Destruction and Devils of Neoliberalism
菊池英博先生が、「そして、日本の富は略奪される」と題する警世の単行本を出版された。経済本では定評のあるダイヤモンド社から刊行された。先生が、ダイヤモンド社の本を紹介するパンフレットのような、本屋さんでは無料でくばっている、Kei という小冊子に、新自由主義という「悪魔」を払い除けよ!、と言う題で、菊池先生がご自分の本を紹介しておられる。小冊子であるから、ネットでも紹介されていないので、コピペするわけにも行かないが、見開きの2ページの記事であるので、全文を写し書きして、当方ブログの皆様に紹介することにしたい。
新自由主義という「悪魔」を払い除けよ!
菊池英博 Kikuchi Hidehiro 1936年生まれ。東京大学卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)へ入行し、本部と内外営業拠点で国際投融資の企画を推進、銀行経営に従事。ニューヨーク支店為替課、ミラノ支店長、豪州東京銀行取締役頭取などを歴任。1995年、文京女子大学(現文京学院大学)経営学部・同大学院教授(国際金融・日本経済)に就任。現在は、日本金融財政研究所所長・経済アナリストとして活躍している。
仕掛けられた「トロイの木馬」
「「構造改革、構造改革」とはしゃいでみたが、出たものは悪魔ばかりなり」
これは99%の日本国民の偽らざる心境であろう。経済政策の正否は,全て結果である。結果が経済学の回答であり、政治の回答である。
日本でもこくみんがきづかないうちに、1980年代前半から新自由主義・市場原理主義が導入され、国民の生活に新自由主義という「悪魔」が忍び寄っていた。2001年から始まった「構造改革」は、アメリカの対日戦略として日本の経済社会構造をアメリカ型につくり替え、日本の国富をアメリカに吸い上げようとする壮大な計画であった。だから、国民が熱狂して迎えた「構造改革」はまさに「トロイの木馬」であったのだ。
具体的に見てみると、サラリーマンの平均年収hがデフレが始まる直前の1997年に467万円であったのに対し、2012年には408万円と也、15年間で59万円も減っている。平均年収の下落の主因は,非正規社員の増加である。1997年の非正規社員は、社員全体の24%であったのに、2012年俟つには38.2%と14%ポイントも増えてしまった。
非正規社員の平均年収は年齢に関係なく200万円未満であり、特に新卒者を中心とする若者の非正規社員が増えている。日本の国家的見地から見ても、有為な人材を企業で育成していく余地が縮小しており、由々しき現状である。
長期デフレが始まった1998年から自殺者が増え、とくに2002年から2011年まで自殺者は毎年三万人を突破している。しかもこのうち、一万人近くが経済関係の悩みによるものであり、2002年から10年間で実に10万人が経済関係の理由で自殺している。
更に驚くべきことには、殺人の半数近くが親族関係者であると報じられており、日本の社会がいかに分断され,破壊されているかがよくわかる。
貧困化する日本を救え!
太平洋戦争の敗戦から23年後の1968年に,日本は対外的に純債権国になり、1981年には「一億総中流」と言われる最も格差の小さい国、資本主義社会としては理想的な国になった。ところが、それから30年余年の今日、OECDの統計(2010年)に寄れば、日本の貧困率は高い方から第4位、主要国の中ではアメリカに次いで第二位という恥ずかしい状況にある。これは所得格差が拡大しているからであり、とくに若年層の所得が低下しているからだ。
貧困率とは,所得別に見た平均所得のうち、平均に比べて半分以下の世帯が全世帯の何パーセントになるかを示した数字である。アメリカの貧困率は17.5%であり、日本は14.9%である。このままでは「悪魔の侵略」で日本の貧困率はさらに上昇するであろう。
ところが,日本は対外的に世界最大の純債権国で阿理、官民合計で296兆円の対外純債権がある。国民一人あたりで見れば233万円に達する(2012年末現在)。このように世界一の金持ち国家であるのに、国民の世帯所得で見るとアメリカに次ぐ貧困国なのだ。
国民の所得の総合計である名目GDPで見ると、過去15年間で日本の凋落ぶりは目を覆うばかりである。日本のデフレが始まる直前の1997年を基準(100)として、その後の成長を見ると,2012年にはアメリカは190,イギリスは184,ユーロ圏は162と、どの国も成長(増加)しているのに、日本だけはマイナス成長である。機銃の1997年の日本の名目GDPは513兆円であるから、もし日本がこの間、アメリカ・イギリス並みに成長していれば、GDPは950兆円前後、ユーロ型の成長であれば830兆円前後になっていたはずだ。そうすれば国税ベースで90兆円~100兆円上がっており、消費税増税なしで,社会保障費は十分に賄えたのだ。
なぜ日本がこんなに低成長に陥ってしまったかと言えば、小泉竹中構造改革による緊縮財政と新自由主義・市場原理主義で意図的にデフレ政策を導入したからだ。それによって、国民の預貯金を国内で使わせないようにし、海外に流出させる政策をとった。2000年から10年間で個人の預貯金は108兆円増えたのに、国内で使われたのはわずか14兆円で,残りの94兆円は海外に流出し、このうち80兆円で政府が米国債を購入している。
私は過去15年間、時に派孤軍奮闘して「デフレ解消を優先すべきである」「新自由主義・市場原理種食いは悪魔の経済学であるから決別すべきである」と主張してきた。2012年3月2日の衆議院予算委員会では,「デフレ脱却のために「5年100兆円の「緊急補正予算」」を提案した。だから、安倍晋三首相と麻生太郎副総理が「15年も継続するデフレ解消を優先させたい」と宣言したとき、「あきらめずに辛抱強く主張して来た甲斐があった」と歓喜に絶えなかった。
しかし、万歳するには早すぎる。安倍首相と自民党政権が,新自由主義という悪魔と決別し,日本型資本主義を確立させないと,日本経済は成長路線に戻れない。私はこの方向をしっかりと注視し、愛国的で善良な同志と協力して、真摯な活動を継続していきたい。
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