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Kuroshio 118

急げ独自の深海探査技術開発

メタンハイドレートを真剣に調査するばかりでなく、採掘を目指して技術開発や調査を行っている国は、今のところ日本だけである。北極海にもメタンハイドレートが存在することは確認されているが、カナダもロシアもメタンハイドレートに対する関心をほとんど見せていない。資源大国であり、他のエネルギー資源が潤沢にあるからという理由だろうが、もちろん諸外国は鵜の目鷹の目で日本の動きを注視・観察している。ドイツは、キールに海洋調査のセンターを設けて、メタンハイドレートの埋蔵量予測などを行うばかりではなく、朝鮮半島沿岸で二酸化炭素を海底に戻す、即ち、二酸化炭素ハイドレートを海底の地層に閉じ込めて、メタンから生じる地球温暖化の副作用を抑制しようとする、シュガー(砂糖)と名付けられた実験を今年中にも実行する予定にしている。韓国を巻き込んで日本近海のメタンハイドレート開発に関与しようとの魂胆が窺える。

 日本は、海底地層の調査技術については、ノルウェイ王国の技術に頼っていることをここで特筆しておきたい。例えば、コングスベルグ社などと契約して調査を行っているが、調査技術は、全くブラックボックスの中にあり、日本は調査船の建造技術は自前になったにしても、日本の海底探査の技術はノルウェイの会社の技術に及ばず、ノルウェイは、契約以外のデータは、当然のことではあるが、決して日本側に提供しようとしない。メタンハイドレート探査の基礎技術を日本は保有しておらず、ノルウェイ頼みである。ヨーロッパのエネルギー消費は、ここ数十年を展望して、ロシアの天然ガス生産に依存することになる実態にあるが、ノルウェイは、北海油田などからの採掘を行っているガスと石油の生産国の立場を維持する観点から、日本のメタンハイドレートの探査にも参加して、海底資源の保全を最も効率的にかつ慎重に進めているものと考えられる。ノルウェイは、二〇〇七年に、日本との長期的な協力関係をつくるとして、地震探査船と技術一式を、日本の7万平方キロに及ぶ大陸棚を調査するために2億一千三百万ドルの価格で提供すると発表している。ノルウェイでは、実に八千年前には大地滑りが発生して、北ヨーロッパ全体に波及するような大津波が発生したことがあるから、メタンハイドレートが採掘された場合に、大陸棚と深海との境界線にあるメタンハイドレートが接着剤の役割をしなくなって大陸棚の大地滑りを引き起こす可能性についても慎重に検討を進めている。日本とノルウェイの協力で日本に提供された、ノルウェイ船籍であったラムフォーム・ビクトリー号が東支那海で調査を行ったときには、支那の海洋警察からスパイ行為として、海洋調査の中止を求め、追尾するなどの威圧行為があったことは、記憶に新しい。この資源探査を基に、当時の経済産業大臣の故中川昭一大臣は、関係者の前で、ジュースを入れた一つのコップに二つのストローを差し込み、東支那海の大陸棚の日本側資源を支那が横取りして採掘していると抗議したことがある。

支那は、三千メートルの深さで、天然ガスの採掘を行う能力を有するが、実は、東支那海よりも南支那海の資源埋蔵量の方が遙かに大きい。南支那海は、一番深いところで4500メートル程度であるので、その深度を目標にして海底掘削技術を開発してきている。二〇一二年6月15日マリアナ海溝で水深6671メートルまで、「蛟竜」という名称の有人潜水艇を潜水させることに成功して、日本の潜水艇である「しんかい6500」が達成した6527メートルの記録を抜いた。翌週の24日には、7015メートルまで潜水することに成功しているが、これは、日本の技術を抜いたと誇示するための国威発揚の為の潜水であった。もちろん、実態はロシアの技術協力を受けて開発され、外見もロシアの深海潜水艇ミールと同じように上面だけを赤く、それ以外を白色に塗装している。国産技術が六割になっていると主張しているが、それは、ロシアの技術を国内で製造するために用いたことも含めての数字である。支那の潜水艇の耐圧殻は、側板六枚、反対側六枚、天板、床板一枚ずつの計14枚の板が手で溶接されており、その技術が、ロシア殻の供与なのか、支那の独自技術なのかは判然としない。潜水の記録を超された日本の対応としては、例えば一万一千メートルの深海に潜水できる潜水艇の開発を目指して「しんかい12000」を立ち上げるにしても、これまでの潜水艇のように海底に達するのに10時間近くの時間がかかるのではなく、早く潜れる、例えば電池の推進力で勢いよく深海に突っ込む潜水艇など、新しい概念に基づく開発が必要であり、従来の気球型の潜水艇の開発はそれほどの意味がないとの見方がある。無人の海中ロボットを支那はカナダから調達しているが、カナダは、国際世論に配慮してわざわざ旧式のロボットを売却している。海底情報については、無人ロボットの発達により、海底に三十メートルの煙突状の熱水噴出孔(チムニー)があったり、そこに紅(べに)ガニが集まっていること等、新たな知見が続々ともたらされている。(つづく)

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