構造改革、民営化、市場原理主義の虚妄から、マインドコントロールを解くための参考図書館

« 2017年6月 | トップページ | 2017年8月 »

2017年7月

Kuroshio 185

日本郵政民営化の闇を暴く 上

●ふと顧みると、遠い昔の話のような 気がするが、まだ五年にもならない。 竹中平蔵氏による同僚の研究成果の盗 用問題をはじめとして、長年にわたり 同氏を取材対象に追い続け、その取材 の成果の集大成として『市場と権力 「 改革 」 に憑かれた経済学者の肖像』 ( 講談社)と題する単行本を佐々木実 氏が世に問うたのは二〇一三年の五月 のことであった。佐々木実氏は一九六 六年生まれ、日本経済新聞記者を経た フリーのジャーナリスト。 佐々木実氏のこの労作は同年の新潮 ドキュメント賞と翌年の大宅壮一ノン フィクション賞を受賞した。出版界に とっては軒並みに取り上げて然るべき 大きな英誉である。にもかかわらず、 新聞各紙は何を怖れているのか一片の 書評すら掲載しようとはしなかった。 筆者の知る限りでは、共同通信の配信 を受けて新潟日報だけが書評を出した。 その『市場と権力』の第七章は郵政 民営化の闇について詳述している。 同氏による「郵政公社『資産売却』 の闇 民営化ビジネスの虚実」と題す る記事が月刊誌に掲載されたが、閲覧 が困難となっている。だが幸いにも、 気鋭のジャーナリストによる渾身のレ ポートの要旨を筆者はメモしていた。
佐々木実氏の快諾も得て、郵政民営化 の無明の闇に光をあてる 縁 にすべく、 よすが 佐々木実氏の記事のメモを以下に転記 することにした。 豪州のトール社を買収して四〇〇〇 億円を越える巨額の損失が確定したこ とが表面化したこともあり、民営化の 開始早々から開始された不動産売買に 対して、関係者からも指摘されて懸念 の声が上がっていた。ただし、不動産 売買そのものはすでに郵政公社時代か らバルクセールとして始まっていたの だ。こうしたことを記録に残し、外国 勢力が主力になった郵政民営化の闇に 光を当てることは、日本再興を目指す 者たちにとって必ずや貴重な参考情報 となるはずで、時宜にも叶っていると 信じる。 ●日本郵政が「かんぽの宿」をオリッ クス不動産に一括売却しようとしたと ころ、鳩山総務相 ( 当時 ) はストップ をかけた。白紙撤回に至ったことが大 々的に報道されたことは未だに記憶に 新しい。しかし日本郵政は、前身であ る郵政公社時代にも一括売却 ( バルク セール ) の手法を用いて六〇〇件を超 える大量の資産売却を行なっていた。 このバルクセールの実態はどのような ものだったのか。転売先や資金の出所
にまで視野を広げて追跡したところ、 謎の有限会社や小泉政権時代に「勝ち 組」としてもてはやされた企業の名前 などが浮かび上がってきた――。民主 党の城島光力氏に話を聞いたのは総選 挙の準備に忙しい二〇〇九年七月のこ とだった。 「いま思い出しても腹が立 ってきますよ」落選中の身の城島氏は そう言うと、六年前の出来事を昨日の ことのように話しはじめた。きっかけ は二〇〇三年五月の衆議院厚生労働委 員会での質疑だった。民主党の「次の 内閣・雇用担当大臣」でもあった城島 氏は労働分野の規制緩和に強い懸念を もっていた。 「派遣期間を一年から三 年に延長し解雇もしやすくする法案で した。オリックスの宮内義彦さんが議 長の総合規制改革会議から出てきた流 れだ。それでこの会議のメンバーにつ いて調べてみようと思ったわけです」 ◎「最高権力者」 調べてみると、人材派遣に関わる経 営者が委員のなかに二人いることに気 づいた。ザ・アール社長の奥谷禮子氏 とリクルート社長の河野栄子氏。ザ・ アールのウェブサイトを見てみると、 第二位株主がオリックスで、主要取引 先はリクルートと記されていた。総合 規制改革会議は首相の諮問機関。小泉 総理が提言を尊重するので政策への影 響力は大きい。ビジネスでつながりを もつ三人がそろって委員というのは問
題ではないか。城島氏は厚生労働大臣 に質した。城島氏は国会の外で思わぬ 反撃に遭う。奥谷氏自らが議員会館の 部屋を訪ね激しく抗議してきた。抗議 は執拗で、面談のあとも、衆議院厚生 労働委員長宛に内容証明郵便を送付し、 「不適切な部分を速記録から削除」す ること、城島議員を「悪質な場合は処 分」することを求めてきた。だがこれ で終わりではなかった。追い討ちをか けるように、総合規制改革会議議長の 宮内氏も抗議文を送りつけてきた。 「貴職の見解を問いたい」 「総合規制 改革会議に対しての大変な侮辱であ る」 「到底承服できるものではない」 ……まるで目下の者を叱責しているか のような文章だった。 憲法第五一条は国会議員に国会での 発言の責任を問われないという免責特 権を与えている。抗議を逆手にとって 問題にしようと城島氏が考えていた矢 先、後に大臣にもなる自民党の有力議 員が声を潜めるように忠告してきた。 「城島さん、あなたのいうことはその とおりだよ。でもね、宮内義彦はいま 日本の最高権力者だ。戦ってもいいこ とは何もない」 。ぼくは「郵政民営化 ビジネスは政官業の癒着よりひどいじ ゃないか」と指摘して、宮内さんや奥 谷さんの猛烈な怒りを買った。ずばり 本質を衝かれたから彼らはあんなに激 しく怒ったんだと思いますよ。過剰反
応の背後に利権の存在があるのではな いか。城島氏は郵政民営化の利権につ いて調べる決意を固めていたが、頓挫 した。〇五年九月の「郵政選挙」で落 選してしまったからだ。奥谷氏は郵政 民営化後の日本郵政株式会社の社外取 締役に就任している。郵政審議会委員 を務めるなど郵政事業とは縁が深いが、 奥谷氏が経営する人材派遣会社ザ・ア ールが日本郵政公社からマナー研修な ど総額七億円近い仕事を受注していた ことが明らかになっている。オリック ス不動産が「かんぽの宿一括譲渡」を 落札したことに端を発したかんぽの宿 騒動で、宮内氏が渦中の人になったこ とは記憶に新しいところだ。郵政事業 にからんで両氏が仲良く登場してきた のは偶然だろうか。かんぽの宿一括売 却はまさに郵政資産の民間市場への放 出だが、郵政資産の売却には前史があ る。日本郵政公社(郵政公社)時代の 不動産の大量売却だ。郵政公社は二〇 〇三年四月に発足した。政府が全額出 資する国営企業で、郵政事業庁から郵 便、郵便貯金、簡易保険を引き継いだ ものの、郵政民営化が蒸し返された 「郵政選挙」で小泉政権が大勝して、 郵政事業は分割された株式会社にゆだ ねられて短命に終わる。日本郵政株式 会社にとって替わられる形で郵政公社 は〇七年九月に解散した。活動期問は わずか四年半だったが、この問、保有
する不動産を大量に売りさばいていた。 売却した不動産は優に六〇〇件を超え る。北は北海道から南は沖縄まで、土 地や建物を短期問に大量に売れたのは、 「バルクセール」という売却手法に依 るところが大きい。たくさんの不動産 をひとまとめにして売る方法だ。もと もと不良資産を大量に抱えた銀行が不 良資産の処理を迅速に進めるために用 いた方法で、買い手の付きにくい不良 物件と資産価値の高い物件を抱き合わ せて売りに出す。米国でも日本でも、 不良債権問題が深刻化した時期、不良 資産を金融機関から早く切り離すため の資産流動化策が打ち出され、バルク セールなどの取引がしやすくなるよう 制度的な環境が整えられた。もっとも、 郵政公社がバルクセールで売却した不 動産は全国各地の社宅や郵便局舎建て 替え用地などで、東京や大阪あるいは 地方都市の一等地もたくさん含まれる。 不良資産の処分と同じ方法を逃んだの はなぜか、その経緯はいま一つはっき りしない。二〇〇四年一〇月、郵政公 社は唐突に「不動産売却促進委員会」 なるものを立ち上げている。郵政公社 の高橋俊裕副総裁 ( トヨタ出身)が委 員長、執行役貝七人が委員という構成 だ。初会合の議事録に、委員の奇妙な 発言が記されている。 「この委員会で 何を決めるのか。バルク売却すること を決定するのか。なぜバルク売却する
のか」 。こうした発言が出たのは、初 会合で「バルクセールの必要性」を説 く資料がいきなり委員に配られたから だ。資料を作成した事務局は不動産売 却を批当する施設部門。 「売れ残しを なくすために行なう。資料の売れ筋欄 にあるようになかなか売れない物件も ある。これを売れやすい物件と併せて 売却する予定」と説明。しかし別の委 員だちからも、「情報公開はどうする のか」 「売却物件の全体額はいくらか。 データとしてないのか」などの声が相 次いでいる。ちなみに高橋委員長は出 張で欠席している。リクルートコスモ スが三回落札。結局、郵政公社は大型 バルクセールを三回実施する。ひとま とめで売りに出した不動産は〇五年三 月が六〇件、〇六年三月が一八六件、 そして〇七年三月に一七八件。合計四 二四件で売却総額は五〇〇億円近くに のぼる。驚くことに、すべて同じ企業 グループが落札している。リクルート コスモス(現在はコスモス・イニシ ア)を代表とするグループだ。郵政公 社から一括購入した不動産は落札した 企業グループ内で分配される。どの企 業に何件渡ったかを調べると、リクル ートコスモスは大きな不動産を収得し てはいるものの物件数は少ない。残る 多数をほかのメンバーが購人している わけだが、転売しているケースがほと んどで、二回三回と転売が繰り返され
ている例も珍しくない。不動産の流れ を追いかけると、奇妙な事実が顔を覗 かせる。郵政公社から物件を購入した メンバー企業が購入直後に会社ごとフ ァンドに買収されていたり、転売リレ ーに登場する実態不明の会社を追跡す ると有名企業が後ろに控えていたり、 複雑怪奇な取引関係は民営化ビジネス の虚実を物語る。〇五年三月の初めて のバルクセールから見ていく。入札に はリクルートコスモス、ゴールドクレ スト、長谷工コーポレーションをそれ ぞれ代表とする三つの企業グループが 参加した。売却される不動産は六〇件。 リクルートコスモス・グループが一六 二億円で落札した。メンバー企業と購 入件数は次のとおり。株式会社リクル ートコスモス ( 一件 ) 、株式会社リーテ ック(五件)、株式会社穴吹工務店 (一件) 、株式会社穴吹不動産センタ ー ( 五件 ) 、有限会社CAM5(リクル ートコスモスとの共同購入、二件) 、 有限会社CAM6 ( 四六件 ) 、グループ 代表のリクルートコスモスは当時リク ルートグループに屈する不動産会社。 実はこのバルクセール直後にリクルー トグループから独立する。リーテック はリクルートコスモス出身の社長が二 〇〇〇年に設立した会社。穴吹工務店 は香川県高松市が本拠で、全国でマン ションの建設・販売や不動産売買など をしている。穴吹不動産センターはグループ会社だ。残る二つの有限会社、 CAM5とCAM6はリクルートコス モスが出資した特別目的会社 ( SPC、 特定の不動産取引のために設立された 会社) 。リクルートコスモスは大型物 件を獲得してはいるものの、購人物件 数は少ない。物件数でいえば、主役は 全体の七七%にあたる四六件を単独で 手に入れたCAM6だ。 CAM6に ついて、リクルートコスモスは「弊社 が設立したSPCに相違ない」という 関係証明書を郵政公社に提出している。 ところが郵政公社から不動産を購入し た直後に、ケネディクスという企業に 出資持分の五〇%を取得されている。 ケネディクスの関連会社になったわけ だが、まもなくケネディクスはCAM 6を「スティルウォーター・インベス トメント」と改称し、郵政不動産を次 々と転売している。ケネディクスは米 国の大手不動産会社ケネディ・ウィル ソン・インクの日本の拠点として九五 年に設立された。不動産や不良債権へ の投資を行なっている。CAM6はバ ルクセール前に設立されたが、設立時 から取締役(代表者)はケネディクス の中堅幹部社員で、郵政公社のバルク セールにケネディクスが投資すること はあらかじめ決まっていたとみていい。 CAM6の取締役には後に米国穀物メ ジャーのカーギルの関係者も就任して いる。カーギルからも出資を受けた可
能性がある。 ◎資金源はオリックス CAM6が購入した不動産を調べてみ て意外なことがわかった。購入した不 動産四六件のうち二二件がオリックス の担保に入っていた。福岡香椎用地 (郵政公社の評価額約二七億円) 、神 奈川県葉山用地(同約一八億円) 、北 海道函館用地(同約九億円)はいずれ も極度額二八億八〇〇〇万円の根抵当 権を売買日に仮登記。小さな物件はま とめて共同担保にしている。CAM6 が郵政公社の不動産を大量に買い付け ることができたのは、オリックスが資 金を提供していたからだった。落札し た企業グループにオリックスは入って いないが、全体のスキームの中にあら かじめ参加していたとみなしていいだ ろう。表には顔を見せない資金提供者 だ。いずれにしても、かんぽの宿問題 の四年も前から、オリックスは郵政資 産ビジネスと関わりをもっていたこと になる。リクルートコスモスは郵政公 社の初めてのバルクセールを落札した 二ヶ月後、リクルートグループからの 独立を発表する。ユニゾン・キャピタ ルが運営する三つのファンドが九〇億 円を出資、ユニゾンはリクルートコス モスの六〇%強の株を保有して筆頭株 主になり、経営権を掌握する。ユニゾ ン・キャピタルの創業者で代表の江原 仲好氏はゴールドマン・サックスで活
躍した経歴をもち、同社勤務峙代に日 本人として初めてパートナーに選ばれ ている。ところで、オリックスがリク ルートコスモスと資本関係をもつのも リクルートグループから独立したとき からで、優先株を引き受けて二〇億円 を出資している。ユニゾン・キャピタ ルの方とも接点がある。ちょうどリク ルートコスモスの経営権を握るころ、 ユニゾン・キャピタルは経営への助言 機関「エグゼクティブ・カウンシル」 を社内に設け、メンバーの一人として 宮内義彦氏を迎え入れた。リクルート コスモスはリクルートグループから独 立したあとも、郵政公社のバルクセー ルを立て続けに落札していく。参議院 で郵政関連法案が否決された後、 「郵 政民営化の是非を問う」と訴える小泉 総理が衆議院を解散、〇五年九月の総 選挙で大勝した。郵政関連法案の作成 を一手に取り仕切った竹中平蔵郵政民 営化担当大臣は総務大臣も兼任、郵政 公社を所管する総務省に乗り込む。大 臣は郵政公社の資産売却に関する権限 も持っていて、二億円以上の資産を売 却する場合、郵政公社は総務大臣の認 可を受けなければならない。完璧な郵 政民営化体制が敷かれるなかで実施さ れた二〇〇六年三月の郵政公社バルク セールは、最大規模のものとなった。 一括売却された不動産は一回目の三倍 を上回る一八六件。当時郵政公社で資
産売却を担当していた関係者は、売却 リストにたくさんの社宅が入っている のを発見して驚いた。 「どうしてこん なに社宅を売るのかと同僚に聞いたら、 社宅売却計画があるとかで、その初年 度なんだと言ってました。いつそんな 計画ができたのかはわかりません」 。 郵政公社の当時の内部資料を見ると、 二回目のバルクセールの核となる目玉 物件が記され、例えば東京では 「 国分 寺泉町社宅用地 」 、 「 旧赤坂一号社宅 」 、 「旧中目黒三丁目社宅」などが挙げら れ、いずれも地価が極めて高い。入札 前から問い合わせが殺到、実際の入札 には一一社が参加、住友不動産、野村 不動産、丸紅などのほか、オリックス ・リアルエステート(現オリックス不 動産)なども参加している。結果は、 リクルートコスモスのグループが再び 落札。落札額は二一二億円だった。 ●郵政民営化とは、駅前の一等地を財 閥がぶんどり合戦をすることだと揶揄 する向きがあった。東京駅前は三菱地 所とJR東日本、札幌は三井不動産、 名古屋は名工建設、博多はJR九州と の合弁で高層ビルが建った。大阪は、 住友が勧進元になってビルを建て、東 京でディズニーランドを経営するオリ エンタルランドが協力してカナダのサ ーカスの劇場を入れる話もあったが、 まだ更地のままである。 (つづく)

Kuroshio 184

巨額ゆうちょマネー消失のからくり

●日本郵政グループが豪州の物流会社 トール・ホールディングスを六二〇〇 億円で買収して子会社にしていたが、 業績が悪化して約四〇〇〇億円の損失 を計上するに至ったことが公表された。 筆者は昨年の逓信記念日(郵政記念日、 四月二〇日)に、金融経済学者の菊池 英博氏との共著で『ゆうちょマネーは どこへ消えたか』 ( 彩流社)を出版し、 巨額損失の可能性について既に警告を 発した。その中で、日本郵政の社長へ の進言を呈した(二五三頁) 。 買収した豪州の大手物流会社の売却 が過大であり、その中に三〇〇〇億円 規模ののれん代がある。その償却だけ で「日本郵便」は赤字が継続する懸念 がある。早期に売却すべきではないか。 さらに、上場前の不可解なやりくり と不明朗な買収額について、共著で次 のように警告していた(一〇四頁) 。 親会社である日本郵政が保有してい る「ゆうちょ銀行」の株式を、 「ゆう ちょ銀行」自身が買い上げる(自社株 買)ことによって、ゆうちょ銀行の内 部留保 ( 一兆三〇〇〇億)を吸い上げ たのである。上場後であればとても不 可能な 「 離れ業 」 であった。この操作で 日本郵政には六千億円の資金が残り、 この資金で豪州の大手物流会社である
トール社を約六二〇〇億円で買収した。 この買収は実態価格から考えると、二 〇〇〇億円ほども高い買収であり、日 本会計上この二〇〇〇億円は 「 のれん 処理」をしなければならない ( 宮尾攻 氏『文藝春秋二〇一五年一一月号) 。 さらにトール社には三〇〇〇億円規模 ののれん代が内包されている。 ●巨額損失が表面化した時点で、菊池 氏と筆者とはこの国損とも言える巨額 損失の発生に対応して何ができるかを 相談した。それで、長門日本郵政社長 宛に辞任勧告書と題する書面を提出す ることとなり、原案を菊池氏が作成、 筆者がそれに同意して菊池氏が配達証 明で発送し、その際に写しを麻生財務 大臣に送付することにした。その一枚 の書面は以下の通りである。 今般、日本郵政の二○一七年三月期 連結最終損益は四百億円の赤字になる と報ぜられたことは極めて遺憾である。 ( 中略)トール社の損失処理に使う原 資は長年にわたり蓄積された国家の財 産であり、国民資産である。それを無 視して、貴殿は役員報酬をわずかに減 額しただけで責任を取ったふりをする 態度は国民として断固として許しがた く即刻辞任すべきである。
●菊池英博氏と筆者のこの動きに関し
て、まず週刊現代五月二七日号が四頁 にわたる記事を載せた。週刊現代は、 電車の中に吊広告として記事の内容を 大々的に宣伝する。中身を読む前に、 電車の吊広告で、 「スクープ!、日本 郵便元副会長稲村公望氏が実名で告発 する」と黄色の活字が踊ったのである。 それを読んだ霞ヶ関OBの友人からも 激励の電話をいくつか頂戴した。 「 西室氏を推薦した安倍晋三首相、菅 義偉官房長官にも任命責任がある」と のくだりは、記者の聞き書きの筆が滑 った可能性もあるが、西室氏は、戦後 七〇年問題懇談会の座長でもあり、日 支関係のフォーラムの座長をも務めて 官邸との関係は密接だと言われてきた から、修正する理由はなかった。 「 病 気療養中というが、代理人を通じて責 任についてコメントを発表することぐ らいはできるはずです」との思いは今 もあり、しかもウエスティングハウス の買収の当事者であるから、東芝とい う日本を代表する電機会社を崩壊に至 らしめた責任者の一人であることを勘 案すれば、自らの意見を具申開陳する こともなく事態を放置することは、日 本郵政の関係者として、また『ゆうち ょマネーはどこへ消えたか』を江湖に 問うた共著者として、却って無責任に なるのではないかと考えたのである。
●五月一七日から米国ワシントンとボ ストンに行く用務があり、羽田空港の日本航空の待合室で、当日出版された 週刊文春五月二五日号を入手して関連 記事を読もうとしたが、間に合わなか った。週刊文春の記事を読んだのは、 二三日のシカゴ発の日本航空の帰国便 の畿内だった。週刊現代の方はさすが にヌード写真を売物にしているところ もあり、日本航空は搭載していなかっ た。週刊文春の記事は見開きの二頁で、 麻生財務大臣に届いた日本郵政社長 「 辞任勧告状」 と見出しをつけた。内容はバランスが とれ、筆者ばかりでなく共著者の菊池 氏のコメントも多く引用して説得力を 高めたように思われた。野村不動産を M&Aするなどとの噂話が浮上するさ なかで、筆者の次のコメントも載せた。 JPエクスプレス事業の失敗、トー ル社買収による損失と言ったことを顧 みることなく新たにM&Aに走るとは 信じられません。本業に戻るべきでし ょう。民営化路線を継承する長門社長 の暴走を許せば、ゆうちょマネーは地 方経済へ還流することなく海外へ流出 し、日本の貧富、都会と田舎の格差は 広がるばかりです。 さらには、週刊朝日がコラムで採り 上げ、週刊金曜日六月九日号が筆者の インタビューを載せ、テーミス六月号 は、「給与カット」も甘い、西室は 「責任逃れ」と書いている。 (つづく)

« 2017年6月 | トップページ | 2017年8月 »

2022年2月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28          

興味深いリンク