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kuroshio 145

滝王子稲荷神社境内のタブノキ

●東急電鉄の大井町線の大井町駅とJR京浜東北線の大井町駅とが連絡する北側の出口を出て、すぐ左に曲がると跨線橋がある。それを渡り、賑やかな商店街に沿って東の方角に向かってまっすぐ五分程歩くと仙台坂がある。台地の端が急な坂になって東京湾に下っている。今では真ん中に自動車専用のトンネルがあり、両脇に歩行者用の側道がつけられ、その坂がもとは「暗闇坂」と呼ばれていたが、今は旧仙台坂になってしまった。奥州仙台藩の大井下屋敷があった名残りで、大正時代の味噌倉が立派な工場に改装されて、仙臺味噌醸造所の看板が掲げられて、仙台味噌の風味豊かな逸品である「五風十雨」を今も量り売りしている。一本のタブノキの大木は、その仙台坂の南側の脇の社有地に屹立している。この場所は、仙台藩大井下屋敷の裏玄関に当たる場所と伝わる。「本樹は目通り幹囲四・六メートル、樹高は二十メートル、推定樹齢は約三百年、樹勢旺盛で美しい樹容を見せている」と、品川区教育委員会が平成二十三年に建てた標識に書かれている。仙台坂の先には、運転試験場のある鮫洲や青物横丁といった京浜急行の駅があるが、名前の示すように、東京湾が迫り、遊漁船の船宿なども今に残っている。仙台坂のタブノキは、今でこそ高層ビルの間に挟まれてしまったが、昔は東京湾の海の遠くからも眺めることができたに違いないから、東京湾を往来する舟や船頭の目印にもなっていたに違いない。東北の大地震と大津波でもタブノキは各地で生き残り、深く根を張って災害に対する強靱さが証明されたが、この品川仙台坂ののタブノキは、関東大震災をも耐え抜いた生証「人」である。

●大井町駅の方に少し戻って、大森駅の方に向かう池上通りの中間当たりに鹿嶋神社がある。歩けない距離ではないが、筆者は、タクシーに乗って七百八十円也を支払ったが、バスの路線もあり、鹿島神社前のバス停も見かけた。鹿嶋神社の入り口には大きな石柱に社名が彫り込まれている。第六十二代冷泉天皇の御代、安和二年(西暦九六九年)九月十九日に武蔵国荏原郡大井村字関ヶ原(現在の東大井六丁目)の常行三昧寺住職であった尊栄法印が常陸国鹿島神宮から分霊を勧請し、同日、別当として来迎院を建立、慈覚大師がつくった薬師如来像を安置したという。常行三昧寺は江戸時代の承応二年南品川に移転している。この鹿嶋神社に二本のタブノキの大木がある。神主から現在の立派な本殿は昭和六年に新築造営されたと聞いたが、本殿に向かって左側にあるダブノキは、幹囲約三メートル、樹高が約十三メートル、樹齢は約二百年で、本殿の右脇の文久二年(西暦一八六二年)造営の旧社殿の前にあるダブノキは、幹囲約二メートル半、樹高約十八メートル、樹齢は約百五十年である。この神社の東側も台地の端に鎮座しており、神社の裏側は寺の敷地で墓地になっているが、古代には、船着き場であった可能性が高い。霞ヶ浦の奥の恋瀬川の台地の神社や古墳の地形や配置について書いたことがあるが、海と陸との結界である台地の崖地の入り口に神社が勧請されて祀られた可能性がある。この品川の鹿嶋神社の配置も海から関東平野の台地への入り口のように思われるし、仙台坂のタブノキの生えている土地も、この鹿島神社の土地も大昔には古墳だった可能性はある。鹿嶋神社は全国に約六百社あると言われるが、やはり、ご祭神は武甕槌之神で、海路の日和を祈願することで共通している。神社の近くには、E・モースが発見した大森貝塚もある。

●鹿嶋神社から、また大井町駅の方向に池上通りを戻り、品川区立歴史館の前にある、交番の脇から路地に入り、歩いて行くと新聞の販売店のある道路にぶつかる。そこを右折して五十メートルも行かないところに、滝王子稲荷神社がある。滝氏という一族が住んでいて稲荷社と併せて王子権現を祀っていたから、滝王子稲荷の名がついたという。境内に湧水池があり、かつては野菜など農産物の洗い場として利用されていたというが、今では、三方をコンクリートで固めて人が入れないようにしており、溜水は濁りきっているが、プラスチックのパイプからは、まだ、水がほとばしり出ている。昔、この神社には鬱蒼とした森があったとの記録であるが、今は手入れが悪く荒れはてている。この神社の敷地の中央に、幹囲約三メートル、樹高約十五メートル、樹齢は推定二百五十年から三百年のタブノキが残る。タブノキの周囲は溶岩で囲まれている。ちなみに、神社の本殿の右背後には、銀杏の巨木がある。社殿の脇には富士山を模して造営された富士塚もある。ここから北の方角にまっすぐ道路沿いに歩くとT地路にぶつかる。そこに神殿造りの風呂屋があり、そこを右に曲がると大井町の駅に抜ける道路だ。出発した北口に戻って、万歩計が八千歩を少し越えていたから、タクシーに乗った分も、散歩した方が健康の為には良かったのかも知れない。

●大田区東嶺町の白山神社には、区内一のタブノキの大木があると言う。葛飾区の東水元の熊野神社にもタブノキの巨木があると聞くが、いずれもまだ実見していない。(つづく)

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