Unfair Tax
通信文化新報という週刊の専門紙に、春秋一話というコラムがある。今週は公正な税制とは何かと、議論をしている。郵政民営化が失政であったことは、明らかになりつつあるが、単なる税金の安易な取り立てや預金保険機構の赤字の穴埋めの魂胆があったりしたことが背景にあったのだとすると、それは醜い話になる。イコールフッティングなどと横文字を使っても、説得力はゼロである。徹底的に保護されていれば、外国でまともに研鑽を深めて競争して、日本のお国の為になろうなどとの意欲がなくなるに違いない。その昔のことだが、その業界の協会のニューヨーク駐在員が余りに英語が下手だったことが記憶に残る。.
モルガンのアナリストなどと一緒になって、早く株を売り払え、十年など待てない、郵政民営化に反対するのはけしからんと悪罵をついたが、米国政府から罰金を取られたのは、そちらの側で、(今年の初夏に、ニューヨークを訪ねてみたが、)肩で風切る姿の連中は消えてしまった。その手先...がまだ、東京に潜んでいて、またぞろ、郵政の株を売却する話を蒸し返しているようだが、まだ十年も経たない昔の闇の部分をきちんと検証してからにして欲しいものだ。国益を毀損しようとしたのは、誰だったのか。誰が首謀者か、手先は誰か。一体全体いくら損失を喫していたのか。誰が、濡れ手に粟で儲かったのか。
「税は社会の公正さの鏡
今年4月に8%となった消費税を、来年10月からさらに引き上げ10%にするとの議論があるが、ちょっとショッキングな「税金を払わない巨大企業」(富岡幸雄著、文春新書)という本がある。国税の法人税、地方税の法人住民税、法人事業税、この三つのいわゆる法人税等の実効税率について分析したものだ。
法定税率が38・01%(現在は35・64%)だった2013年3月期決算で、日本の有数の大企業は、いったいいくらの税金を納めたのだろうか。実効税率の低い企業は、1位が三井住友ファイナンシャルグループで、税引前利益が1479億8500万円あったが、実際に払った法人税等は300万円。実効税率負担は0・002%という。
以下、ソフトバンク0・006%(実際に納めた法人税等の額500万円)、みずほファイナンシャルグループ0・09%(同2億2600万円)、三菱UFJファイナンシャルグループ0・31%(同5億7700万円)、みずほコーポレート銀行2・60%(同67億1400万円)、みずほ銀行3・41%(同89億8000万円)、ファーストリテイリング6・92%(同52億3300万円)、オリックス12・17%(同210億100万円)、三菱東京UFJ銀行12・46%(1093億4200万円)、キリンホールディングス12・50%(同119億9500万円)だった。
このほか商社や自動車メーカーも続き、日本の有名な大企業が並ぶが、金融機関はオリックスを含めると10位以内に7社が入る。10年以上にわたってメガバンクは不良債権処理で、法人税を減免されてきた。さらにその実行税率の低さには驚かされる。金融機関は経営が危うくなると、社会的影響が大きいと公的資産で生き延びてきた。暗黙の政府保証と言えないこともない。
実効税率が低いのは、様々な会計操作や政策減税、現在では大きな収入源となっている受取配当金の課税益金への不算入制度など、さらにタックス・ヘイブンの国への利益の迂回などが指摘される。
日本郵政グループは民営化以降、約3000億円から約4500億円の法人税等を収めてきた。実効税率は法定税率に近く、固定資産税なども支払っている。ゆうちょ銀行、かんぽ生命の日本郵便への委託手数料にかかる消費税も500億円にのぼる。一方で、郵便局を通じたユニバーサルサービス義務が課されている。
特定の企業に国民の生活に不可欠なユニバーサルサービスを義務づけるのならば、そのコストを国で補てんするか、同様の企業を含めて基金を設ける、あるいは政策減税などの方策がとられてしかるべきだろう。
ゆうちょ銀行、かんぽ生命の新規事業には、未だに暗黙の政府保証などとの言葉で、株式が全て売却されなければ認めるべきでないとの議論があるが、他の金融機関は過疎地などから撤退し、ユニバーサルサービスの義務はない。さらに、ゆうちょ銀行、かんぽ生命には限度額がある。法人税等の実効税率の低さなどからも銀行業界の言うイコールフッティング論は的外れだろう。
法人税は高く国際競争力を削ぐとされるが、実は大企業の実効税率は低く、諸外国と比べても決して高くないとされる。一方で、中小企業は法定税率に近い税金を納めているのが実態だ。金融緩和や円安で大企業は大きな利益を手にし、内部留保は270兆円とされるが、非正規雇用の拡大など働く人の実質賃金は増えず、中小企業も7割が赤字という状況だ。
バブル崩壊以降、短期の利益のみ追求するアメリカ型の経営への傾斜が進み、働く人より株主重視の傾向が強まった。配当性向が増え、労働分配率の低下が進行、非正規雇用の増大で格差が拡大、富の偏向が著しい社会になったことは憂慮される。
「税は社会の公正さの鏡」「消費税は低所得者への過酷な税制で高所得者への減税」「所得課税の欠陥を是正すれば消費税は不要」「税制の公正と正義を確立する」ことが先決という富岡氏の主張に頷く人も多いだろう。
企業の社会的責任は経済活動を通じて雇用を確保、納税の義務を果たし国の安全保障や国民の福祉増進に寄与すること。多国籍化する企業に欧州諸国などが協力して、課税のあり方や投機マネーの規制を議論する方向に動き出していることは注目される。
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