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Kuroshio 186

日本郵政民営化の闇を暴く  中

●株式会社リクルートコスモス(三 件)有限会社CAM7(一三七件) 株式会社穴吹工務店(一件)株式会 社穴吹不動産センター(七件)有限 会社G7ー1(二〇件)有限会社G 7ー2(リクルートコスモスと共同 購入) (二八件)がその内訳である。 ◎郵政資産転がし CAM7はリクルートコスモスが 出資するSPC、G7ー1とG7ー 2は一回目のメンバーだったリーテ ックが出資するSPC。全体を見渡 すと、CAM7が大量購入している ことがわかる。ところがCAM7は この後、会社ごと買収され、リサ・ パートナーズという投資ファンドが 全出資持分を買い取り、会社を丸ご と買い取ることで一三七件の不動産 を手に入れた。そして、リサ・パー トナーズは一三七件のうち一件だけ を個人に売却したあと、一三六件を 別の会社に一括売却している。購入 してからわずか三ヶ月のちに再びバ ルクセールで転売しているわけだ。 リサ・パートナーズが一括売却した 先は有限会社ティー・ジー・ファン ド。聞きなれない名前の会社だが、 有限会社ティー・ジー・ファンドは さらに法人や個人に転売し、ほぼ全
物件を売り抜けている。まるで「郵 政資産転がし」といってもいいよう な見事な転売リレーが成立している。 リサ・パートナーズは旧日本長期信 用銀行出身の井無田敦氏が九八年に 設立した投資ファンドで、取引直前 の〇五年一二月に東証一部に上場し ている。〇六年一二月期の中間決算 書をみると、不動産の主要販売先と して有限会社ティー・ジー・ファン ドが特記されていて、販売額は一三 億七八〇〇万円とある。謎の有限会 社リサ・パートナーズは、CAM7 を会社ごと買収し、手に入れた郵政 物件一三六件を有限会社ティー・ジ ー・ファンドに一三億七八〇〇万円 で転売した。この売却額は、郵政公 社の評価額を基準にすれば、破格の 安さだ。郵政公社の評価では一三六 件の合計は約二三億円。有限会社テ ィー・ジー・ファンドは四割引きで 購人した計算になる。転売でかなり 儲けたのだろうか。そもそもこの有 限会社は何者なのか。連絡をとろう にも、会社のウェブサイトもなくN TTの電話帳にも記載はない。 ◎ゴールドマン・サックスのファンド そこで、同社から不動産を購人し た人を訪ねてみた。東海地方の郵便
局用地を買った個人宅に電話をする と、 「実は、こんな田舎の不動産を東 京の名前を聞いたこともない会社が 本当に所有しているのか不安になり ましてね。うちの主人が束京に出張 したおり会社をこっそり見にいった んです。きちんと表札が掲げてあっ たのでうその話ではないんだなと」 。 東北地方の不動産会社の担当者は、 「値段は妥当だけど、郵政公社が売 った土地の転売ですよね。会社が匿 名を希望しているみたいな変な名前 だし、なにか事情があるのかなとは 思いました」 。話を聞いてわかったの は、東急リバブルが仲介したケース が多いこと、不動産を買った当人も 売り主ティー・ジー・ファンドにつ いての情報はほとんど持ち合わせて いないこと。あらためてティー・ジ ー・ファンドの代表者を調べた結果、 ゴールドマン・サックス・リアルテ ィ・ジャパンの社員であることがわ かった。有限会社ティー・ジー・フ ァンドは米国の大手投資銀行ゴール ドマン・サックスの会社だった。正 確にいえば、投資のための資金はゴ ールドマン・サックス・グループの 不動産投資ファンド「ホワイトホー ル」から出ている。有限会社ティー ・ジー・ファンドは不動産投資する 際の受け皿にすぎないので、資本金 三〇〇万円で専属の社員はいない。
なぜゴールドマン・サックスが郵政 資産の転売リレーなどに参加したの か、問い合わせてみたが、個別取引 については答えられないとのこと。 事情に詳しい金融関係者は郵政資産 の転売では大きな利益はあげていな いともいうが、正確なところはわか らない。リサ・パートナーズ経由で 購入した理由もよく判らない。ファ ンド関係者に意見を求めると、 「ゴー ルドマン・サックスは何か事情があ って表に名前を出したくなかったん でしょうね。リサはゴールドマンへ の転売を前提に買っているはず。こ の世界はみんなお友達みたいなもの で、貸し借りがありますから」 。ティ ー・ジー・ファンドから不動産を買 った人で売買時に「ゴールドマン・ サックス」の名前を耳にした人はい ない。ライブドア事件の余波でファ ンドや外資への風あたりが強かった からだろうか。それにしても、不動 産を売る相手にさえ正体を明かさな いのだから不思議としかいいようが ない。オリックスについても触れて おかなければならない。不動産の分 配状況をみると、G7ー1とG7ー 2が目玉物件を多数手に入れている ことが目を引く。郵政公社は内部資 料でバルクセールの核となる優良物 件一四件を特記しているが、そのう ちG7ー1が四件、G7ー2が六件
を購入している。リーテックの子会 社二社が一四件の優良物件のうち、 何と一〇件までを抑えているわけだ。 不動産登記を調べてみると、ここ でもオリックスが顔を出す。じつは、 G7ー1とG7ー2は郵政公社から 不動産を購入してからおよそ半年後 の一〇月一日、リーテックに吸収合 併されている。オリックスは合併直 前に、G7ー1が郵政公社から買い 入れた優良不動産を担保にして、リ ーテックに融資している。オリック スが共同担保の形で担保にとったの は「旧赤坂一号社宅」 「旧中目黒三丁 目社宅」 「旧沼部三号社宅」など。優 良物件リストの不動産ばかりだ。リ ーテックに吸収される前、G7ー1 の保有物件には三井住友銀行や東京 スター銀行が担保権を設定していた。 融資を肩代わりしてオリックスが入 りこみ、優良物件を担保にしたのだ。 ◎赤坂六丁目プロジェクト オリックスとリーテックはこのあ と関係を深めていく。オリックスが 資金を提供しリーテックが土地を購 入するという共同作業で進めたのが 赤坂六丁目のプロジェクトだ。郵政 公社から手に入れた旧赤坂一号社宅 周辺の土地買い集めに動いたのであ る。旧赤坂一号社宅は日本銀行氷川 寮に隣接する都心の一等地。「(オリ ックスはリーテックに)赤坂だけで
五〇億円以上出してくれている」 (リ ーテック)というから、相当力を入 れたプロジェクトだったのだろう。 二00七年九月に企業が所有する三 七六㎡の土地、0八年三月には独立 行政法人水資源機構が所有していた 二四五㎡の土地といった具合に、リ ーテックはオリックスから資金提供 を受けながら次々と近隣の土地を買 い進めた。リーテックによると、赤 坂六丁目のこれらの土地は不動産市 況が冷え込む前は一〇〇億円以上の 鑑定評価が出ていたという。旧赤坂 一号社宅の郵政公社の評価額は五億 円あまりだから二〇倍以上の金額だ。 現場を訪れてみると、リーテックと オリックスが組んで進めてきたプロ ジェクトがどこの土地かはすぐにわ かった。郵政公社が売った旧赤坂一 号社宅はすでに建物はなく原っぱの ような空き地。水資源機構からリー テックが購入した土地には寮のよう な建物は建っているが、人の出入り はない。旧赤坂一号社宅前で近所の 住人に聞いてみると、 「リクルートが 買ったんですよ」 。リクルートコスモ スと思い違いしているようだが、リ ーテックとオリックスについてはま ったく知らないようで名前を聞いて もきょとんとしていた。 ◎民営化ビジネスの虚実 会社の関係図を見ながら改めて考
えてみると、影の部分、ゴールドマ ン・サックスやリサ・パートナーズ やオリックスが取引している領域は まるで不可視領域であるかのようだ。 ティー・ジー・ファンドから不動 産を買った人はゴールドマン・サッ クスが見えていないし、赤坂六丁目 プロジェクトの隣に住む人はオリッ クスもリーテックも知らない。郵政 公社が一八六件の不動産を引き渡し、 六社グループが二一二億円を支払う。 二本の矢印であらわされた動きだけ を「官から民へ」と捉えると、全体 像は見えない。ビジネスの領域は影 の部分まで広がっているからである。 「郵政利権」が醸成されるのなら、 不可視の領域にこそ目をこらさなけ ればならない。 ◎高橋副総裁の懸念 実をいうと、二回目のバルクセー ルが終わった直後に、郵政公社幹部 が懸念の声を洩らしている。三月二 〇日に開かれた「不動産処分検討委 員会」の席上だ。委員長を務める郵 政公社の高橋副総裁は「昨年のバル クでは、リクルートは転売して相当 儲けたと闘いている。グルーピンク の方法やもっと高く売れる方法を考 える必要がある」と発言している。 「昨年のバルク」とは一回目、 「リク ルート」はリクルートコスモスのグ ループのことだ。どのような意図で
発言をしたのか、高橋氏に直接たず ねてみると、「郵政公社の内部では 『バルクセールはうまくいった』と いう話になっていたんですよ。しか し外部の不動産関係者に聞いてみた ところ、彼ら(落札企業グループ) は損なんかしてませんよ、といわれ た。 『高く売った』といっているけど 本当なのか、もっとやり方を考える 必要があるんじゃないかということ でああいう発言をしたわけです」 。外 部の不動産関係者が「転売で儲けて いる」ことを知っていたのだから、 業界の一部で噂になっていたのかも しれない。不思議なことに、高橋副 総裁がかなり踏み込んで疑問を呈し たのにもかかわらず、特段の改善策 も講じられないまま三回目のバルク セールが実施され、やはりコスモス イニシア(旧リクルートコスモス) のグループが落札している。売却さ れた不動産は一七八件、売却額は一 一五億円だった。二〇〇七年二月の バルクセールに関わった関係者が解 説した。 「バルクセールが成立するの かどうか心配でした。優良物件が少 なかったし、不動産業界も二回目の ときのようなイケイケドンドンの雰 囲気はまったくなかった。どこのマ ンションに売れ残りがでたとかいう 話が聞こえてきたりして」 。小泉政権 を引き継いだばかりの安倍政権下で三回目のバルクセールは実施された が、投資ファンドの影は消える。一 方で、三度も連続して同一企業グル ープが落札した気の緩みからか、お かしなことが頻出している。たとえ ば、入札に参加した企業の顔ぶれ。 コスモスイニシア(旧リクルートコ スモス)グループと、有限会社駿河 ホールディングスと合同会社CKR F4の二社グループの二グループの みの入札だったが、CKRF4の代 表は一回目でリクルートコスモスの グループに入っていたCAM6の代 表と同じ人物。前にも述べたように ケネディクスの社員だ。駿河ホール ディングスの代表に至っては、読売 新聞の収材に「名義貸しだけなので、 入札についてはわからない」と、名 前を貸しただけであることを認める 発言をしている。おかしなことは他 にもある。バルクセールの仲介をし ていた中央三井信託銀行は入札前に、 落札企業が転売する相手先を探して 購入希望価格まで聞きだしていた。 鳥取県の岩井簡易保険保養センター について、東京都内のある不動産業 者は中央三井信託銀行の担当者から 「いくらか」と聞かれ、 「三〇〇〇万 円」と答えた。買い付け証明まで提 出したが、入札前に再び「六〇〇〇 万円にならないか」と打診された。 のちに、リーテックの子会社の有限
会社レッドスロープがたったの一万 円で郵政公社から購入し、地元の福 祉施設に六〇〇〇万円で転売してい たことを知ったという。 ◎ファンド時代の終焉 オリックスとリーテックが二人三 脚で進めた赤坂六丁目プロジェクト の後日談である。もともと郵政資産 「旧赤坂一号社宅」をリーテック子 会礼のG7ー1が手に入れたところ からスタートした郵政ビジネス。オ リックスから軍資金を得てリーテッ クが周辺地を買い進めたことは既に のべた。土地の所有権はリーテック にあるが、登記を確認すると、すべ ての不動産にオリックスが「代物弁 済予約」を0八年九月末に設定して いる。リーマン・ブラザーズが破綻 した直後だ。カネが返せなくなれば 土地は貰うというわけだが、リーマ ン・ショックを境に、プロジェクト に黄信号が点っていることを物語っ ている。そもそもオリックス自身、 一時株価が急落し、厳しい状況にお かれていた。郵政公社のバルクセー ルをすべて落札したコスモスイニシ ア(旧リクルートコスモス)は多額 の債務超過に陥って、後に私的整理 の新手法である事業再生ADRを申 請した。郵政公社のバルクセールを 振り返ると、小泉政権下で実施され た一回目、二回目は投資ファンドが
触手を伸ばしてきたが、安倍政権下 の三回目になるとファンドの影は消 えている。それは一つの予兆であり、 不良債権ビジネスの手法を延長して 民営化事業を推し進めることが難し くなっていることを示していた。そ してリーマン・ショックがとどめを 刺す。投資ファンドの終焉である。 かんぽの宿問題では、一括譲渡を落 札したオリックスに鳩山邦夫総務大 臣が待ったをかけ、郵政民営化の監 督兼脚本家、竹中平蔵慶大教授は強 く反発し、 「かんぽの宿は不良債権」 と言い切った。郵政民営化の根底に 横たわる発想が口をついて出てきた のだろう。麻生政権下で鳩山大臣は 更迭され、西川善文氏は日本郵政株 式会社の社長の椅子にとどまった。 小泉構造改革推進派がところを替え てすさまじい抵抗勢力となり、西川 善文社長を守り通したのである。政 局の次元では巻き返しに成功したけ れども、しかし金融資本の流れにま かせ、すべてを洗い流してもらう金 融資本による「改革」の時代が終焉 した。はしなくも郵政民営化ビジネ スの現状がその終焉を証明した。
●学生時代に故鳩山邦夫代議士との 付き合いはなかった。学習院と教育 大付属大塚の卒業生の御曹司だから、 ズボンに蒼線の入ったスマートな制 服を着た姿を学内でみかけた記憶は
ある。赤いスポーツカーの愛車を見 たこともあったが、直接口をきいた ことはなかった。成績抜群だったそ うだ。当方はトレパン姿で授業に出 て気位の高い教授から怒られた田舎 者の貧乏学生だった。舛添要一氏と の方が、同じ西洋政治史のゼミに所 属していたから話すことが多かった。 後に、都知事選挙で石原慎太郎氏の 圧倒的な人気の下で、二人が競争し て立候補して両方とも落選したこと があった。鳩山氏と、赤坂の蕎麦屋 で月いち集まって清談会を開いたの は卒業してからだ。テレ朝の萩谷順 氏、法政大学の下斗米伸夫教授、南 足柄市長(当時)の澤長生氏などが 常連だった。幹事役の高橋進東大教 授が急逝して立ち消えになった。久 留米に選挙区を変えた時は困った。 同級生の古賀一成君と競争すること になり、筆者は古賀氏を応援して、 選挙妨害にならないようにして、ど うせ鳩山邦夫氏は当選するから古賀 君をせめて比例区で当選させて欲し いと街頭演説を筑後の大川市内でぶ った。タイヤ会社の会社ぐるみの選 挙で、休日に選挙運動をせずに当選 する実力には驚いた。総務大臣の時 は殊更に会わないようにした。入智 恵でもしたと思われるのが厭だった のだが、かんぽの宿の事件の最中は 特にそうだった。 (つづく)

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