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Fake Privatization

会員制の月刊雑誌, Facta(ザ・ファクタ)が、大見出しで、日本郵政「上場ゴール爆弾」とつけて、副題を、NTT以来の超大型案件だが,ご祝儀相場の初値のあとは転げ落ちる懸念、何といっても「成長戦略」が見えない。とした、4ページの記事を掲載した。Factaは、最近でもオリンパスの不正事件に調査報道をして、世界的に注目された記事を掲載して、日本の外国特派員協会から報道の自由の顕彰を受けたばかりである。日本を代表する経済誌となっている。その六月号の記事であるが、詳細にご関心の向きは、記事の本文にあたって頂くこととして、ここでは、問題点を抽出するためにそのさわりの部分を紹介することにとどめた。勿論、当方ブログは、郵政の株式を売却することに批判的であり、特に外国勢力に売却することには反対してきたから、我が意を得たりの記事がようやくにして現出したと感じる。大マスコミなどは、知ってか知らずか、なんの報道もしない。世界最大級の国民資産の簒奪の問題であるにもかかわらず、政治家の声もようとして出ていない。

http://facta.co.jp/article/201506026.html

以下、要約。

IBMとアップルのトップに挟まれて、日本郵政の社長が記者会見する写真がまず冒頭に掲載されている。異例中の異例、米国にも幅広い人脈を有する西室泰三・日本郵政社長ならではの「演出」だ、と説明している。

三社提携による「高齢者支援サービス構想」を華々しく打ち上げたが、この会見は、4月30日にニューヨークで開かれたが、その理由は、27日からの四日間、社長は投資家ミーティング(いわゆるロードショー)の為に米国を訪れていたからだ。IBMとアップルを巻き込んだ会見の真の狙いは、日本郵政株の投資妙味を最大限アピールすることにあったわけだ。

株式同時上場を目指す日本郵政とゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の経営陣は、8チームに分けてニューヨーク、ロンドン、香港・シンガポールなどのロードショーに出かけた。社長は、ニューヨーク、ボストン、米国西海岸を回り、四日間で16社の投資家を回った。その総仕上げが共同会見だった。

「古巣の東芝時代に米国駐在が長く、IBM本社の社外取締役も務めた真骨頂とも言える演出だったが、西海岸に本社を置くアップルのクックCEOも含めた3人で日程調整するのは,さぞかし骨がおれただろう。株式上場への焦りも透けて見える。」

NTT上場以来の超大型案件だ。IPO(新規株式公開)総額は軽く一兆円を上回り、株主数は未曾有の100万人にも達すると推測される。裁定でも三回に分けて日本郵政株の三分の二を売却する計画。現在は株価が上昇しているので、タイミングはいいが、鳴り物入りのロードショーでも、投資家の反応は総じて鈍かった。日本郵政グループの評価が低い理由は、「エクィティストーリー(成長戦略)が描けない」という一点に尽きる。

純利益の推移を見れば一目瞭然だとして、17年度の純利益を4500億円を想定しているが、13年度のじっせきにも届かない数字で、グループ全体として利益の上積みが期待できない状況にあることが分かる。ゆうちょ銀行もかんぽ生命保険も、政府関与がある限りは業務拡大、新規事業展開に厳しい手かせ悪しい加瀬が残る。本丸の郵便事業縮小にも歯止めがかからない。加えて,収益力はその図体ほど大きくはない。クロネコヤマトの純資産hあ、日本郵便の五分の一強だが、純利益は日本郵便を上回る。郵貯は、三菱東京UFJの半分しか稼げない、資産効率の悪さはかんぽもまた同様だ。上場の主幹事証券団も慎重だ。試算によれば、IPO時の時価総額は7兆9千億円と見積もられ、民営化を経て上場した、NTT、JT(日本たばこ)を下回る公算が大きい。(逆に外資に獲っては大安売りになるか)

親子同時上場という仕組みも,投資家には理解しにくい。本来なら子会社が先に上場してその完全民営化を示した上で,親会社が上場するのが筋で、日本郵政の企業価値がガラス張りで評価できるのだが、既に政府は、日本郵政株売却によって4兆円の復興財源を当て込んでいるから後回しにできないのだ、とFactaは書いている。成長性略をかけないので、ロードショーではん、業績安定、株主還元、を強調している。なんと配当性向に関しては、日本郵政とゆうちょが50%以上、かんぽは30~50%という高水準の目標を提示した。これは、原発事故で吹っ飛んだ東京電力の株の宣伝文句と同じで、巨額の国債を保有する日本郵政グループは、金利情報で、大赤字に転落する懸念もあるから、業績安定も絵に描いた餅になりかねない。

2月にオーストラリアの物流大手の買収を決断したのは、直になんと50%ものプレミアムをつける大盤振る舞いをしているのは、「利益」を買おうと謂うわけだ。トール社の純利益は、約280億円でのれん償却があるから、百億くらいの稼ぎが日本郵便に上積みされる計算になり、買収総額が6200億円に見合うかどうかと謂う判断をおいても、IPOに向けて「お化粧」を施す手立ては他になかったのだろう。これから上場まで第二のM&Aに踏み切る可能性も小さくはない。

経営陣は派手にみえるM&Aの空中戦を仕掛ける一方で、現場は、シェア重視、規模拡大の白兵戦で消耗している。ヤマトがメール便をやめて営業攻勢をかけて、シェアは急上昇したが、値引きをやって採算が改善するわけがない。ゆうメール、ゆうパックの営業損益は、14年度に見込んでいた黒字化も先送りだ。(13年度は332億円の赤字)

ゆうちょも、流石に、プラス六兆円の旗はおろして4兆円にしたが、菌入り上昇リスクにさらされている中で、拡大志向はとどまらず、あろうことか、ゆうちょ・かんぽの限度額引き上げの議論まで飛び出し、参議院選挙で組織力を見せた全特(全国郵便局長会)にすり寄るように自民党内でも賛成の声が広がっている。郵政民営化に逆行する動きだ。「経済合理性を重んじる民間企業の発想ではない。予算獲得に通じる役人の悪弊だ」

民営化当初は9人のうち6人は民間出身だったが、今は13人の内5人であり、民営化とはあべこべになっている。新郵政省と揶揄される状態の反動が生じており、その頂点に立つのが、総務事務次官を務めた人物である。菅官房長官からの信頼が厚いだけに、総務省と謂えどももの申し肉に空気があると評されている。人事・組織調整手腕の功は多としても、最大の問題は日本郵政の事業特性にある。NYTT,JR JT等の場合、業種に特化して公社時代から専門家が育っていたが、郵政の場合は、金融のプロフェッショナルは皆無に近い。たった一年前にも、「このままでは、(株は)うれないのでこうすべきだということを(日本郵政に対しては)言っている。株式市場のガバナンスに耐えるかたちをつくっていかなければならない」と売り出し手の財務省幹部は公言したものだ。

八月末から、最終ロードショーを行い、10月から11月にも、IPOすると目されるが、現状では株価が初値を下回る「上場ゴール」の懸念なしとは言い切れない。「100万人の株主が損を被ればNTTと同じく社会問題化するのは必定で、そうなれば現政権も返り血を浴び、ひいては日本経済全般に悪影響を及ぼす怖れすらある。」

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