構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

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鹿児島空港から下る時に、「鹿児島ラーメン」と言う大きな看板があったので入りラーメンを注文して店内を見渡すと「かいろす通信」第36号と言うのが目について手に取って読んでビックリしました。

このラーメン屋さんが出されている小さい見開き(計4ページ)モノ。
発行者:有限会社鹿児島ラーメン 代表取締役 西 鈴子
鹿児島県霧島市国分上之段362の3
TEL:0995-48-2022 ・・・・ http://www.kagoshimara-men.co.jp/...


「かいろす通信」
前島密と郵便制度

 江戸末期、西欧諸国の科学技術を学ばねば、日本は植民地にされてしまうという恐怖感にも似た気分が、日本の指導者たちの間にはありました。鎖国令が廃止されると、国内には西欧起源の外来語が急に増えました。mountain,river のような自然言語であれば、それぞれ山や川と表記すればそれですみます。欧米にも日本にもあったものであれば問題はありませんが、日本人が始めて接したものであった場合翻訳不能でした。欧米の概念、新技術など、外国語のままでカタカナ表記するしかなかったのです。「デモクラシー」「レボリューション」などです。民主主義や革命などという概念は日本にはなかったので翻訳不能だったのです。
 すると日本人はせっせと和製漢語をつくって外来語にあてはめていきました。江戸時代に平賀源内が「エレキテル」と名ずけたものは「電気」という翻訳語を与えられ、この単語は今でも当たり前のように使われています。
 この頃考え出された和製漢語の例をあげてみます。鉄道・汽船・政治・経済・文化・伝統・憲法・民主・主義・自由・哲学・人権・福祉・共和・人民・国民・平等、などです。考案した人物が分かっている漢語もあります。福沢諭吉は自由・演説・鉄道などを、福地桜痴(フクチオウチ)は主義・社会、坪内逍遥は男性・女性・運命などを、そして前島密が、郵便・切手・葉書などを作っています。
 明治のはじめ、日本に郵便の仕組みを築いた前島密は「日本近代郵便の父」と呼ばれ、現在でも1円切手の肖像として有名です。この人物はまことに魅力的です。活動は郵便だけでなく、江戸遷都、国字の改良、海運、新聞、電信・電話、鉄道、教育、保険など、その功績は多岐にわたります。
 江戸時代の手紙は、飛脚によって配達されていました。その費用も高額で、単純な比較はできませんが、現在の貨幣価値ですと数万円~数十万円の費用が掛かったといいます。確かに、鉄道や、まして飛行機など無い時代に、人が走って届けるのですから、徒歩の旅行と同じです。なるほどそれぐらい掛かるかもしれないという気がします。役人ならばともかく、一般の民間人は遠方の肉親や知人と連絡をとることなど、事実上無理だったでしょう。それが郵便制度のお陰で数十円で封書が日本国中に届くのですから奇跡的と言っていいでしょう。彼は全国に郵便網を築き上げましたが、今日の特定郵便局の多くは、それらを前身としています。その際には、廃藩置県で禄を失った旧士族達が前島の呼びかけに積極的に呼応したと言いますから、当時全国に蔓延していた不平士族の救済にも役立っていました。
 面白いのは当時飛脚業者の団体があり、官が同業に乗り出すことに猛反対をしていることです。考えてみればこれは当然のことです。官による民業圧迫ですから反対するのも当然です。これは明治四年のことなのですが、郵便創業と陸運会社の創設という改革です。この時前島密が飛脚業者を説得した論法が「公用インフラ」という考えでした。単なる一業種ではなく、国民の大いなる利便性に関わる事業なので国全体のために協力してほしいと説得します。そのために政府の手紙と民間の手紙を区別せず利用料金も同一にすると決めます。飛脚団体の方も「前島の考えには、公用インフラの民間開放」という視点があるという意味のことを言い、「日本国のため」と納得しています。
 前島が最も重視したのは「助郷制の廃止であった」と言います。全国を流浪し街道をつぶさに見てきた前島にとって、その前提である助郷制をなくすことこそが最優先事項であったらしいのです。
 助郷制というのは、唐王朝から取り入れたもので、都と地方の交通を円滑にするために設けた宿駅制度でした。もっぱら徴税や命令伝達など官用交通のためで、地方同士の交流などは念頭にありませんでした。この制度を牛耳っていた人々を前島は説得したのです。
 前島密の郵便事業ひとつを見ても壮大です。律令制の時代から続いた助郷制を廃止したと、簡単に言いますが、千年近くも続いたものを次々に改革していくエネルギーには驚くべきものがあります。
 初期の段階で郵便制度について唯一分かっていたことは、切手を書上の表に貼付けて郵送する仕組みであるということだけでした。これも渋沢栄一がフランスから一枚の切手を持って帰ってきていたことからわかったのだそうです。切手で料金を前納することはわかっていましたが、消印をすることに考えが及ばなかった彼らは、再使用を防ぐ方法として、濡らすと破れる薄い紙を用いて再使用できないようにしたらどうかなどと真剣に議論していたそうです。そんなレベルから、一つひとつ壮大な郵便システムを構築していったのですから、そのエネルギーには舌を巻くばかりです。
 前島密がこの事業に取り組むことを決めた時、情報もなく、財源もありませんでした。西欧諸国並みの郵便システムの構築という途方も無い事業を短期間で成し遂げようとしましたが、普通に考えれば、「それは無理だろう」とあきらめるしかなかったと思います。その不屈の精神については、「前島は新しい歴史観を持っていた」としか言いようがありません。
 その後前島は、海外郵便や郵便為替、簡易保険についても研究を進め、実現に向けて政策を推進しています。

 「縁の下の力持ちになることを厭(イト)うな。人のためによかれと願う心を常に持て。」

 と前島密は言い続けていたそうです。現代の日本人は「明治」の偉大な人と事業について不勉強にすぎます。驚くほどエネルギッシュな人々について、私たちはもっと学ぶべきだと思っています。              以上    

ラーメンもあっさりで美味しかったし、改革へのエネルギーの記事がすごく良かった。
店には「ちゃんとやる」の掲示がある。スゴいラーメン屋さん、ゴチソウサマでした。
 
以上、日高雄一氏のフェイスブックの記述から。

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