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Kuroshio 106

種子島と屋久島は九州に属するが、その先のトカラ、奄美、沖縄、宮古、与
那国島を含む八重山までの島の連なりは、黒潮が東支那海から弓形に切り取ったような形で、琉球弧と美しい名前がついた亜熱帯の景勝地である。黒潮は実に瑠璃色に流れて、大陸からの直接の攻勢から防禦している。富山県製作の上下逆さの地図からでも、山東半島の青島の北海艦隊も、寧波を母港とする東海艦隊も、太平洋に進出するためには琉球弧の海峡を抜けなければならない困難があることが容易に分かる。富山県の地図には南支那の三分の一の海岸線は載っていないから、黒潮の源流域に世界最大の環礁がいくつもあり、海中に火山が屹立し海溝が横たわっていることは想像できない。

  黒潮は台湾島と与那国島の間を通過して東支那海に入る。その源流はどこにあるだろうか。パプアニューギニアから流れ出て、ルソン島にぶつかり、フィ
リピンの東部を北に流れる海流が黒潮源流の一つであるが、南支那海からバシー海峡を流れ東に抜ける海流と合流して勢いを増す。台湾島とルソン島との間にあるバシー海峡は、地面に亀裂が入ったような深い海峡である。太平洋戦争中、深く潜行した潜水艦が日本船舶を魚雷の餌食にして海の藻屑にした。バシー海峡は南支那海の海水の干満を太平洋に吐出させる。日本海の干満が、津軽海峡で潮を太平洋に東流させているのと同様である。さらに、バシー海峡の深さはルソン島の北西のマニラ海溝へと繫がる。南支那海も東支那海と同様、大陸側は僅かに二〇〇メートルほどの浅海であるが、フィリピン西側には何と四〇〇〇メートルにも達する深い海溝がある。琉球弧の場合にも、硫黄鳥島や西表島の北に海底火山があったが、フィリピンの場合には、もっと大規模な火山帯となっている。ルソン島南部に壮大なカルデラがあり、その火山帯は四〇〇〇メートルの深海にそそり立つ海山を南支那海で造り、その頂上に珊瑚礁を発達させ、暗礁を無数に造っている。平地のある島がほとんど無いため、漁撈の対象でしかなく、黒潮の民が各地から出漁して、真珠や珊瑚の採集に入り会っていた海域であった。沖縄の島々から出漁することも珍しくなかった。東京帝国大学を卒業し県知事になった西銘(にしめ)順治氏は、南支那海に糸満の魚獲人が(ゆーとぅいちゅ)出漁した経験と、珊瑚礁の島に(まーりしま)は私有地がなく総有であることを回想している。

  南支那海は海底図を見るまでもなく、フィリピン側に深い海盆となってい
る。ボルネオ島の側からインドシナ半島沖にかけては急激な浅瀬となってお
り、フィリピンからセレベスにかけては、バジャウの漂海民が居住する海域で
あるが、ブルネイの首都や東マレーシアと呼ばれるようになったボルネオ島の西側にも、海上に杭を打って家屋を建てて快適に生活する源流黒潮の漂海民が数多く居住している。

  南支那海は世界交通の大動脈であり、何と世界の原油の半分が油槽船で運ばれてここを通過している。特に日本の場合には、万一この交通の要衝が通れなくなり、代わりにロンボク海峡を通ってフィリピン東海域に油槽船を回すと仮定すると、三日間の航程が余計になり、ましてや、豪州の南を迂回するようなことになれば、二週間は余計な時間の航海を強いられる。南支那海の海底鉱物資源、特に石油や天然ガスの資源発掘の可能性が指摘されるようになってから、尖閣諸島の場合と同様に、支那の新しい帝国主義の主張が顕著となっている。また、南支那海のすべての島の領有権を主張するようになって、領海法という無法を設定してからもう一〇年以上が経っている。

東沙諸島は支那・台湾間で争われているが、日本はもともと大陸に帰属する
ことを認めていた。香港から二〇〇キロほど離れているが、現在は台湾が実効支配している。中沙諸島は南北約七四○キロ、東西約四三○キロの海域を占め、マックルズフィールド堆とも呼ばれる。満潮時にも海面上に露出するのはスカボロー礁のみで、島と言うのも憚られる程だが、海域は広大だ。海底に石油や天然ガスの埋蔵が想定されると、俄に支那が軍事力を展開してフィリピンと対峙している。西沙諸島は一九七四年からすべての島が支那の実効支配下にあり、港や港湾施設などを続々と建設し既成事実化を進めている。南沙諸島はフィリピンのパラワン島の西に位置して南支那海で一番島の数が多い諸島であるが、領有権を七ヶ国が主張している。昭和一三年日本が領有権を主張し敗戦まで台湾の高雄市の一部として新南群島と命名したこともある。一番大きな太平島は台湾が実効支配し、一五〇〇メートルの滑走路をもつ飛行場を建設している。ヴェトナムが実効支配している島の数が多い背景には、かつてインド洋からの海洋民族が建てたチャンパ王国と呼ばれる国がカムラン湾あたりにあり、南支那海を自由に往来した歴史がある。支那、ヴェトナム、マレーシア、フィリピンと入り乱れた実効支配の下にあるが、海南島対岸の広東省湛江を基地とする支那南海艦隊は、バシー海峡を出ずに南支那海を陸封の内海にしようと目論む兵力である。    (つづく)

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