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Kuroshio 138

南西諸島から観る島嶼防衛の要諦

 平成19年3月30日午後11時40分、陸上自衛隊第一混成団第101飛行隊(当時、ヘリコプター6機、固定翼飛行機3機で、隊員100名の24時間体制。現在、第15旅団第15飛行隊)のCH47型ヘリコプターが、徳之島の天城(あまぎ)岳(標高535メートル)の斜面に激突した。鹿児島県知事の災害派遣出動の要請に従って、急患空輸の任務の為に徳之島総合グラウンドに着陸する予定が、濃霧で視界不良だったため、徳之島の北西部にある徳之島空港に航路を変更して脊梁の山を越えるときに事故が発生した。乗組員の建村善知三佐(鹿児島県出身54歳)、坂口弘一一尉(佐賀県出身53歳)、岩永浩一二曹(長崎県出身42歳)、藤永真司二曹(大分県出身33歳)が殉職した。建村機長は、4850時間、坂口副操縦士は6300時間の飛行経験を持つベテランで、建村機長は7月には定年退職を予定しており、沖縄の黒酢の会社に再就職が内定して、退職の日までの搭乗予定も数回でしかなかった。建村三佐は、マスコミの取材に対して、「敵は気象天候です。」「絶対に(沖縄)県民に信頼される自衛隊でなければならず,防衛任務と急患輸送任務の両方をパーフェクトに行うという重たい任務を第101飛行隊は負っている。」と応答した記録が残っている。全国の中で県知事からの「災害派遣出動」の要請が最も多いのが沖縄県である。多くの島嶼があるために、年間の出動回数は300回にも及ぶというからほぼ毎日の出動となる。殉職した徳之島での墜落事故は、鹿児島県知事の出動要請に基づくものであったが、沖縄の隣の奄美群島の島々は、九州の南端からよりも沖縄本島の方からの方が距離的には遙かに近いから、台風の後の災害復旧でも電力復旧などは、九州電力ではなく、沖縄電力から応援の復旧部隊が出動することが知られている。今回も急患輸送の為に、沖縄から自衛隊のヘリコプターが出動したのだ。南西諸島における救急医療に果たす役割が、主役が地方自治体ではなく、自衛隊の災害派遣出動であるという実態を浮き彫りにしている。軍事組織であるから、気象天候の良否にかかわらず、目的を達成するためには出動する。建村三佐は、生まれ故郷が徳之島で、島で一番賑やかな亀津という集落の出身だったから、同胞が急病になって、その患者を輸送することには殊更の使命感を意識して、那覇空港の一角にある航空隊の格納庫を出立したに違いにない。「災害派遣出動」の回数が全国一多い沖縄県で、反自衛隊の世論が意図的につくられ、陸上自衛隊の司令官が、地元マスコミに言葉尻を掴まれるという事件も発生していた頃で、危険な急患輸送任務を達成しても、マイナス100点からだから、100点満点で当たり前になり、「絶対に」任務を遂行しようとしたことも間違いない。

 五月中旬、筆者は祖母の墓参りの為に帰島した。徳之島空港は島の北東部を占める天城町にあり、旧陸軍浅間飛行場の下の海岸を埋め立てて作った施設であるが、北東にある集落の松原で子供の頃を祖母と過ごした。今では寝姿山などとしゃれた名前がついているが、松原銅山があった馬鞍(まんくら)岳と天城岳とが遠望され、全島一周の道路が横切る川の橋の畔に一族の墓地がある。黒潮の民は先祖崇拝だから、都会生活のサラリーマンは、先祖の位牌(いふぇ)を鞄に入れて持ち運ぶようなことで先祖との繋がりをかろうじて維持しているのであるが、今回は東京郊外に住む甥が数日島に先行して、墓所の掃除をして貰っていたから、観光客のような気分で隣の集落の与名間にある、マラソンの高橋尚子選手などが合宿に使うことで有名になったリゾート?に宿泊した。リゾートはマユ(ねこ)ンハナ(先端)という岬に立地しているから、渡り鳥の通り道で、朝な夕なにあちこちに鳥の声が聞こえて、アカショウビンが「キョロロロロー…」と囀(さえず)り、島名(しまな)が「クッカル」だったことを思い出した。

 島の北東部の山(さん)の集落から登山道が慰霊碑のある尾根までつけられたと聞き、赴いて敬意を捧げることにした。集落共有林の原生林の中の林道を軽自動車で登り、工兵隊によって整備された急峻な階段を更に二十分くらい徒歩で登り、見晴らしの良い尾根に慰霊碑はあった。波濤を越えて、と御影石に彫られ、台石に、昇格した階級と氏名が彫り込まれ、裏に、「徳之島緊急患者空輸に向かった 勇敢なる第101飛行隊 英霊四名ここに眠る 平成二十一年二月吉日建立」とある。筆者は沖縄勤務の時に、故建村大佐が那覇基地の広報係に所属していて知遇を得た。同郷のよしみで事情を憚りなく聞き、格納庫の中を回って三菱のMUという型の国産偵察機?を見学したこともある。島嶼防衛の要諦は、尖閣で一戦を交えることではなく、奄美・沖縄の南西諸島を守ることであるが、慰霊碑のある山(さん)の集落にあったヘルスセンター跡の太陽光発電施設に支那企業が参加しているとの話にはまったく驚かされた。英霊の殉職を無駄にしないよう、特別に立法措置を講じても敵対勢力の島嶼への浸透を断固阻止すべきと考える。支那人民解放軍に制圧蹂躙されたチベットの轍を、わが南西諸島に踏ませてはならない。(つづく)

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