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Postal Privatization and its Conspiracies

日本の国民資産を略奪する動きが顕在化している。郵政民営化の背景には世界最大の金融資産を狙う外国勢力の存在が指摘されていたが、むき出しになったようだ。月刊日本の2月号に掲載された菊池英博先生のインタビュー記事を、同誌編集部のご好意を得て、全文転載する。新自由主義の拝金の謀略を何とか阻止したい。TPPや日本農業の将来とも連動している。日米関係の戦後体制をとても克服することにはならず、主従関係を強めるばかりでは、長期的な日米の平和と安定をも阻害しかねないような急激な動きである。日本の国益を護り略奪を何とか阻止したいものだ。

「日本金融財政研究所所長 菊池英博
約300兆円の「郵政マネー」が外資に略奪される(『月刊日本』2月号)

 約300兆円にのぼる「郵政マネー」が外資に略奪される危機が、再び迫っている。昨年12月、日本郵政が今年9月以降に株式上場すると発表したからだ。しかも、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険も同時に上場する方針だという。
 日本経済の安定に不可欠な郵政マネーを外資に献上するのか、それを死守するのか。国民生活、地域社会の根幹にあった郵政ネットワークを破壊するのか、それを守るのか。この郵政をめぐる熾烈な戦いは、2001年に発足した小泉政権が郵政民営化を掲げて以来、14年にわたって続けられてきた。
 小泉政権下の2005年10月に郵政民営化法が成立し、2007年に日本郵政グループが発足、郵政マネーが外資に略奪される危機はすぐそこまで迫っていた。それを救ったのが、2009年に誕生した民主党・国民新党・社民党の三党連立政権だった。同年12月に郵政株式売却凍結法が成立し、ぎりぎりのところでその危機は回避されたのである。
 ところが、2012年12月に発足した第二次安倍政権は小泉流の新自由主義路線に回帰し、再び郵政マネーが危機にさらされるようになった。昨年末の総選挙で与党が勝利して第三次安倍政権が発足するや、上場の計画が発表されたのである。日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の同時上場の危険性について警鐘を鳴らしている菊池英博氏に聞いた。

外資に略奪される約300兆円の「郵政マネー」
── 昨年12月24日、各紙が日本郵政の株式上場を報じました。
菊池 実は、その2カ月ほど前の10月1日に、財務省は東日本大震災からの復興財源に充てる日本郵政株売り出しの主幹事11社を選定したと発表していました。主幹事に選ばれたのは、日本の大手証券5社(野村証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券)と外資系証券4社(JPモルガン証券、ゴールドマン・サックス証券、シティグループ証券、UBS証券)、地方の中堅証券2社(東海東京証券、岡三証券)の計11社です。
 この中で事実上の支配権を持つ「グローバルコーディネーター」には、野村証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、JPモルガン証券、ゴールドマン・サックス証券の4社が選ばれています。後者2社は外資です。しかも、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は半分外資系なので、外資系のウエイトが半分以上です。日本政府が100%保有している国民財産ともいうべき日本郵政の株式売却に、外資系証券会社が50%を超えるシェアを持つということなのです。私は、この決定を聞いて背筋が寒くなりました。
 これを決めた上で、第三次安倍政権発足直後の12月24日、日本郵政の上場計画は各紙に報じられました。アメリカからの圧力があったと見て間違いありません。まさに、外資に対するクリスマス・プレゼントですよ。
 今年9月以降に株式上場が行われれば、郵政マネーは外資の手に渡る突破口となるのです。マスコミは「1998年のNTTドコモ上場に匹敵する大型上場」などと浮かれていますが、問題の本質は郵政マネーが外資に奪われるかどうかです。
 日本郵政の株式は、日本政府が最後まで3分の1強を保有することが法律で定められていますが、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式は法の縛りから外れているのです。ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式がひとたび外資に握られれば、両社の資金の運用権を奪われることになります。それは日本経済を極めて危険な状態にさらすことになるのです。
 2013年3月末現在で、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の国債保有額は194兆円にのぼり、全体の2割を超えているのです。ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を握った外資によって、株主提案で「国債の運用比率を見直せ」と迫られたら、それに従わざるを得なくなります。両社が大量保有している国債の買い替えを渋るようになれば、日本の国債調達に一挙に穴があき、国債の価格は暴落し、長期金利は必ず急騰する事態に陥ります。つまり、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株を外資に渡すことは、日本国債を常に暴落リスクにさらすことになるのです。
 しかも、現在郵便事業はゆうちょとかんぽの収益で維持されています。ゆうちょとかんぽの株式が外資に握られれば、その収益は配当に回るようになり、郵便事業に回らなくなります。そうなれば、郵便事業に税金を投入しなければ維持できなくなってしまいます。
 国民生活に不可欠な郵便事業は、誰でも利用可能な全国一律料金で、公平かつ安定的に提供される必要があります。このユニバーサル・サービスとしての郵便事業を維持していくために、金融二社の持ち株を政府がどれくらいまで維持する必要があるのかを、今こそきちんと試算しておく必要があります。いまのところ私は、8割は政府が持つ必要があるのではないかと考えています。

外資の手先に成り下がる国会議員
── 第二次安倍政権の発足後、日本郵政に対する自民政権の方針が大きく変わったように見えます。
菊池 昨年末の選挙での大勝の勢いを駆って、安倍政権は、民主党政権下で頓挫した郵政マネーの米国献上を一気に進める気なのでしょう。それを牽引しているのが、外資の利益を優先する外資派議員です。
 第二次安倍政権が発足する直前の2012年12月20日、日本郵政は斎藤次郎社長の後任として、財務省OBの坂篤郎副社長を社長に昇格させました。この人事に対して、当初から菅義偉官房長官は「財務省出身者によるたらい回し人事だ」と批判していました。そして、2013年6月に、菅官房長官は坂社長に退任を迫り、元東芝会長の西室泰三氏を社長に就けたのです。西社長は、日本郵政と提携してきた日本生命を袖にして、突然外資のアフラックとの業務提携強化を打ち出しました。
 菅氏は外資派の筆頭だと見られています。彼は小泉政権時代、竹中平蔵総務大臣の下で副大臣を務め、その後総務大臣を務めた人物です。
 本誌(平成25年9月号)でも、外資系企業出身議員のことを取り上げていますが、そこに名前が挙がった元みんなの党の中西健治参議院議員(現無所属)は郵政民営化に執着しています。彼はJPモルガン証券の出身で、坂篤郎氏が日本郵政社長退任後、顧問に就いていることを国会で問題視しました。これを受けて早々、昨年3月、菅官房長官によって坂氏は事実上解任されました。
 外資の手先は国会議員だけではありません。外資系金融機関は、財務省の官僚を天下りで受け入れており、財務官僚も外資にてなづけられてしまっているのではないでしょうか。
 こうした国会議員や官僚の姿を見ていると、私はかつてのイギリスによるインドの植民地支配を思い出します。イギリスはインドを支配するために、植民地統治に協力する諸侯に利益をもたらし、てなづけ、イギリスに留学させてイギリス流の考え方をたたき込みました。これと同じように、現在では新自由主義的思想を信奉し、アメリカ系企業の利益拡大に協力する日本人が増えています。このままでは、日本はアメリカの植民地のようになってしまいます。
 小泉・竹中路線に回帰した安倍政権がやろうとしているのは、まさに日本破壊のための革命です。1980年代初頭のレーガン政権以来、アメリカは30年以上も新自由主義的政策を続けてきましたが、いまやその失敗は明らかです。安倍首相は、世界的に失敗が明らかになった政策を20年、30年遅れで追求しようとしているのです。こうした安倍政権の新自由主義路線に批判的な勢力も自民党内部に数多く存在しますが、分裂して政権を失うことを警戒して、現在では彼らは沈黙しています。

「郵政マネー」に注目した、竹中平蔵氏の「親友」
── 外資は、小泉政権以来、一貫して郵政マネーの略奪を狙ってきました。
菊池 もともと、アメリカは1994年に始まった対日要望書以来、日本の郵政事業の民営化を要求していました。さらにさかのぼれば、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したジャーナリストの佐々木実氏が指摘しているように、1993年には知日派研究者のケント・カルダー氏が「日本の郵便貯金の活用が世界経済の活性化につながる」と主張していました。彼は竹中平蔵氏と、自ら「親友」と呼ぶ仲だったといいます。日本経済の基盤として使われていた、当時350兆円に上る郵政マネーを自分たちのために使おうという提案が出されていたのです。まさに日本の国家の基盤を崩そうとする見解が、冷戦終結直後のアメリカで出ていたのです。
 こうしたアメリカや米系企業の要望に呼応するかのように、小泉純一郎氏は1995年に自民党総裁選に立候補したときから、郵政民営化を主張していました。そして、2001年4月に首相に就任した小泉氏は、郵政民営化を改革の本丸と位置づけたのです。郵政公社の民営化を具体的に要求した2004年の対日要望書を受ける形で組成された郵政民営化法案は、郵政公社を5社に分断するという方針でした。全体を総括する日本郵政株式会社(持ち株会社)の傘下に、郵便事業会社、郵便局会社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の4社が位置づけられていました。
 そして、日本郵政株式会社の株式の3分の1は政府が保有し続けるが、ほかの会社の株式は、小泉首相の鶴の一声で、2017年までに完全に民間に売り払うという構想でした。
 次頁の図表の通り、2004年12月時点で、政府短期証券を除いた国債発行総額505兆円のうち、33%に当たる166兆円を日本郵政公社が保有していたのです。アメリカの狙いは、日本郵政公社を民営化させて、その民営郵政会社を買収して、資金の運用権を握ることでした。これにより、日本国債の償還(返済)期限に合わせて、日本国債には再投資せずに、アメリカが望む投資先に資金を向けようとしたのです。まさにいま起こっている危機は、このときから始まっていたのです。しかも、日本の地域社会の根幹である郵便局が破壊され、地域社会が崩壊する危機にさらされていました。わが国では、明治以来、郵便事業、貯金業務、簡易保険業務の三事業は一体になって、地域社会にサービスを提供してきたのです。
 当然自民党内部にも郵政民営化法案に対する反対論が高まりました。2005年7月4日の衆議院本会議では郵政民営化法案に自民党から37名が反対に回り、14名が欠席・棄権したものの、僅差で法案は可決されました。しかし、8月7日の参議院本会議では、同法案に自民党から22名が反対、欠席・棄権8名で、否決されたのです。これに対して、小泉首相は「郵政民営化法案の可否を国民に聞きたい」と言って、衆議院を解散しました。
 衆議院で可決された法案が参議院で否決されて、衆議院を解散するというケースは、戦後の憲法下では初めてのことであり、憲法違反です。というのは、日本は司法・行政・立法の三権分立の国であり、「国会は国権の最高機関であって、唯一の立法機関である」(憲法41条)のです。だから国会が決めたことを行政府の長である首相は否定できないのです。
 しかし、9月に選挙が行われ、自民党は大勝、翌10月に郵政民営化法が成立しました。この選挙では、全国紙やテレビは、郵政民営化に隠されたアメリカの思惑を報じることなく、「官から民へ」、「民営化は善で、それに抵抗することは悪だ」という大キャンペーンを展開しました。アメリカによる日本メディアに対する介入があったのです。政治評論家の森田実氏は『崩壊前夜』(日本文芸社)の中で、「小泉首相が衆議院を解散した1週間後に、アメリカの大手の広告会社の首脳が首相官邸で総理大臣の小泉と会っています。官邸のなかで、こうした大掛かりなことが行われて、郵政民営化が成立したのです」と書いています。
 さらに森田氏は、アメリカの保険会社の意向を受けた米共和党系の大広告会社が日本の大手広告代理店・電通に対して、日本国民の頭を「民営化が善で、官営は悪だ」というように切り替える宣伝活動を促したと指摘しています。その活動の規模は兆単位の額だったとも指摘されています。国民はこの大キャンペーンに騙されたのです。

「郵政マネー」の略奪をぎりぎりで阻止した政権交代
── この選挙では、反対派議員に対して刺客が立てられました。
菊池 自民党は、広島6区では、郵政民営化に反対して国民新党を立ち上げた亀井静香氏に対して、堀江貴文氏(ホリエモン)を刺客として送り込みましたが、亀井氏は堂々と当選を果たしました。岐阜1区では、郵政民営化に反対した元郵政大臣の野田聖子氏を公認せず、外資系証券会社を渡り歩いてきた佐藤ゆかり氏を公認して刺客として送り込みました。選挙区では野田氏が勝利しましたが、佐藤氏は比例区で復活当選し、地元の自民党内に多くの後遺症を残すことになりました。静岡7区では、郵政民営化法案に反対した城内実氏に対して、当時財務省主計官だった片山さつき氏が「女刺客」として送り込まれ、城内氏は落選してしまいました。
 2005年の総選挙直前に亀井氏らが結党した国民新党は小泉政権の新自由主義的路線に反対の立場を鮮明にし、その後の政権交代の原動力の一端となりました。2009年8月の選挙で、郵政民営化の抜本的な見直しを掲げた民主党、社会民主党、国民新党の三党が勝利し、9月には三党連立による鳩山由紀夫内閣が誕生し、民営化反対派の亀井氏は郵政・金融担当相に就任しました。そして同年12月、「日本郵政の株式と資産売却凍結法案」が成立し、外資による郵政マネーの略奪を阻止したのです。
 民主党に政権が交代してから、自民党政権下で進められていた驚くべき事実が浮かび上がってきました。日本郵政の上場スケジュールが決まっていないのに、上場の際の証券会社がアメリカの特定の証券会社になると内々に決まっていたということです。これは民主党参議院議員の大塚耕平氏(当時、内閣府副大臣)が明らかにした事実です。当時、私は複数の自民党議員から、その証券会社がゴールドマン・サックスであると聞きました。
 日本郵政会社の株式は2010年から市場で売却されることになっており、アメリカの投資銀行が一挙にその株式を買い取って、かんぽ生命とゆうちょ銀行を買収してしまう危険性があったのです。
 当時の日本郵政の国債保有額のうち、約95兆円の償還期日が2010~2011年であったので、もし政権交代がなければ、100兆円近い日本の国債の償還代金が日本国債に再投資されることなく、アメリカ国債の購入や外資に流れるところだったのです。
 亀井氏は、2009年12月4日に「日本郵政の株式と資産売却凍結法案」が参議院で成立した瞬間、大臣ひな壇で天を仰いだのです。まさに間一髪で、神が日本を救ったといえるでしょう。

政治家よ、いまこそ救国に立ち上がれ
菊池 その後、郵政民営化法案は公明党発案の議員立法で、2012年4月に改訂されました。郵政民営化法は政府が保有しているゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を2017年9月までに全株処分しなければならないと規定していましたが、この改訂によって「できる限り早期に処分する」という努力目標に変わったのです。この公明党主導の議員立法に協力したのが、郵政民営化に反対していた自民党の議員たちです。特に、森山裕議員は改訂検討委員会の座長として、異論の強い自民党内をまとめ、その功績は高く評価されています。
 このとき、この改正案に反対票を投じたのが、菅義偉議員、小泉進次郎議員、中川秀直元幹事長の三人です。菅氏は「今回の法案は、金融2社の完全民営化をあいまいにする内容であり、賛成できない」と語っていました。
── 日本郵政の上場計画が発表されたいま、いかにして外資による略奪を阻止すべきですか。
菊池 株式のできるだけ多くを、オールジャパンで確保するしかありません。共済組合、農協、地方公共団体、地銀、メガバンクなどができるだけ日本郵政の株式を保有するようにし、共存共栄の精神で日本を守るべきです。株の持ち合いでいいのです。
 そして、国内に郵政マネーが回る好循環を再認識すべきです。これまで日本では、郵便局が地方の人からお金を集めて日本国債を買い、政府は国債を運用し、公共事業等で地方の開発に回してきたのです。
 いまわが国は、郵政マネー略奪の危機に直面しています。この危機を認識した政治家が立ち上がり、国民が真実を知り、危機意識を強く持つべきです。これは決して対外的に排他的であるということではなく、アメリカも日本も、それぞれの利益を守り調整してゆくことが求められているのです。 」

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