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Economic Murder

週刊現代の5月17日号に特集記事として掲載された。備忘録代わりに、ご参考まで。それにしても、西室泰三氏は雲隠れしたのか、巨額損失があってもメディアの力をしても消息がつかめない。実に不思議だ。

以下文字おこし。

「私が現役だった頃は、郵便局では1円でも懐に入れたら懲戒免職になっていました。サラ金に手を出した職員がいれば、それも解雇した。郵政公社時代からの職員には、国民の大事なおカネを預かっていることへの強烈な自負がありました。だから、おカネに関する不祥事には非常に厳しく対応してきたのです。それが、どうしたものでしょうか。いまの日本郵政は4000億円も損失を計上したにもかかわらず、長門正貢社長をはじめ経営陣は誰一人としてまともに責任を取ろうとしません。巨額損失の元凶である西室泰三・元社長にいたっては、一切お咎めなしです。彼らが失った4000億円は、もとはと言えば国民からお預かりした大事なおカネ。それを浪費しながら、のうのうとしている首脳陣の姿は見ていられるものではない。特に巨額損失の全責任を負うべき西室氏に対しては怒りを感じます」
 そう語るのは総務省政策統括官から日本郵政公社常務理事に転じ、日本郵便副会長などを歴任した稲村公望氏(69歳)だ。

日本郵政はこのほど、豪物流子会社トール・ホールディングスの業績悪化から、約4000億円の損失を計上すると発表。この巨額損失によって、2007年の郵政民営化以来、初の赤字に転落する。
そのトール社は、日本郵政が15年に約6200億円で電撃買収した会社。この買収劇こそ、当時社長だった西室氏の鶴の一声で決まったものだった。
「東芝社長や東京証券取引所会長を歴任してきた西室氏が安倍政権から請われて日本郵政社長に就いたのは、いまから4年前の13年のことです。西室氏は就任時からさっそく、『世界全体を俯瞰した物流業を作り上げる』『日本の金融業界、物流業界の最先端を行く企業になる』と語っていました」
西室氏が物流事業への参入を強く主張したのには、郵政グループの株式上場という重要なミッションを抱えていたという背景事情があった。
「当時、郵政の株は政府が保有していましたが、上場の際にはその一部を売却して、東日本大震災の復興財源に充てることになっていました。上場時に投資家にたくさん株を買ってもらうため、西室氏は郵政が将来にわたり成長していくバラ色のシナリオを描く必要があったのでしょう。
とはいえ、郵便事業というのは急速に成長していくビジネスではない。そこで西室氏は、内需企業であった日本郵政に、『物流参入』や『グローバル化』という新しい成長戦略を売り物として加え、箔をつけようとしたのだと思います」
 実際、西室氏は就任当初から国内外の物流各社の買収戦略を開始。国内勢の佐川急便、日立物流なども買収対象として検討に入った。
しかし、そんな西室氏の前のめりの熱意とは裏腹に、当初から郵政社内には物流事業への参入に反対の声があったという。
「理由はとても単純で、そもそも郵便会社が物流に参入してもビジネスモデルとして成り立たないからです。なぜかと言うと、郵便は10~100gほどの軽いものや、単価が安いものを数多く取り扱う商売。一方の物流のビジネスはその正反対で、重くて一つ当たりの単価が高いものを運んで儲ける。つまり、郵便と物流はビジネスが根本的に違うのです」
実際、買収したトール社にしても、主に輸送しているのは豪州産の鉱石であり、郵便とはまったく別物だった。
「しかも、郵政社員には物流事業のノウハウもないので、うまくいかないことは目に見えていた。私が日本郵政公社の常務理事時代にも海外物流会社と提携する話が浮上したが、当時の生田正治総裁に『この会社と組むべきではない』と進言し、結局ご破算にした経緯もある。
アメリカでも郵政会社は郵便に特化し、物流に手を出していない。これが世界の常識。ところが西室氏を始めとする電機メーカーや銀行出身の日本郵政首脳陣は、その違いすらよくわからず、無理矢理に突っ走った」
 当時、上場の目途とされていたのは15年秋。刻一刻とその「期限」が迫ってくる中、西室氏は一部の幹部だけを集めて買収チームを組成してプロジェクトを進めたが、その過程では掟破りの一手まで断行している。
「トール社を買収するには巨額の資金が必要だったので、その資金捻出のために『ウルトラC』をやったのです。そのスキームというのは上場前の14年に実行されたもので、親会社の日本郵政が所有するゆうちょ銀行の株式を、ゆうちょ銀行に買い上げさせるもの。ゆうちょ銀行に自社株買いをさせて、1兆3000億円ほどあったゆうちょ銀行の内部留保を日本郵政に吸い上げさせた。自社株買いは制度的に認められているとはいえ、このような大規模な『資金還流』は本来なら許されないものです」
西室氏がこのように強引に進めてきたトール社買収が、世間にお披露目されたのは15年2月。西室氏は発表会見で、「必ず(買収)効果は出る」と胸を張って見せた。
しかし、そんな楽観論に水を差すように、この巨額買収をめぐっては、発表直後からさっそく辛辣な意見が噴出した。
「たとえば英フィナンシャルタイムス紙は、約6200億円という買収価格について、『49%のプレミアムをつけた大盤振る舞い』と報じました。つまりは、郵政の経営陣はトール社の企業価値を過大に評価しすぎだと批判したわけです。実際、当時すでに鉄鉱石など資源価格が下落し始め、トール社の業績には先行き不安が出ていた。
 しかも、西室氏はトール社を日本郵政傘下の日本郵便の子会社としたため、日本郵便は15年以降、買収にかかわる会計処理として毎年200億円級の巨額を償却しなければいけなくなった。15年3月期の日本郵便の最終利益は約150億円だったのに、です」
 しかも、周囲が懸念していた通り、買収後のトール社の業績は低迷。買収した郵政側に物流事業のノウハウがないため、その経営をまともにマネジメントすることもできない状態に陥った。
当然、晴れて上場した日本郵政グループの株価も振るわないまま「じり貧化」。そして、買収発表からたった2年しか経過していない今年4月、トール社の業績悪化を理由に、日本郵政は4000億円の巨額損失計上に追い込まれたのである。
「いま西室氏の出身母体である東芝が巨額損失に苦しんでいますが、その原因となった米原発会社ウェスチングハウス社の巨額買収に当事者としてかかわっていたのが、東芝会長だった西室氏でした。その意味では、今回も同じ構図が繰り返されているように見えます。
 西室氏の経営手腕には、ほかにも疑問に感じる部分がありました。それは就任早々のこと、米大手生保アフラックと提携して、アフラックに全国の郵便局の窓口でがん保険を独占的に販売できるようにしたのです。これはグループ会社のかんぽ生命の収益を圧迫する施策だったため、かんぽ生命を民業圧迫と批判していた米国政府に配慮したものだと囁かれました。そもそも、郵政民営化は94年以降、米国が毎年の対日年次要望書(正式名称「日米間の新たな経済パートナーシップ」)で求めていたもので、その郵政民営化委員会の委員長だったのが西室氏でした。
 いずれにしても西室氏はグループの利益を失するような手を打ってきた。西室氏は昨年、体調不良を理由に社長職を退任しましたが、その責任は重大と言わざるを得ない。そんな西室氏を推薦した安倍晋三首相、菅義偉官房長官にも『任命責任』がある」
 西室氏の後任に就いた長門社長も、赤字転落を発表した4月25日の会見で「トール社買収の狙いは正しかったといまでも考えている」と語り、自らの責任については6ヵ月間の役員報酬20%カットで済ませた。
稲村氏は言う。
「私は5月8日に、著書『「郵貯マネー」はどこへ消えたか』の共著者である菊池英博氏との連名で『辞任勧告書』を長門氏に送りました。長門氏はトール社の実態を知りながら、適切な経営指導もせずに放置してきたのだから、経営者失格です。トール社の4000億円もの損失処理に使われる原資は元々、国民の資産。役員報酬のわずかな減額だけで責任を取ったふりをするのは国民への背信行為で、絶対に許せません。西室氏も病気療養中というが、代理人を通じて責任についてコメントを発表することぐらいはできるはずです」
 赤字発覚直後、日本郵政の株価は急落し、1200円台にまで落ち、上場前の公募価格(1400円)を大きく下回っている。株主たちはこの怒りを、いったいどこにぶつけたらいいのだろうか

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