲載された、米国マスコミの社説などの論評は二分されるものであった。雇用と財政再建を打ち出す演説であったが、マスコミの反応が二分されたことは、前述したように、米国内において激しい内部対立が続いている証拠である。もちろん、ウォールストリート氏などは、激しい批判をしている一方で、ニューヨークタイムズ紙などは、伝統的な民主党の政策よりを鮮明にしてオバマ政権を支持する社説であった。
更に、2月1日、オバマ政権としては初めて「国防戦略見直し」を発表している。四年ごとの見直しであるから、今回の焦点は、アフガニスタンとイラクにおける二つの戦争についての戦略をどう見直しているかが世界の関心事であった。国防長官は、「アメリカは二つの戦争を戦う準備をしてきた。我々は安全保障の課題により広く備えなければならない」と演説して、これまでの戦争に全力を注ぐ戦略を見直して、幅広い分野に対する国防計画を進めることを明らかにした。報告は、120ページに及ぶものであるが、アジアの地域情勢に対する分析の内、中国の今後の方向について記述しているのが特徴であり、中国の軍事力増強については、透明性が欠けると指摘して、警戒感をあらわにしていることが特徴である。
昨年にまとめられた一次草案では、中国の衛星破壊や、航空母艦建造、あるいは米国艦船に対する挑発などに対する対応の必要性が記述されていたが、そうした具体策についての言及は一部削除され、替わって、アジア・太平洋のみならず、地球的な規模で、中国が政治・軍事で存在感を高めているとして、軍事拡張の不透明性が疑念を生じさせているとしている。
日本との間では、普天間基地の移設問題などがあるが、もし、従来の米国の軍事戦略であった、二正面作戦がとられない可能性があるのであれば、米朝国交回復の可能性がいよいよ高まった可能性がある。前回の2006年の見直しでは、テロとの戦いを長期戦と位置づけて、報告書中で頻繁に言及したが、今回は全くの言及が行われていない。米国の国防予算は、史上最大の7080億ドルの予算要求となった。軍事的には、旧兵器の体系を見直すような現代化の方向が強調されており、電磁波兵器などに対する関心が強調されている。
二正面作戦論は、東西冷戦の頂点であったケネディ大統領の時代に採用された戦略であり、軍事力を強調した戦略であるが、今回のオバマ大統領の国防戦略は、軍事力を強調しながらも、軍事力以外の力をも活用する非対称戦にも重きを置くことを明らかにしている。中国が、超限戦と称して、サイバーテロ攻撃や、グーグルに対する情報規制の要求など、非軍事的な戦争論についての懸念にも明確に対処すること明らかにしている。
さて、1月29日には、米国は台湾に対して総額64億ドル相当の武器輸出を行うことを決定したとして、議会に正式通告したと発表した。オバマ政権下における初の台湾向けの武器輸出の決定である。輸出品目は、地対空の、ミサイル迎撃用のパトリオット、ブラックホークヘリコプター、機雷掃海艇である。中国側は、早速反応して、次官級の戦略安保対話の中止、軍人の相互訪問の停止、米企業に対する報復制裁などを発表したが、姿勢は激しく反発しているものの、米中関係が深い傷を負うことにはならないだろうとの見方もある一方で、オバマ大統領とチベット仏教の最高指導者ダライラマ14世との会談などで、深刻になるとする見方も残る。オバマ政権は、米国が達成した未曾有の黒人の大統領であり、基本に人権尊重、宗教、政治の自由があり、どんなことがあっても中国の要求に屈することはできない。
軍事的な力ではなく、非対称戦の駒として、チベット問題を使っている可能性もある。チベットにとっては、中国の国力急進で米国の力が軍事的には相対的に低下していることを懸念しているはずである。アフガニスタンにおける米国の出口戦略が模索されていることが伝えられているが、アフガニスタンやイラクにおける中国の対処いかんによっては、米中摩擦が激化する可能性が高いものと考えられる。
その傍証であるが、オーストラリアは、第二次世界大戦後、最大級の軍事予算の増強に踏み切った。経済的な二国関係でみると、豪中関係は最大の貿易相手国となり、豪州南部の、鉄鉱石の積み出し港である、パースなどは、完全雇用の景況を呈しており、表面的には何の問題もないようであり、パース市内では、中国人用のビルが建設工事を進めている。50万人にも及ぶ観光客が訪れているが、それでも、豪州政府は、初めて、太平洋地域における中国の軍事的な脅威を感じて、軍備増強に踏み切っている。オーストラリアの首相は、西側諸国の総理大臣としては、まれに、中国語が流暢に話せるとして、中国に友好的な人物であると評論されているが、安全保障面では、表面上の貿易の数字の拡大とは、うらはらの動きとなっている。豪州は鉱物資源に恵まれているところから、中国の天然資源政策との間で、必ずしも利害が一致せずにいることが背景にあることは疑いない。中国が台頭する中で、日本の中の経済人は、中国になびいて、安全保障や、その他の、例えば、非対称戦の考え方からは、日中関係を捉えてこなかった嫌いがあるが、そうした意味からは、オーストラリアの政経分離の、更に厳密に言えば、軍経分離のような対中国政策の対応ぶりは興味深いものがある。http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/02/13/AR2010021303651.html?wpisrc=nl_headline
2月6日に、G7の財務省・中央銀行総裁会議が開催されているが、共同声明の採択が行われなかったことで、日本の閣僚が指摘したように、ギリシアの財政悪化問題に焦点が当たったが、日本や米国の対応策としてではなく、ヨーッパの内部の問題としての会合であり、しかも、カナダのイカルイトという極寒の地で開かれたことが話題となった。G7であるから、当然中国は仲間に加えられていないから、疑心暗鬼の状態にあったことも推察されるが、いわゆるダボス会議には、中国は李克強副首相を送り込んでいるから、市場原理主義を中心とするダボス会議と、オバマ政権が参加するG7との色合いの違いがはっきりしたとの考えもあり得る。ダボス会議はどちらかと言えば、オバマ政権に対する批判勢力が、つまり、前の時代のブッシュ政権のネオコン勢力など、国際金融支配を目指した勢力がなお集結する場所となっていることが感じられる。日本でも、ダボス会議には、経済同友会を中心とする経済界の関係者が多数出席してきたが、日本の大企業の出席に当たっては、世界からどのようにみられているかを理解して出席することが必要であるから、特にものづくり企業の場合は、敬して遠ざかる方が得策である。東京にも支部が開設されているので、余計に注意を払うことが必要である。世界における国際金融資本勢力と伝統的な欧米の勢力との紛争はいよいよ激化する傾向がみられ、それに巻き込まないことが得策である。
オバマ政権は、中国の金融政策に対する批判的な言辞を始めたようである。人民元の切り上げを念頭に置きながら、通貨レートは問題だと発言したのが、2月3日である。米国内の失業率はなんと10%を依然として超えており、「米国製品の価格が上がり、他国の製品の価格が引き下げられることの内容にすることだ」と述べているが、その他国とは、中国でしかないが、米国がもっとも懸念することが、米国債の大量売却である。今年五月から、上海万博が開催されるが、それ以降には国民の不満をそらすイベントを持たないところから、国内問題の不安定化の中で、万一の敵対策があれば、実質的なデノミの対策でしかあり得ないことになる。
米国の真の同盟国はどこであるのかという議論にもつながるのであるが、日本は早々に、米国の国債を引き続き必要に応じて買い続けることを声明しているので、売国側の疑心暗鬼は払拭された可能性がある。その見返りとも思われるが、すでに、日米構造協議の問題は話題にもなっていないのは、薄気味悪いほどの日米関係の変化である。米国政府の貿易代表部の次席代表が来日しても、無差別な貿易、機会均等を主張するのみで、従来ブッシュ政権時にみられた、個別の日米の利権が錯綜する分野に対する対日要求は、影を潜めたかのように見える。旧態依然の日本のマスコミは、対日圧力かと書き続けるが、もはや、そうした個別利権の共和党型の二国間の圧力をかけるやり方ができなくなった。
中国とアメリカとは、消費財の分野では、準経済同盟、あるいは、米国の工場に中国がなってしまった感があるが、国家の存在価値としてのぎりぎりの観点では、中米同盟が成立する可能性はほとんどないことが、明らかになったのではないだろうか。中国共産党の指導部の中には、金融資本勢力を取り込んで、米国の基軸通貨体制の切り崩しをはかろうとする考えの勢力もまま見受けられるが、そうした資本主義体制の安定的な発展を破壊する可能性について対処するために、再度G7の重要性が認識された可能性が高い。
ちなみに、今回のG7の会合の呼びかけ人は、米国であり、表面上の理由は、共同声明作りに傾斜せずに、中身のある会議にしようとの呼びかけであったが、極北の地で、しかも、新参者を寄せ付けないような開催場所であるから、中国の通信社あたりが疑心暗鬼をなったことも当然であろう。米欧のなかにあって、唯一の経済大国としての日本の対処が扇の要になる可能性がある。なお、今回のギリシャのデフォルトの問題では、ワシントン主導の国際通貨基金の力を借りないで、欧州独自の枠組みの中で対処するとしたことが多きな特徴である。
さて、前代未聞の通貨政策、デノミが北朝鮮で行われた。核兵器や長距離ミサイルを保有しながら、食料に事欠くという奇妙な状況にあり、その実情について、金正日総書記が、電気も米もなく、人民がまだトウモロコシの飯を食べていることにもっとも胸が痛むと発言したとの報道があったが、デノミの実施は、人民元に対抗する政策であったと考える方が簡単ではないだろうか。外国紙幣を貯め込んだ社会階層から吐き出しを狙ったことも間違いないが、ドル紙幣もさることながら、人民元の吐き出しを狙ったとすることが穏当ではないだろうか。 北朝鮮の対ドルレートは、一ドル=3500ウォンまで急落していたが、それを一ドル98ウォンまで引き上げたが、最近では、一ドル300ないし、500ウォンで取引されているようである。(ちなみに、一ドル98ウォンとして目標の数字は、筆者の妄想に過ぎないかもしれないが、日本の円との連動の気配があるとしたらどのような背後関係があるか想像ができる範囲が広がるように考えられるがどうだろうか。)そうしたことから考えると、北朝鮮のデノミ政策は、米国に対する政治的な信号の最たるものであったと考えざるを得ない。事実、抑留されていた人権活動家の米人の釈放にも踏み切っているが、昨年三月の米国人記者の解放のさいには、わざわざ、クリントン元大統領が、平壌に赴いて釈放を実現させているが、今回はそういうこともなく、交渉が行われていることから、両国間での対話チャンネルが広がっている証左である。オバマ政権の北朝鮮問題の特別代表は、米国ボストン市にある、フレッチャー スクールのボスワース校長が任命されており、日本の交渉担当である、斎木昭隆外務省アジア太平洋局長も、同窓であるのは、単なる奇遇と言うことではない。グローバルな外交の世界でも、人脈の重要性があるのは、古今東西変わりがないようである。
日本の大企業の中には、朝鮮半島で、大東亜戦争以前に活躍してきた企業がみられるが、そろそろ古い社史をひもとき、あるいは、過去の関連を調査しておくことが必要なタイミングかもしれない。日本の場合には、戦前と戦後の間には断絶があるが、旧宗主国である日本に対しては、むしろ朝鮮半島の平和と安定の介添え役としての期待が高まる可能性がある。北朝鮮は、朝鮮戦争において、中国の人民解放軍を受けて入れて、兄弟の戦争を戦ったとするが、その後の関係の中で、北朝鮮が中国の同盟国として裨益したかどうかについても、議論の余地があり、工場の写真などを見ると、その遙か昔の日本の植民地時代の遺産のような風景を見るにつけても、冷戦が崩壊して、その二十年を経て市場原理主義が崩壊して、世界の地図が書き換えられようとする時代の中で、日本の国益を追求する必要がある。非対称戦、超限戦が話題になる時代の変化の中で、日本は戦後、軍事力を正面の国力に据えてこなかっただけに、非対称戦、あるいは超限戦の時代には、その点で、日本独特の文化・伝統の力を敗戦したにもかかわらず維持してきており、東アジアの安定のために、非軍事のソフトパワーの中枢として発揮することが、官民を問わずに期待されている。特に朝鮮半島においては、代理戦争のような第二の朝鮮動乱を抑止する介錯人としての役割が考えられるからである。
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