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Kuroshio 120

占領軍は直ちに、地質調査に関する資料を押収している。昭和一二年七月の盧溝橋事件を契機とする日華事変以降。支那大陸で泥沼に陥って日本は隘路・限界に至った。四年半の戦闘で一〇〇万を超える人的被害を出す大戦争となった。国家予算の過半を戦費が占めるようになり、蒋介石政権の補給路を遮断すべく南進して、英蘭などと戦火を交えることになった。昭和一五年九月の「仏印進駐を実行しても米国は石油禁輸を実施しない」という安易な判断は、米国との開戦に自らを追い込んだ。伝統的にソ連を仮想敵国とする陸軍は、南進の後に、シンガポール攻略司令官の山下奉文(ともゆき)中将を満洲の方面司令官に転任させている。大平原の地下や渤海海底に油田がある可能性が徹底的に追求され、探査が成功し掘削されておれば、大戦が回避された可能性があるが、日本は探査技術に劣り、満洲で最新の技術はついぞ使用されることなく、メキシコのタンピコ油田からおとりの石油が売却されて徳山製油所が満タンになり、これで戦えると連合艦隊司令長官が豪語して真珠湾に出撃させる巧妙な罠にはまった。緒戦はいざ知らず、結末は歴史に「もし」がないことを裏書きする惨々たるものであった。南満洲鉄道撫順オイルシェール工場で、石炭生産の副産物として人造石油に力が注がれたが、「投入エネルギーより抽出エネルギーの方が少なかった」のが、米国戦略爆撃調査団石油報告が指摘する実態だった。一九六〇年代に至り、旧ソ連の技術で黒竜江省に大慶油田、山東省に勝利油田(その後、探査技術の進展で渤海の海底油田の開発につながる)が発見され、遼河油田などが発見・開発された。東支那海では、日本との中間線の近傍で天然ガスを掘削して生産しており、最近では南支那海で海底油田の掘削プラットホームを建設して国際紛争の焦点となった。日本は探査に劣り、掘削技術をもっていてもためらい、合理的な資金・技術の投下を夜郎自大に怠る傾向がままあることが教訓である。高オクタン価ガソリン、つまり航空機の高性能運用に必須の燃料が製造できなかったこともよく知られており、制裁を加えようとする米国と特許や製造方法の供与について交渉を進めていたことなどは、無謀な茶番劇としか思えない。満州にウラン資源があることも判っていた。満州国の中枢にいた高碕達之助は、婦女子の安全確保と引き換えに、日ソ不可侵条約を反故にして雪崩込んだ赤軍に対してウラン鉱山のありかを教えたと回想している。

メタンハイドレートについて、海からの天然資源の確保という観点から、黒潮文明論の一環として、当代一流の海洋開発専門家の友人にインタビューを行ない知識を得ながら論評を加えてきたが、拙論を読んだ同志から電話があり、日本海にこそ資源開発が比較的に容易なメタンハイドレートがあり、日本が無資源の国であるというのは既に嘘であるとの有力な主張があるので、それについて紹介すべきであるとの忠言があった。特に青山繁晴氏の意見に注目すべきだとのことであった。なるほど、二○一二年二月八日関西テレビの番組が青山繁晴氏の意見をよく纏めており、要旨は次のとおりである。
 原子力発電所が停止すると、火力発電の燃料となる石炭、石油、天然ガスの海外からの輸入が増大するので、値段がどんどん上がっていく。日本が資源のない国というのは、真っ赤な嘘である。実は隠された資源大国であると指摘しても、間違っているなら政府や大学から抗議がくるはずだが、勿論来ない。マスコミが取り上げないのは、政府の取り組みが弱いからである。その理由は「日本の敵は日本」で、つまり、日本はいつまでも資源小国でいるべきだと、貶める人々がズラッといる。日本は資源のない国だというのが、日本の常識になっているが、確かに十数年前までは、石油や天然ガスといった従来の埋蔵資源はとても少なかったから資源のない国だったが、今は世界の眼は、燃える氷と呼ばれるメタンハイドレートに注目することで、日本の希望となった。メタンハイドレートのある場所には微生物が沢山あり、紅(ベニ)ズワイガニが寄ってくる。単純にメタンだから環境に悪いという話ではない。地震の多いところに、メタンハイドレートがある。石油や天然ガスのある中東には、むしろない。太平洋側での掘削にはものすごいカネがかかるが、日本海側では鉱床が海底に露出している。戦争に負けた日本が資源大国になったら困るとの見方があり、韓国のメタンハイドレート調査を支援しているのは、米国のエネルギー省と国際石油資本であり、戦後日本の在り様に無難に乗っかって、日本を敗戦直後のままにしておきたい勢力がある。経済産業省や東京大学は既得権益があるから太平洋側以外を調査しないが、水産庁委託で調査をしたら尖閣諸島の上の方にもメタンハイドレートがあった。石油工学の技術で日本海側の掘削はできない。土木工学が重要。清水建設がバイカル湖でメタンハイドレートの回収実験に成功している。
 夜郎自大の再発を避ける為にも傾聴に値する意見である。 (つづく)

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