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暴虐の100周年

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アメリカの終わり 山中泉著

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ブログ再開

ブログを再開することにしました。

これまで、フェイスブックや、その他SNSに投稿してきましたが、その外国製のメディアが、中立で自由なめでぃあではなく、検閲もどきを始めていますから、危機感を覚えています。当方は、個人攻撃や、いわゆるヘイトスピーチなどを厳に注意していますが、そのSNSは、寡占状態にあることから、自ら一方的な見方を金科玉条に押し立てて、一週間停止などと、規制をかけてきます。外国の会社ですから、日本の法の支配の枠外にあることを利用して、問答無用に規制を課してきています。

自由な言論の空間をまもるために、ブログを再開することにします。

どうぞ、よろしくお願いします。

 

 

 

 

Economic Murder

週刊現代の5月17日号に特集記事として掲載された。備忘録代わりに、ご参考まで。それにしても、西室泰三氏は雲隠れしたのか、巨額損失があってもメディアの力をしても消息がつかめない。実に不思議だ。

以下文字おこし。

「私が現役だった頃は、郵便局では1円でも懐に入れたら懲戒免職になっていました。サラ金に手を出した職員がいれば、それも解雇した。郵政公社時代からの職員には、国民の大事なおカネを預かっていることへの強烈な自負がありました。だから、おカネに関する不祥事には非常に厳しく対応してきたのです。それが、どうしたものでしょうか。いまの日本郵政は4000億円も損失を計上したにもかかわらず、長門正貢社長をはじめ経営陣は誰一人としてまともに責任を取ろうとしません。巨額損失の元凶である西室泰三・元社長にいたっては、一切お咎めなしです。彼らが失った4000億円は、もとはと言えば国民からお預かりした大事なおカネ。それを浪費しながら、のうのうとしている首脳陣の姿は見ていられるものではない。特に巨額損失の全責任を負うべき西室氏に対しては怒りを感じます」
 そう語るのは総務省政策統括官から日本郵政公社常務理事に転じ、日本郵便副会長などを歴任した稲村公望氏(69歳)だ。

日本郵政はこのほど、豪物流子会社トール・ホールディングスの業績悪化から、約4000億円の損失を計上すると発表。この巨額損失によって、2007年の郵政民営化以来、初の赤字に転落する。
そのトール社は、日本郵政が15年に約6200億円で電撃買収した会社。この買収劇こそ、当時社長だった西室氏の鶴の一声で決まったものだった。
「東芝社長や東京証券取引所会長を歴任してきた西室氏が安倍政権から請われて日本郵政社長に就いたのは、いまから4年前の13年のことです。西室氏は就任時からさっそく、『世界全体を俯瞰した物流業を作り上げる』『日本の金融業界、物流業界の最先端を行く企業になる』と語っていました」
西室氏が物流事業への参入を強く主張したのには、郵政グループの株式上場という重要なミッションを抱えていたという背景事情があった。
「当時、郵政の株は政府が保有していましたが、上場の際にはその一部を売却して、東日本大震災の復興財源に充てることになっていました。上場時に投資家にたくさん株を買ってもらうため、西室氏は郵政が将来にわたり成長していくバラ色のシナリオを描く必要があったのでしょう。
とはいえ、郵便事業というのは急速に成長していくビジネスではない。そこで西室氏は、内需企業であった日本郵政に、『物流参入』や『グローバル化』という新しい成長戦略を売り物として加え、箔をつけようとしたのだと思います」
 実際、西室氏は就任当初から国内外の物流各社の買収戦略を開始。国内勢の佐川急便、日立物流なども買収対象として検討に入った。
しかし、そんな西室氏の前のめりの熱意とは裏腹に、当初から郵政社内には物流事業への参入に反対の声があったという。
「理由はとても単純で、そもそも郵便会社が物流に参入してもビジネスモデルとして成り立たないからです。なぜかと言うと、郵便は10~100gほどの軽いものや、単価が安いものを数多く取り扱う商売。一方の物流のビジネスはその正反対で、重くて一つ当たりの単価が高いものを運んで儲ける。つまり、郵便と物流はビジネスが根本的に違うのです」
実際、買収したトール社にしても、主に輸送しているのは豪州産の鉱石であり、郵便とはまったく別物だった。
「しかも、郵政社員には物流事業のノウハウもないので、うまくいかないことは目に見えていた。私が日本郵政公社の常務理事時代にも海外物流会社と提携する話が浮上したが、当時の生田正治総裁に『この会社と組むべきではない』と進言し、結局ご破算にした経緯もある。
アメリカでも郵政会社は郵便に特化し、物流に手を出していない。これが世界の常識。ところが西室氏を始めとする電機メーカーや銀行出身の日本郵政首脳陣は、その違いすらよくわからず、無理矢理に突っ走った」
 当時、上場の目途とされていたのは15年秋。刻一刻とその「期限」が迫ってくる中、西室氏は一部の幹部だけを集めて買収チームを組成してプロジェクトを進めたが、その過程では掟破りの一手まで断行している。
「トール社を買収するには巨額の資金が必要だったので、その資金捻出のために『ウルトラC』をやったのです。そのスキームというのは上場前の14年に実行されたもので、親会社の日本郵政が所有するゆうちょ銀行の株式を、ゆうちょ銀行に買い上げさせるもの。ゆうちょ銀行に自社株買いをさせて、1兆3000億円ほどあったゆうちょ銀行の内部留保を日本郵政に吸い上げさせた。自社株買いは制度的に認められているとはいえ、このような大規模な『資金還流』は本来なら許されないものです」
西室氏がこのように強引に進めてきたトール社買収が、世間にお披露目されたのは15年2月。西室氏は発表会見で、「必ず(買収)効果は出る」と胸を張って見せた。
しかし、そんな楽観論に水を差すように、この巨額買収をめぐっては、発表直後からさっそく辛辣な意見が噴出した。
「たとえば英フィナンシャルタイムス紙は、約6200億円という買収価格について、『49%のプレミアムをつけた大盤振る舞い』と報じました。つまりは、郵政の経営陣はトール社の企業価値を過大に評価しすぎだと批判したわけです。実際、当時すでに鉄鉱石など資源価格が下落し始め、トール社の業績には先行き不安が出ていた。
 しかも、西室氏はトール社を日本郵政傘下の日本郵便の子会社としたため、日本郵便は15年以降、買収にかかわる会計処理として毎年200億円級の巨額を償却しなければいけなくなった。15年3月期の日本郵便の最終利益は約150億円だったのに、です」
 しかも、周囲が懸念していた通り、買収後のトール社の業績は低迷。買収した郵政側に物流事業のノウハウがないため、その経営をまともにマネジメントすることもできない状態に陥った。
当然、晴れて上場した日本郵政グループの株価も振るわないまま「じり貧化」。そして、買収発表からたった2年しか経過していない今年4月、トール社の業績悪化を理由に、日本郵政は4000億円の巨額損失計上に追い込まれたのである。
「いま西室氏の出身母体である東芝が巨額損失に苦しんでいますが、その原因となった米原発会社ウェスチングハウス社の巨額買収に当事者としてかかわっていたのが、東芝会長だった西室氏でした。その意味では、今回も同じ構図が繰り返されているように見えます。
 西室氏の経営手腕には、ほかにも疑問に感じる部分がありました。それは就任早々のこと、米大手生保アフラックと提携して、アフラックに全国の郵便局の窓口でがん保険を独占的に販売できるようにしたのです。これはグループ会社のかんぽ生命の収益を圧迫する施策だったため、かんぽ生命を民業圧迫と批判していた米国政府に配慮したものだと囁かれました。そもそも、郵政民営化は94年以降、米国が毎年の対日年次要望書(正式名称「日米間の新たな経済パートナーシップ」)で求めていたもので、その郵政民営化委員会の委員長だったのが西室氏でした。
 いずれにしても西室氏はグループの利益を失するような手を打ってきた。西室氏は昨年、体調不良を理由に社長職を退任しましたが、その責任は重大と言わざるを得ない。そんな西室氏を推薦した安倍晋三首相、菅義偉官房長官にも『任命責任』がある」
 西室氏の後任に就いた長門社長も、赤字転落を発表した4月25日の会見で「トール社買収の狙いは正しかったといまでも考えている」と語り、自らの責任については6ヵ月間の役員報酬20%カットで済ませた。
稲村氏は言う。
「私は5月8日に、著書『「郵貯マネー」はどこへ消えたか』の共著者である菊池英博氏との連名で『辞任勧告書』を長門氏に送りました。長門氏はトール社の実態を知りながら、適切な経営指導もせずに放置してきたのだから、経営者失格です。トール社の4000億円もの損失処理に使われる原資は元々、国民の資産。役員報酬のわずかな減額だけで責任を取ったふりをするのは国民への背信行為で、絶対に許せません。西室氏も病気療養中というが、代理人を通じて責任についてコメントを発表することぐらいはできるはずです」
 赤字発覚直後、日本郵政の株価は急落し、1200円台にまで落ち、上場前の公募価格(1400円)を大きく下回っている。株主たちはこの怒りを、いったいどこにぶつけたらいいのだろうか

Disappointment

数年前の記事

■中国に擦り寄るアメリカ

卓越した演説で登場したオバマ大統領であったが、アメリカ合衆国の国力が弱体化した現在においては御用済みの気配である。辛うじて医療保険と金融規制法を議会通過させたが、所詮それは骨抜き法案であり、変革(チェンジ)を求めた支持者たちは失望し、それはもはや絶望に近い。

オバマ大統領の参謀は、地元シカゴや選挙支援者の論功行賞の職を別にすれば、元クリントン政権の側近が大量採用されている。ここから、ヒラリー国務長官の隠然たる影響力が伺える。そのため、オバマ政権の中国に対する態度は、クリントン大統領時代と似通っている。

 オバマ政権は、中国海軍が海外に展開することを黙認し、チベットやウィグルの人権問題も口にしなくなった。ミャンマーでは、インド洋進出の道路・港湾が建設されているが、一言も苦言を呈することがないばかりか、タイの争乱を黙認し、独立国としてのタイの尊厳を尊重する姿勢など全く見られない。G20でのIMFの支援増額、北朝鮮問題の六カ国協議の丸投げ、人民元の交換比率変更など、北京にすり寄る態度ばかり見られる。武器の台湾輸出、ダライラマとの会見、グーグルに対す検閲などの問題でも、アメリカ合衆国の国是である人権という概念をすっかり忘れたかのような対応である。

 

■日本離れするアメリカ

 他方で、日本に対するアメリカの態度もまた、クリントン大統領時代のそれに似通ってきている。

郵政民営化などにより日本の国民資産が外国金融機関を経由して、上海や沿海の都市に摩天楼を林立させる構図が見られる。北京オリンピックと上海万博に至る過程は、米国の戦後の対日占領政策と近似する。

ガイトナー財務長官は、在京の米国大使館で勤務した経歴があるが、日本国民の資産を海外移転するために、いかなる関与を行ったのかなども検証すると興味深いであろう。

いずれにしても、米中関係は相互に戦略パートナーとする新戦略同盟の関係になっている。オバマ大統領は、ミルトン・フリードマンと国際金融勢力の影響下で米国の工場と化した北京政府と、世界規模の諸問題において協調を維持することを明確にしている。もはやそこに、日米同盟の入り込む隙間などない。ソマリア沖での海賊対策の艦船を、海上自衛隊から人民解放軍に差し替えたのも、その一端である。

 

■無作為に陥る日本

オバマ政権内では、日米同盟の空洞化に対する警鐘を鳴らさず、従来の主従関係を維持するだけの同盟論が大手を振ってまかり通っていた。グァムへの移転は、内々の了解が達成されていないのか、太平洋の勢力分割が話されたのではないか、普天間基地の移設は日本の安全保障に寄与するのか、台湾海峡事件の時のように空母を派遣してほしいとする北京内部の分裂の担保のためなのか、新戦略同盟の強化の為に利用されているのではないか、など、何ら疑いの声が上がることはなかった。

韓国哨戒艦の沈没事件においても、トンキン湾事件や、イラクの大量破壊兵器の有無の様に謀略をやってのける過去の履歴を疑いもしなかったようだ。

 とはいえ、アメリカ内に知日派が存在することもまた事実である。「自立・自尊の外交や北方外交を展開した祖父を持つ鳩山総理であっただけに、抵抗すべきであった」と吐露した対日政策関係者OBがいたことを記録にとどめておきたい。また、ロン・ポール共和党上院議員とバーニー・フランク下院議員・歳出委員長は、米国の国防予算は天井を破っており、普天間は閉鎖すべきであると公式に発言していた。

日本が天文学的に巨額な米軍費用を負担していることを、ワシントンで喧伝すべきであるが、霞ヶ関の外交出先は、自立・自尊の日本外交を内包した鳩山政権を支援することなく、岡田外務大臣からして小間使いに過ぎなかった。

 

■日米同盟を再構築せよ!

アジア太平洋において、日本以外に米国の戦略的な同盟国となれる国はない。米国の政策を心底から支持することのできるのは、大東亜戦争を闘い、太平洋で米軍と死闘を尽くした日本だ。それにも関わらず、米国経済・社会の弱体化が深まる中で、アジアの力関係を変化させ、北京の帝国の台頭を許し、日本の常任理事国入りに反対したのは、米国の一部拝金勢力と在京の追従者である。

アメリカの中間選挙を契機にして、日米双方で、政治・外交を再編成し、対等互恵の日米同盟を再構築することは不可能ではない。米国は、65年も経つのだから、日本において占領軍の横柄な態度はやめるべきだし、東京裁判、原爆投下などの一方的な歴史を見直す良い機会だ。またそれは、日本においては、アメリカに依存する現在の体制から脱却し、自立自尊の将来戦略を描き、国体の本義を追求して取り戻す救国の機会にもなるだろう。

 

 

Privatization and Corruption

稲村公望先生インタビュー「アフラックに占拠された郵便局」 

●アフラックに屈した安倍政権

── 2009年の民主党政権の誕生によって、郵政私物化の流れは一旦止まりましたが、2012年末に第二次安倍政権が発足すると、再び私物化の流れが強まっていきました。

稲村 安倍政権発足直前、日本郵政の斎藤次郎社長は坂篤郎副社長を後任社長に昇格させました。ところが、官房長官に内定していた菅義偉氏が「財務省出身者によるたらい回し人事だ」と批判しました。菅氏は、一貫して郵政民営化推進論者と目されてきました。2012年4月に郵政民営化法改正案が可決さ、持ち株会社の日本郵政による金融子会社2社の株式完全売却が、「義務」から「努力規定」に改められましたが、これに小泉進次郎氏、中川秀直とともに反対票を投じたのが菅氏でした。

 結局、坂氏は2013年6月に退任させられ、後任の社長に就任したのが西室泰三氏です。西室氏は郵政民営化委員会の委員長も務めていたので、郵政持ち株会社の社長を務めるのは、明確な利益相反です。

 東西冷戦時代の1987年に「東芝機械ココム違反事件」が起こりました。東芝は米国議会による制裁内容を和らげるための、空前の規模のロビー活動を展開したとされています。西室氏は1992年から東芝アメリカ社副会長を務めてきた人物で、ロビー活動を通じて米政財界中枢に人脈を築いたと言われています。

 2013年7月、西室社長がぶち上げたのが、米アメリカンファミリー生命保険(アフラック)との、がん保険分野での提携でした。この提携によって、全国2万の郵便局と、かんぽ生命の79の直営店舗でアフラックのがん保険を販売することになりまし。まさに、郵便局はアフラックに占拠されてしまったのです。アフラックの狙いは、がん保険市場の制覇にとどまらず、わが国が誇る国民皆保険の崩壊を待って、混合診療に関連する保険など様々な保険商品を、郵便局で独占的に販売することだと見られています。

 そもそも、アメリカ企業は、ゆうちょ、かんぽの郵政マネーや不動産資産に狙いを定めていましたが、アフラックとの提携によって、郵便局のネットワークが外資に独占される道を開いてしまったのです。

 アフラック日本代表を務めてきたのは、USTR(米通商代表部)日本部長、在日米国商工会議所会頭などを歴任してきたチャールズ・レイク氏です。彼は、まさに日本の市場開放を要求するアメリカ企業の先頭に立ってきた人物です。西室氏は日米財界人会議議長を務め、古くからレイク氏と関係を深めていました。

 アフラックが警戒していたのは、かんぽ生命が独自のがん保険を開発し、市場を抑えることでした。こうしたアフラックの懸念に配慮するように、2013年4月、麻生太郎副総理兼経産相は、かんぽ生命について「当分の間、新しい保険商品は認可しない」と述べました。

 しかも、TPP交渉への参加を急ぐ安倍政権は、2013年8月からアメリカとの並行協議を開始し、保険分野の非関税障壁について一方的な妥協を強いられていたのです。日米政府が交わした書簡の附属文書には、「日本国政府は…民間のサービス提供者よりも、かんぽ生命による保険サービスの提供について有利となるような競争条件を生じさせるいかなる措置(保険業法の改正も含む)も採用せず、又は維持しない」と書かれているのです。まさに、TPPを先取りする形で、安倍政権はアメリカの保険会社の要求に屈していたということです。

 

●舞い戻ってきた郵政私物化の張本人・横山邦男

── 西室社長は2016年3月に退任しました。

稲村 ところが同年6月28日、西川善文社長時代の郵政私物化の張本人である横山邦男氏が、日本郵便社長に就任しました。

 横山氏は、三井住友銀行出身の西川腹心4人組のリーダー格で、2006年2月から2008年10月まで日本郵政専務執行役を務めていました。その間、郵政プロパーの意向を無視して、かんぽの宿売却未遂など郵政事業経営に対する背信行為を行いました。

 民主党政権時代の2010年1月に総務省に設置された日本郵政ガバナンス検証委員会(委員長:郷原信郎)の「日本郵政ガバナンス問題調査専門委員会報告書」には、横山氏の背信行為が細かく記録されています。

 当時サブプライムローン問題で不動産市況は冷え込んでおり、専門家はかんぽの宿の処分の中止や延期を助言していました。ところが、横山氏らの執行部は、これらの助言を無視し、2008年12月に不当に低価でオリックス不動産との一括事業譲渡契約を締結してしまったのです。横山氏とともに、かんぽの宿処分で動いていのは、オリックスが出資する不動産会社「ザイマックス社」から西川社長に引き抜かれた伊藤和博執行役だとされています。横山氏と伊藤氏は、民主党、社民党、国民新党の3党によって、特別背任未遂罪で東京地検に告発されました。

 また、横山氏は日本郵便のゆうパックと日通ペリカン便との統合による大損失を発生など、経営に多大の損害をもたらした張本人です。さらに横山氏は「みなし公務員」の身分でありながら、三井住友銀行から住居の提供を受けていたとして国会で追及されました。

 2009年10月に西川氏が日本郵政の社長を辞任すると、横山氏も追われるように郵政を去りました。それから7年、郵政グループから永久追放されるべきA級戦犯である横山氏が、日本郵便社長として舞い戻ってきたのです。この信じ難い人事を主導したのは、菅義偉官房長官ともささやかれています。

 「日本郵政ガバナンス問題調査専門委員会報告書」で指摘された数々の疑惑は、未だに放置されたままです。いまこそ、郵政私物化の闇を暴かなくてはいけない。

 

●豪物流会社トール社買収失敗の責任を取れ!

── 日本郵政は4月25日に、2017年3月期の連結純損益が400億円の赤字に転落する見通しだと発表しました。

稲村 2015年に日本郵便を通じて買収したオーストラリアの物流子会社トール・ホールディングスの業績が悪化したためです。買収価格6200億円と実際の資産価値の差額に当たる「のれん代」など4003億円の減損損失を一括で計上したのです。減損処理を主導したのは、横山邦男社長だとされています。

 もともと、トールの買収は、当時の西室社長が強引に決めたものです。日本郵政は、上場に向けて、株価を上げるためにお化粧をする必要があったのです。また、西室氏は就任当初から国内外の物流企業の買収を検討していました。佐川急便、日立物流などの買収も検討しましたが、いずれも実現が困難だったため、トールに目をつけたのです。

 しかし、トール買収には一部の社外取締役から反対意見もありました。高過ぎる買収額だけが理由ではなく、国内と海外の物流事業の相乗効果は薄いという意見もありました。そもそも、郵便事業は、軽くて、単価の安いものを大量に扱います。これに対して、物流は重くて一個当たりの単価の高いものを扱います。ビジネス・モデルが真逆なのです。物流のノウハウを持っていない郵便社員に経営できるはずがないのです。にもかかわらず、西室氏は強引に買収を進めた。

 『フィナンシャルタイムズ』は、当時から、この買収が「49%のプレミアムをつけた大盤振る舞い」と批判していました。しかも、『エルネオス』によると、東芝はトールにシステムを納入していたという情報があります。それが事実なら、利益相反を疑われても仕方がありません。いずれにしても、西室氏の責任は重大です。

 長門正貢社長をはじめとする現経営陣の責任も重いと言わざるを得ません。長門社長は、トール買収当時、日本郵政の役員に就任しており、トールの業態を十分知る立場にありました。しかも、2016年6月に日本郵政社長に就き、トールを直接指導すべき立場にあったのです。ところが、トール社に対して適切な経営指導をすることなく、4000億円の損失を一括償却するという乱暴な処理をしたのです。その原資は、長年にわたって蓄積されてきた国家の財産であり、国民の資産です。それを無視し、役員報酬をわずかに減額しただけで責任を取ったふりをする態度は、日本国民に対する背信行為であり、国民として断固として許しがたい。

 私は、『「ゆうちょマネー」はどこへ消えたか』の共著者である菊池英博氏とともに、5月8日付で、いま述べた趣旨で、長門社長に対して辞任勧告書を提出しました。

 いまこそ、郵政私物化の実態にメスを入れ、郵政の在り方について根本から見直すべきです。

H,E.Dr. Mahathir

『月刊日本』2017年9月号

マハティール・モハマド×稲村公望「戦争は解決策にならない」 

 マハティール氏は、1981年から2003年までの22年間にわたりマレーシア首相を務め、同国の国際的な地位を飛躍的に上昇させた。今年設立50周年を迎えた東南アジア諸国連合(ASEAN)の拡大に力を尽くすとともに、東アジアの団結を訴えてきた。首相引退後も国内外で活発な発言を続けている。アメリカの衰退、中国の台頭、朝鮮半島情勢の緊迫化の中で、日本外交はどうあるべきなのか。6月上旬、来日中のマハティール氏に聞いた。 

戦争は問題の解決にならない

稲村 南シナ海などでの中国の活動が活発になっています。これに対して、2013年には、フィリピンのアキノ前政権が、南シナ海における中国の主張や行動は国連海洋法条約違反だとしてオランダ・ハーグの仲裁裁判所に提訴しました。仲裁裁判所は2016年7月、中国が設定した「九段線」には「法的根拠はない」と認定する裁定を公表しました。

マハティール 仲裁裁判所への提訴というフィリピンのやり方は、適当ではありませんでした。中国と同じテーブルに座って交渉をすることが大切です。マレーシアの場合も、南シナ海のスプラトリー諸島の領有権を主張しています。我々は、中国とテーブルにつき、中国の補給線を侵す意図はないことを彼らに説得することが重要です。

稲村 1967年に東南アジア諸国連合(ASEAN)が創設された背景にも、中国の台頭がありました。マレーシアの国境でも中国共産党の活動がありました。

マハティール ASEANが創設された時代と現在とでは状況が違います。当時、中国は単なる発展途上国の一つでしたが、現在中国はアメリカに次ぐ経済大国となりました。人口は、なんと14億人にも達しています。さらに中国は軍事的にもアメリカに対抗するような力を持っています。

 東南アジアは、中国と2000年の付き合いがあります。しかし、我々は中国に支配されたことはありません。ところがいま、中国は途方もなく強大化し、アジア各国はそれを不安に思っています。この地域に巨大な軍事力は必要ありません。アメリカが軍艦を派遣しても、問題の解決にはなりません。

 好むと好まざるとにかかわらず、中国とアメリカ、日本との対立は拡大していくでしょう。そうなれば、中国との間で紛争が起きる可能性があります。それは大きな戦争につながりかねません。つまり、戦争は解決策にはならないということです。対話によって、対立を抑制するしかありません。

 経済協定などに中国を関与させることが重要です。それが、中国が軍備の増強や政治支配の強化よりも、経済に目を向けさせることにもつながります。

 

核戦争が起きれば、全世界が被害を受ける

稲村 現在、核・ミサイルの開発を推進する北朝鮮とアメリカの緊張が高まっています。かつて、36年にわたって朝鮮半島を統治した日本は、アメリカと北朝鮮が対話のテーブルに着くことを後押しすべきではないでしょうか。日本は、東アジアの平和と安定のために指導力を発揮すべきだと思います。

マハティール 日本と朝鮮半島との間には、長い付き合いがあります。現在、北朝鮮の核・ミサイル開発が問題になっていますが、経済制裁や軍艦の派遣で問題は解決しません。外交努力なしには、平和は達成されないのです。日本は、軍事的な手段によらず、国際紛争を解決するために指導力を発揮すべきです。

稲村 アメリカは北朝鮮に対する経済制裁を強めていますが、歴史を見ても、経済制裁によって問題が解決されたことはありません。かつての対日石油禁輸も、結局日本を戦争に追いやっただけでした。北朝鮮は、自らの生き残りのために必死のように見えます。

マハティール 北朝鮮は、核戦争でも通常戦争でも問題は解決しないことを、きちんと理解すべきです。いま核戦争が起きれば、その被害の大きさは広島と長崎の原爆の比ではありません。全世界に放射能が広がり、全世界が被害を受けることになります。通常兵器による戦争でも大被害になります。もはや戦争を起こしてはならないということです。 

監視カメラを増やしてもテロは防げない

稲村 テロの問題も、世界の平和と安定にとって脅威です。

マハティール マンチェスター、ロンドン、パリなど各地でテロリズムが発生しています。これに対してヨーロッパの人々の怒りが高まっており、彼らはセキュリティー対策を強化してテロと戦おうとしています。しかし、それでは問題を根本的に解決することはできません。

 マレーシアにはテロに勝利した経験があります。テロリストに対する心理作戦を展開したのです。テロを支持している国民の心を得るために努力したのです。銃や監視カメラを増やしたところで、テロをなくすことはできません。テロを起こそうと考える人の心を変えるしかありません。

 普通の人間が次々に自爆テロを行っています。攻撃を受けた人々は、怒りと不満を溜めています。怒りの連鎖を断ち切らなければなりません。忘れてはならないのは、イラク、イエメン、シリアに対する空爆によって、テロによるよりも多くの命が奪われたという事実です。

 イスラエルとパレスチナの問題も解決されていません。この問題において、日本は一方の肩を持つべきではありません。日本は双方に対してテーブルに着いて対話させることに努力すべきです。

稲村 2年前の本誌インタビューにおいて、あなたは「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)はマレーシアの『大安売り』になる」と、明確にTPPに反対しました。アジアの哲人政治家としての叡智を感じるコメントでした。そして、幸運なことにトランプ政権が誕生し、TPPからの離脱を決定しました。

マハティール 多国間の経済協定という考え方自体は悪くありません。しかし、TPPは、強者による一方的な枠組みでした。政府を訴えて巨額の賠償を得るという権限を、多国籍企業に、一方的に与えたことが問題でした。多国籍企業が各国の政府の上位に立ってしまうということです。

 TPPには米国や多国籍企業に有利な内容が盛り込まれていました。アメリカが離脱した今、TPPの問題点が改善できれば、中国がそれに加わる可能性も出てくるでしょう。

 貿易をめぐっては、各国がそれぞれに独自の問題を抱えています。したがって、貿易交渉においては、相互に相手を尊重する必要があります。

稲村 国家指導者として、あなたはどのような信念を持って、国家の発展に取り組んできたのでしょうか。

マハティール 人間の力も含め、国が持っている資源をどう効果的に使うかが重要です。だからこそ、私は1981年に首相に就任するとすぐに、イギリス一辺倒の外交路線を転換し、「ルックイースト(東方を見よ!)」政策を打ち出し、日本や韓国などの東アジア諸国から、労働倫理や経営手法などを学び、マレーシアの発展に役立てようとしたのです。

(構成 坪内隆彦)

Kuroshio 187

日本郵政民営化の闇を暴く  下

●ブログ「岩崎芳太郎の『反・中央 集権』思想」の一部に「JAL再建 策にモノ申す」 、副題を「日本航空債 権問題は小泉竹中改革の延長戦」と する論説記事が載っている。岩崎芳 太郎氏は鹿児島市に本社を置く岩崎 産業の社長で、二○一三年一一月八 日から鹿児島商工会議所の会頭を務 めている。二○○九年には『 「 地方を 殺すのは誰か』と題する単行本をP HP研究所から出版して「事業と社 会正義を守るため、次々と降りかか ってくる火の粉を払い、中央集権思 想と新自由主義に敢然と立ち向か う」ことであると主張する地方経営 者の論客である。そのブログの中の 「 郵政民営化の欺瞞」と題する論説に は、 「国全体を対象としたネットワー ク事業は民営化にそぐわない。民営 化政策の絶対的矛盾を明らかにす る」との副題を付け、 「郵政不動産払 い下げ問題」という論説には 「 それは 明治政府の『官有物払い下げ事件』 を上回る大疑獄事件だ」との副題を 付す。筆者は、黒潮文明論の紙面を 拝借して、郵政民営化の闇の部分を 暴くべく三頁に拡大して拙論を提示 しているが、今回は、七月二二日の 早朝に岩崎社長に直接電話して前掲
ブログの郵政民営化部分からの引用 と転載を申し出て、快諾を得た。ち なみに、平成元年の七月二二日は、 長男の稲村周祐が薬効甲斐無く新宿 の榊原病院で息を引き取った命日だ から、筆者は遠慮することもなく、 優れた論説を今もブログに残してい る岩崎社長に敬意を表わしながら、 気後れ無く電話をしてお願いするこ とができたように思う。 郵政不動産払い下げ問題の論説は 「かんぽの宿払い下げ──不正の構 図を暴く」との見出しが付いている が、まずその核心部分を引用しよう。 ●「なぜふつうに営業可能なかんぽ の宿がたった一万円で売り飛ばされ そうになったのでしょうか? 一定 の価値のある国民の財産でも、不良 債権の評価は低い」 、このロジックで 国民の財産は収奪されてきたのです。 ◎竹中氏が郵政事業を「不良債権」 と呼びたがる理由 二○○九年初めのかんぽの宿の払 い下げ問題のおかしさは、だれが見 てもわかることですが、鳩山総務大 臣にストップをかけられなければも う少しで国民の大切な財産は、格安 でオリックスに下げ渡されてしまう ところでした。なぜこんなバカなこ
とが起こってしまうのか? それを 理解するためには、ユダヤやアング ロサクソンの金融資本が日本に持ち 込んだ弱者からの収奪を正当化する ためのロジックである「減損会計」 や「収益還元法」を用いたデューデ ィリジェンス ( 資産評価 ) の手法をか んぽの宿に適用された背景を理解す る必要があります。今回は、とても 簡単な説明を試みてみましょう。 (中略)竹中氏は郵政民営化につい て、産経新聞紙上で「不良債権処理 はやってよかった。やらなければ大 変だった。郵政民営化では二一九の 隠された子会社を洗い出し、利権を むさぼっている人の既得権益がなく なり、納税も増えた。時間はかけな ければならないが成果は表れてい る」と語っています。さらに、赤字 の出ているかんぽの宿を早期に売却 したのはよいことだと述べているの ですが、私には全く彼の言っている ことの意味はわかりません。そもそ も、郵政事業というのは、不良債権 なのでしょうか? そうではないは ずです。しかしそれをあえて「不良 債権だ」と強弁しているのは、 「一定 の価値のある国民の財産であっても、 不良債権であるから、減損会計とか 収益還元法といった不良債権処理の 時に使われた評価方法を使って、安 く売却してもよいのだ」という収奪
のロジックを働かせるために敢えて に言っているだけだとしか思えませ ん。それはモノの評価の中で、特殊 な状況のときにだけ使われる「安く 買いたたくための特殊な方法」であ って、一般的な評価方法とはいえな いはずです。郵政事業に不良債権の レッテルを貼ることによって、一億 二〇〇〇万人の国民の目から見て信 じられない安値でかんぽの宿を売却 しようとしたことを、竹中氏は本当 に正当なことだと自信を持って言え るのでしょうか。もっと不思議なこ とは、二一九社の郵政ファミリー企 業が不良債権なのであれば、どうし てその中の中核会社である日本郵便 逓送の株の公開買付に二四〇億円も の巨費が必要だったのでしょうか? ぜんぜん話に筋が通っていませんね。 ◎リンゴ畑をむりやりたたき売りさ せられたようなもの 簡単なたとえ話をすると、こうい うことだと思います。リンゴ畑にリ ンゴがなっているのですが、ちょっ と作柄が悪くて傷んでしまっていま した。 「このリンゴは、そのままにし ておくと一〇日くらい後には腐って しまうので、一刻も早く売りましょ う。それも安く売らないと買い手が つきませんよ」と他人から言われて 無理矢理に畑ごと売却されてしまっ たような無茶な話です。リンゴが痛
んでいたからといって、それはたま たまその農家が下手だっただけで、 他の人が同じ木でリンゴを作ればま ったく立派なリンゴがとれるのに、 売らなくてよい畑まで含めて売らせ てしまったわけです。リンゴ畑をむ りやりたたき売りさせられたような もの。こんなことを、関係者全員 ( 郵 政会社経営者、第三者委員会、天上 がりした民間人 ) が正当化しようとし ているというのは、私には全く理解 できないことです。このケースが正 当化されるのは、畑の持ち主がどう しても明日にでもキャッシュが必要 だとか、すぐにでも売却しなければ 銀行債務の個人保証を待ってくれな い切羽詰まった状況である場合だけ です。 しかし日本国が、郵政の財産を明 日にでも売らなければならない状況 に追い詰められることなどありえな いことです。しかもリンゴ畑の「土 地」を売ったことになっているので すが、買った人はそのままリンゴ農 家を続けていて、翌年には立派なリ ンゴを収穫しているのです。つまり 「かんぽの宿は郵政事業の本業では ないからやめなさい」と言われて売 却したのですが、買った人はそのま まホテルを続けて収益を上げている というのが現状です。ということは、 かんぽの宿は竹中氏の言うような
「不良債権」では全然なかったわけ です。それなのに、不良債権として 減損会計や収益還元法をといったテ クニックを駆使して安い価格で売る のはまったく筋の通らない話でしょ う。そうした評価方法は収奪を正当 化するためのロジックでしかありま せん。しかも、オリックスに売られ るはずだった〇九年初めのかんぽの 宿七九件一括売却のケースでは、 「リ ンゴ農家を続ける人は他にないので オリックスに買ってもらう」 、つまり オリックスがかんぽの宿を存続させ ることを前提にして従業員も引き取 ることになっていたわけですが、契 約書の上では雇用契約は一年しか保 証されておらず、 「オリックスは従業 員を一年後に解雇してもよい」とい う契約になっていたようです。まっ たくもってひどい話です。 ◎当事者しかいない第三者委員会に よる「問題なし」報告 これついては日本郵政から依頼さ れた第三者検討委員会が「売却は不 適切なものとは考えない。違法性は ない。 」とした最終報告を出していま す。しかしこの「第三者委員会」メ ンバーは、元日弁連副会長、日本公 認会計士協会副会長、日本不動産鑑 定士協会常務理事の三人のメンバー からなる委員会だったのです。八回 の会議はすべて日本郵政の社内で開
かれ、毎回日本郵政の関係者も出席 していたそうです。何のことはない、 日弁連や会計士協会、不動産鑑定士 協会は、今回かんぽの宿を不当に安 く評価したような収益還元法や減損 会計といったテクニックを駆使して 不良債権処理を外資にたたき売って きた専門職の総本家ですし、ここに 並んだ人たちは彼らの親玉ではない ですか。そんな人が「第三者」とは 片腹痛い。彼らは第三者ではなくて 当事者そのものです。そんな人が、 まともな判断ができると考える方が おかしいでしょう。なぜこのような 形で国家や国民が一部の民間企業に 資産を収奪されなければならないの でしょうか? この一〇年間、地方 の人々や、東京でも役所や大企業、 金融機関に関係のない市井の人たち は、そのようにしてずっと自分たち の財産、すなわち国民の富を収奪を されつづけてきたのです。 (中略)自分がストレートに現ナマ をもらうよりは、自分の組織がなる たけ肥大化し、役所に富を集中させ るように貢献すれば、官僚組織には しっかりした分配の論理が組み込ま れていますから、自分がしかるべき 出世の序列から外れさえしなければ、 最終的には大きな得をすることにな っています。つまるところ官僚が振 りかざす「公」というのは、たいて
い私利につながっていると考えたほ うがよいのです。 日本人がすごく勘違いしている点 だと思うのですが、 「私利」というの は、個人の利得には限りません。役 所は省益を追求して動く組織なので すから。その組織にとっては、「私 利」なのです。福沢諭吉は「私益は いづれ公益となる」という言葉を残 したそうです。最近、公益法人法が 改正されましたが、役所が考えてい る公益というのは、限定的な人たち の利益を守るためのものです。決し てパブリックの利益を考えたもので はありません。 (中略)例えば、問題になった簡保 関連資産のオリックスへの払下げ事 件。これは未遂だったものですが、 固定資産税評価額が八五六億円の土 地・建物等を一〇九億円で売却しよ うとしたものです。ここにはいつも なぜか公認会計士と弁護士と不動産 鑑定士の姿がちらついています。
」 ●岩崎芳太郎氏が経営する岩崎産業 は、傘下の子会社で、郵便物を輸送 する会社を経営していたので、郵便 事業のユニバーサルサービスについ ての見識があり、郵政民営化にとも なって、郵便輸送部門の直営化にと もなう疑惑についても分析と見識を 吐露している。先の「日本航空債権 問題は小泉竹中改革の延長戦」と副題を付けた論説の中に、郵政民営化 の郵便事業の子会社作りの不正につ いて言及している。該当部分を引用 して、マスコミ報道の対象にもされ なかった郵政民営化の闇の一端を江 湖に開示する。 「民営化関連の法律でできた郵便事 業 ( 株 ) という一〇〇%の資本を国が 持つ会社は三六〇億円の資金(当然、 これは国のお金といっていいです が)を使って、郵政官僚の天下り先 であった日本郵便逓送 ( 株 ) 他ファミ リー企業一三社をTOBや、キャッ シュアウトマージャーという手法を 使って、いわゆるM&Aをして、資 本金一八二億五〇〇〇万円の日本郵 便輸送という一〇〇%の子会社を作 りだしました。本来、民営化で非効 率は親方日の丸体質組織を効率的な 事業体にしようとしたにもかかわら ず、実際は逆に親方日の丸体質をそ のまま郵便事業の本体に取り込んで しまったのです。それだけではなく、 実はこの時、このファミリー企業の 株の買収価格の決定について、大き な疑惑があります。例えば、二四〇 億円以上の巨額な資金を使った日本 郵便逓送のTOBについて、一株の TOB価格一九四〇円を決定するに あたって、中立的な第三者機関で売 買価格決定の為のデューデリジェン スさえしていないのです。長銀破綻
処理と相似形のJAL破綻処理策に 問題はないのか自社で「修正純資産 価格法」という手法を使って、一株 二八一八円と評価して、それから八 七八円減額した一九四〇円を自分達 だけで決めてしまっているのです。 当然、八七八円の減額には、何の根 拠もありません。つまり、このパタ ーンは、買手側にいる首謀者が、三 六〇億円という国のお金で買い物を しようとする時、買う物の値踏みを 不正に行ない、売り手側にいる共謀 者が正しい価値評価と異なる恣意的 な価格で即ち不当な値段で、国へ売 り付けることを可能にしたというス キームです。それが、高かったのか 安かったのかは正しいデューデリジ ェンスが行なわれていないのですか ら、わかりませんが……余談ですが、 この日本郵便逓送のTOBでは、悪 事は意外に露呈してしまうものでお もしろい現象が起きてしまいました。 恣意的な値付けが、売り手側の共謀 者の彼らさえ予期せぬ違法行為を作 りだしてしまったのです。どういう ことかというと、三八%を所有する 最大の株主が元々は国家公務員の共 済組合だった郵政共済組合だったの です。そして、この共済組合代表者 は日本郵政のトップだったN氏です。 共済組合代表者は、自分がトップを 務める郵政グループ五社の一社であ
る郵便事業(N氏は同社の取締役で もある)が、正当な方法で資産査定 して一株二八一八円の価値があると 認めている日本郵便逓送の株を八七 八円も安く、郵便事業に売り渡して しまったのです。この代表者は、一 株八七八円の損害を共済組合に被ら せており、これは立派な特別背任と いう犯罪なのです。ちなみに、共済 組合の所有株式数は五二二万株です から、共済組合が被った損害は約四 六億円となります。郵政の関係者だ ったら、東京地検に告訴できますし、 第三者だったら同じく東京地検告発 の対象となります。共済組合の資金 を任されていた某金融機関が運用で 大穴を開けたため、その大損を穴埋 めする目的で共済組合はその株を売 却したという噂もあります。これだ けの疑惑をかかえる「郵政民営化」 です。地検も当然動いてくれるでし ょうし、マスコミが大騒ぎすること 間違いなしです。 」と岩崎芳太郎氏は 書いた。N氏とあるが、それは当時 の日本郵政の社長であった西川善文 氏のイニシャルであることは、岩崎 氏から、直接確かめたことであるが、 マスコミは何等関心を示すこともな く、検察も全く動かなかったばかり でなく、最近は、そのN氏が日本郵 政に乗り込んできた際の四人組の一 人といわれる横山邦男氏が、日本郵便の社長に就任するという奇怪な人 事すら行なわれている。未だに旧聞 に属する話とはなっていない。
●JPエクスプレスは郵政民営化直 後の二○○八年六月に、日本郵便と 日本通運の宅配便事業のペリカン便 を統合する受け皿会社として設立さ れ、件のN氏が関与している。JP エクスプレスは、最終的には、日本 郵便が二○一○年度通期で一一八五 億円の損失を計上した上に、宅配便 事業での黒字化が全く達成されない ままに倒産している。その間の日本 通運の株式のチャートを眺めている と分かることであるが、株式市場は、 日本通運の宅配便の切り離しを悪材 料と捉えたのか、二○○七年の基本 合意から、二○○九年一月の宅配便 からの撤退方針を決めるまでの間、 株価は下落を続けている。更に興味 深いのは、外国資本の投資がこの期 間に頻繁に行なわれ、キャピタルグ ループとゴールドマングループとが 頻繁に大量保有と売却とを繰り返し て利益を稼いでいる。外資は日本通 運のプレスリリースの発表前に売買 を完了する興味深い動きが観察され、 推定でしかないが、何らかのインサ イダー情報を入手していたのではな いかとの見方ができる。郵政民営化 の闇は漆黒の闇だ。 (つづく)

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日本郵政民営化の闇を暴く  中

●株式会社リクルートコスモス(三 件)有限会社CAM7(一三七件) 株式会社穴吹工務店(一件)株式会 社穴吹不動産センター(七件)有限 会社G7ー1(二〇件)有限会社G 7ー2(リクルートコスモスと共同 購入) (二八件)がその内訳である。 ◎郵政資産転がし CAM7はリクルートコスモスが 出資するSPC、G7ー1とG7ー 2は一回目のメンバーだったリーテ ックが出資するSPC。全体を見渡 すと、CAM7が大量購入している ことがわかる。ところがCAM7は この後、会社ごと買収され、リサ・ パートナーズという投資ファンドが 全出資持分を買い取り、会社を丸ご と買い取ることで一三七件の不動産 を手に入れた。そして、リサ・パー トナーズは一三七件のうち一件だけ を個人に売却したあと、一三六件を 別の会社に一括売却している。購入 してからわずか三ヶ月のちに再びバ ルクセールで転売しているわけだ。 リサ・パートナーズが一括売却した 先は有限会社ティー・ジー・ファン ド。聞きなれない名前の会社だが、 有限会社ティー・ジー・ファンドは さらに法人や個人に転売し、ほぼ全
物件を売り抜けている。まるで「郵 政資産転がし」といってもいいよう な見事な転売リレーが成立している。 リサ・パートナーズは旧日本長期信 用銀行出身の井無田敦氏が九八年に 設立した投資ファンドで、取引直前 の〇五年一二月に東証一部に上場し ている。〇六年一二月期の中間決算 書をみると、不動産の主要販売先と して有限会社ティー・ジー・ファン ドが特記されていて、販売額は一三 億七八〇〇万円とある。謎の有限会 社リサ・パートナーズは、CAM7 を会社ごと買収し、手に入れた郵政 物件一三六件を有限会社ティー・ジ ー・ファンドに一三億七八〇〇万円 で転売した。この売却額は、郵政公 社の評価額を基準にすれば、破格の 安さだ。郵政公社の評価では一三六 件の合計は約二三億円。有限会社テ ィー・ジー・ファンドは四割引きで 購人した計算になる。転売でかなり 儲けたのだろうか。そもそもこの有 限会社は何者なのか。連絡をとろう にも、会社のウェブサイトもなくN TTの電話帳にも記載はない。 ◎ゴールドマン・サックスのファンド そこで、同社から不動産を購人し た人を訪ねてみた。東海地方の郵便
局用地を買った個人宅に電話をする と、 「実は、こんな田舎の不動産を東 京の名前を聞いたこともない会社が 本当に所有しているのか不安になり ましてね。うちの主人が束京に出張 したおり会社をこっそり見にいった んです。きちんと表札が掲げてあっ たのでうその話ではないんだなと」 。 東北地方の不動産会社の担当者は、 「値段は妥当だけど、郵政公社が売 った土地の転売ですよね。会社が匿 名を希望しているみたいな変な名前 だし、なにか事情があるのかなとは 思いました」 。話を聞いてわかったの は、東急リバブルが仲介したケース が多いこと、不動産を買った当人も 売り主ティー・ジー・ファンドにつ いての情報はほとんど持ち合わせて いないこと。あらためてティー・ジ ー・ファンドの代表者を調べた結果、 ゴールドマン・サックス・リアルテ ィ・ジャパンの社員であることがわ かった。有限会社ティー・ジー・フ ァンドは米国の大手投資銀行ゴール ドマン・サックスの会社だった。正 確にいえば、投資のための資金はゴ ールドマン・サックス・グループの 不動産投資ファンド「ホワイトホー ル」から出ている。有限会社ティー ・ジー・ファンドは不動産投資する 際の受け皿にすぎないので、資本金 三〇〇万円で専属の社員はいない。
なぜゴールドマン・サックスが郵政 資産の転売リレーなどに参加したの か、問い合わせてみたが、個別取引 については答えられないとのこと。 事情に詳しい金融関係者は郵政資産 の転売では大きな利益はあげていな いともいうが、正確なところはわか らない。リサ・パートナーズ経由で 購入した理由もよく判らない。ファ ンド関係者に意見を求めると、 「ゴー ルドマン・サックスは何か事情があ って表に名前を出したくなかったん でしょうね。リサはゴールドマンへ の転売を前提に買っているはず。こ の世界はみんなお友達みたいなもの で、貸し借りがありますから」 。ティ ー・ジー・ファンドから不動産を買 った人で売買時に「ゴールドマン・ サックス」の名前を耳にした人はい ない。ライブドア事件の余波でファ ンドや外資への風あたりが強かった からだろうか。それにしても、不動 産を売る相手にさえ正体を明かさな いのだから不思議としかいいようが ない。オリックスについても触れて おかなければならない。不動産の分 配状況をみると、G7ー1とG7ー 2が目玉物件を多数手に入れている ことが目を引く。郵政公社は内部資 料でバルクセールの核となる優良物 件一四件を特記しているが、そのう ちG7ー1が四件、G7ー2が六件
を購入している。リーテックの子会 社二社が一四件の優良物件のうち、 何と一〇件までを抑えているわけだ。 不動産登記を調べてみると、ここ でもオリックスが顔を出す。じつは、 G7ー1とG7ー2は郵政公社から 不動産を購入してからおよそ半年後 の一〇月一日、リーテックに吸収合 併されている。オリックスは合併直 前に、G7ー1が郵政公社から買い 入れた優良不動産を担保にして、リ ーテックに融資している。オリック スが共同担保の形で担保にとったの は「旧赤坂一号社宅」 「旧中目黒三丁 目社宅」 「旧沼部三号社宅」など。優 良物件リストの不動産ばかりだ。リ ーテックに吸収される前、G7ー1 の保有物件には三井住友銀行や東京 スター銀行が担保権を設定していた。 融資を肩代わりしてオリックスが入 りこみ、優良物件を担保にしたのだ。 ◎赤坂六丁目プロジェクト オリックスとリーテックはこのあ と関係を深めていく。オリックスが 資金を提供しリーテックが土地を購 入するという共同作業で進めたのが 赤坂六丁目のプロジェクトだ。郵政 公社から手に入れた旧赤坂一号社宅 周辺の土地買い集めに動いたのであ る。旧赤坂一号社宅は日本銀行氷川 寮に隣接する都心の一等地。「(オリ ックスはリーテックに)赤坂だけで
五〇億円以上出してくれている」 (リ ーテック)というから、相当力を入 れたプロジェクトだったのだろう。 二00七年九月に企業が所有する三 七六㎡の土地、0八年三月には独立 行政法人水資源機構が所有していた 二四五㎡の土地といった具合に、リ ーテックはオリックスから資金提供 を受けながら次々と近隣の土地を買 い進めた。リーテックによると、赤 坂六丁目のこれらの土地は不動産市 況が冷え込む前は一〇〇億円以上の 鑑定評価が出ていたという。旧赤坂 一号社宅の郵政公社の評価額は五億 円あまりだから二〇倍以上の金額だ。 現場を訪れてみると、リーテックと オリックスが組んで進めてきたプロ ジェクトがどこの土地かはすぐにわ かった。郵政公社が売った旧赤坂一 号社宅はすでに建物はなく原っぱの ような空き地。水資源機構からリー テックが購入した土地には寮のよう な建物は建っているが、人の出入り はない。旧赤坂一号社宅前で近所の 住人に聞いてみると、 「リクルートが 買ったんですよ」 。リクルートコスモ スと思い違いしているようだが、リ ーテックとオリックスについてはま ったく知らないようで名前を聞いて もきょとんとしていた。 ◎民営化ビジネスの虚実 会社の関係図を見ながら改めて考
えてみると、影の部分、ゴールドマ ン・サックスやリサ・パートナーズ やオリックスが取引している領域は まるで不可視領域であるかのようだ。 ティー・ジー・ファンドから不動 産を買った人はゴールドマン・サッ クスが見えていないし、赤坂六丁目 プロジェクトの隣に住む人はオリッ クスもリーテックも知らない。郵政 公社が一八六件の不動産を引き渡し、 六社グループが二一二億円を支払う。 二本の矢印であらわされた動きだけ を「官から民へ」と捉えると、全体 像は見えない。ビジネスの領域は影 の部分まで広がっているからである。 「郵政利権」が醸成されるのなら、 不可視の領域にこそ目をこらさなけ ればならない。 ◎高橋副総裁の懸念 実をいうと、二回目のバルクセー ルが終わった直後に、郵政公社幹部 が懸念の声を洩らしている。三月二 〇日に開かれた「不動産処分検討委 員会」の席上だ。委員長を務める郵 政公社の高橋副総裁は「昨年のバル クでは、リクルートは転売して相当 儲けたと闘いている。グルーピンク の方法やもっと高く売れる方法を考 える必要がある」と発言している。 「昨年のバルク」とは一回目、 「リク ルート」はリクルートコスモスのグ ループのことだ。どのような意図で
発言をしたのか、高橋氏に直接たず ねてみると、「郵政公社の内部では 『バルクセールはうまくいった』と いう話になっていたんですよ。しか し外部の不動産関係者に聞いてみた ところ、彼ら(落札企業グループ) は損なんかしてませんよ、といわれ た。 『高く売った』といっているけど 本当なのか、もっとやり方を考える 必要があるんじゃないかということ でああいう発言をしたわけです」 。外 部の不動産関係者が「転売で儲けて いる」ことを知っていたのだから、 業界の一部で噂になっていたのかも しれない。不思議なことに、高橋副 総裁がかなり踏み込んで疑問を呈し たのにもかかわらず、特段の改善策 も講じられないまま三回目のバルク セールが実施され、やはりコスモス イニシア(旧リクルートコスモス) のグループが落札している。売却さ れた不動産は一七八件、売却額は一 一五億円だった。二〇〇七年二月の バルクセールに関わった関係者が解 説した。 「バルクセールが成立するの かどうか心配でした。優良物件が少 なかったし、不動産業界も二回目の ときのようなイケイケドンドンの雰 囲気はまったくなかった。どこのマ ンションに売れ残りがでたとかいう 話が聞こえてきたりして」 。小泉政権 を引き継いだばかりの安倍政権下で三回目のバルクセールは実施された が、投資ファンドの影は消える。一 方で、三度も連続して同一企業グル ープが落札した気の緩みからか、お かしなことが頻出している。たとえ ば、入札に参加した企業の顔ぶれ。 コスモスイニシア(旧リクルートコ スモス)グループと、有限会社駿河 ホールディングスと合同会社CKR F4の二社グループの二グループの みの入札だったが、CKRF4の代 表は一回目でリクルートコスモスの グループに入っていたCAM6の代 表と同じ人物。前にも述べたように ケネディクスの社員だ。駿河ホール ディングスの代表に至っては、読売 新聞の収材に「名義貸しだけなので、 入札についてはわからない」と、名 前を貸しただけであることを認める 発言をしている。おかしなことは他 にもある。バルクセールの仲介をし ていた中央三井信託銀行は入札前に、 落札企業が転売する相手先を探して 購入希望価格まで聞きだしていた。 鳥取県の岩井簡易保険保養センター について、東京都内のある不動産業 者は中央三井信託銀行の担当者から 「いくらか」と聞かれ、 「三〇〇〇万 円」と答えた。買い付け証明まで提 出したが、入札前に再び「六〇〇〇 万円にならないか」と打診された。 のちに、リーテックの子会社の有限
会社レッドスロープがたったの一万 円で郵政公社から購入し、地元の福 祉施設に六〇〇〇万円で転売してい たことを知ったという。 ◎ファンド時代の終焉 オリックスとリーテックが二人三 脚で進めた赤坂六丁目プロジェクト の後日談である。もともと郵政資産 「旧赤坂一号社宅」をリーテック子 会礼のG7ー1が手に入れたところ からスタートした郵政ビジネス。オ リックスから軍資金を得てリーテッ クが周辺地を買い進めたことは既に のべた。土地の所有権はリーテック にあるが、登記を確認すると、すべ ての不動産にオリックスが「代物弁 済予約」を0八年九月末に設定して いる。リーマン・ブラザーズが破綻 した直後だ。カネが返せなくなれば 土地は貰うというわけだが、リーマ ン・ショックを境に、プロジェクト に黄信号が点っていることを物語っ ている。そもそもオリックス自身、 一時株価が急落し、厳しい状況にお かれていた。郵政公社のバルクセー ルをすべて落札したコスモスイニシ ア(旧リクルートコスモス)は多額 の債務超過に陥って、後に私的整理 の新手法である事業再生ADRを申 請した。郵政公社のバルクセールを 振り返ると、小泉政権下で実施され た一回目、二回目は投資ファンドが
触手を伸ばしてきたが、安倍政権下 の三回目になるとファンドの影は消 えている。それは一つの予兆であり、 不良債権ビジネスの手法を延長して 民営化事業を推し進めることが難し くなっていることを示していた。そ してリーマン・ショックがとどめを 刺す。投資ファンドの終焉である。 かんぽの宿問題では、一括譲渡を落 札したオリックスに鳩山邦夫総務大 臣が待ったをかけ、郵政民営化の監 督兼脚本家、竹中平蔵慶大教授は強 く反発し、 「かんぽの宿は不良債権」 と言い切った。郵政民営化の根底に 横たわる発想が口をついて出てきた のだろう。麻生政権下で鳩山大臣は 更迭され、西川善文氏は日本郵政株 式会社の社長の椅子にとどまった。 小泉構造改革推進派がところを替え てすさまじい抵抗勢力となり、西川 善文社長を守り通したのである。政 局の次元では巻き返しに成功したけ れども、しかし金融資本の流れにま かせ、すべてを洗い流してもらう金 融資本による「改革」の時代が終焉 した。はしなくも郵政民営化ビジネ スの現状がその終焉を証明した。
●学生時代に故鳩山邦夫代議士との 付き合いはなかった。学習院と教育 大付属大塚の卒業生の御曹司だから、 ズボンに蒼線の入ったスマートな制 服を着た姿を学内でみかけた記憶は
ある。赤いスポーツカーの愛車を見 たこともあったが、直接口をきいた ことはなかった。成績抜群だったそ うだ。当方はトレパン姿で授業に出 て気位の高い教授から怒られた田舎 者の貧乏学生だった。舛添要一氏と の方が、同じ西洋政治史のゼミに所 属していたから話すことが多かった。 後に、都知事選挙で石原慎太郎氏の 圧倒的な人気の下で、二人が競争し て立候補して両方とも落選したこと があった。鳩山氏と、赤坂の蕎麦屋 で月いち集まって清談会を開いたの は卒業してからだ。テレ朝の萩谷順 氏、法政大学の下斗米伸夫教授、南 足柄市長(当時)の澤長生氏などが 常連だった。幹事役の高橋進東大教 授が急逝して立ち消えになった。久 留米に選挙区を変えた時は困った。 同級生の古賀一成君と競争すること になり、筆者は古賀氏を応援して、 選挙妨害にならないようにして、ど うせ鳩山邦夫氏は当選するから古賀 君をせめて比例区で当選させて欲し いと街頭演説を筑後の大川市内でぶ った。タイヤ会社の会社ぐるみの選 挙で、休日に選挙運動をせずに当選 する実力には驚いた。総務大臣の時 は殊更に会わないようにした。入智 恵でもしたと思われるのが厭だった のだが、かんぽの宿の事件の最中は 特にそうだった。 (つづく)

Kuroshio 185

日本郵政民営化の闇を暴く 上

●ふと顧みると、遠い昔の話のような 気がするが、まだ五年にもならない。 竹中平蔵氏による同僚の研究成果の盗 用問題をはじめとして、長年にわたり 同氏を取材対象に追い続け、その取材 の成果の集大成として『市場と権力 「 改革 」 に憑かれた経済学者の肖像』 ( 講談社)と題する単行本を佐々木実 氏が世に問うたのは二〇一三年の五月 のことであった。佐々木実氏は一九六 六年生まれ、日本経済新聞記者を経た フリーのジャーナリスト。 佐々木実氏のこの労作は同年の新潮 ドキュメント賞と翌年の大宅壮一ノン フィクション賞を受賞した。出版界に とっては軒並みに取り上げて然るべき 大きな英誉である。にもかかわらず、 新聞各紙は何を怖れているのか一片の 書評すら掲載しようとはしなかった。 筆者の知る限りでは、共同通信の配信 を受けて新潟日報だけが書評を出した。 その『市場と権力』の第七章は郵政 民営化の闇について詳述している。 同氏による「郵政公社『資産売却』 の闇 民営化ビジネスの虚実」と題す る記事が月刊誌に掲載されたが、閲覧 が困難となっている。だが幸いにも、 気鋭のジャーナリストによる渾身のレ ポートの要旨を筆者はメモしていた。
佐々木実氏の快諾も得て、郵政民営化 の無明の闇に光をあてる 縁 にすべく、 よすが 佐々木実氏の記事のメモを以下に転記 することにした。 豪州のトール社を買収して四〇〇〇 億円を越える巨額の損失が確定したこ とが表面化したこともあり、民営化の 開始早々から開始された不動産売買に 対して、関係者からも指摘されて懸念 の声が上がっていた。ただし、不動産 売買そのものはすでに郵政公社時代か らバルクセールとして始まっていたの だ。こうしたことを記録に残し、外国 勢力が主力になった郵政民営化の闇に 光を当てることは、日本再興を目指す 者たちにとって必ずや貴重な参考情報 となるはずで、時宜にも叶っていると 信じる。 ●日本郵政が「かんぽの宿」をオリッ クス不動産に一括売却しようとしたと ころ、鳩山総務相 ( 当時 ) はストップ をかけた。白紙撤回に至ったことが大 々的に報道されたことは未だに記憶に 新しい。しかし日本郵政は、前身であ る郵政公社時代にも一括売却 ( バルク セール ) の手法を用いて六〇〇件を超 える大量の資産売却を行なっていた。 このバルクセールの実態はどのような ものだったのか。転売先や資金の出所
にまで視野を広げて追跡したところ、 謎の有限会社や小泉政権時代に「勝ち 組」としてもてはやされた企業の名前 などが浮かび上がってきた――。民主 党の城島光力氏に話を聞いたのは総選 挙の準備に忙しい二〇〇九年七月のこ とだった。 「いま思い出しても腹が立 ってきますよ」落選中の身の城島氏は そう言うと、六年前の出来事を昨日の ことのように話しはじめた。きっかけ は二〇〇三年五月の衆議院厚生労働委 員会での質疑だった。民主党の「次の 内閣・雇用担当大臣」でもあった城島 氏は労働分野の規制緩和に強い懸念を もっていた。 「派遣期間を一年から三 年に延長し解雇もしやすくする法案で した。オリックスの宮内義彦さんが議 長の総合規制改革会議から出てきた流 れだ。それでこの会議のメンバーにつ いて調べてみようと思ったわけです」 ◎「最高権力者」 調べてみると、人材派遣に関わる経 営者が委員のなかに二人いることに気 づいた。ザ・アール社長の奥谷禮子氏 とリクルート社長の河野栄子氏。ザ・ アールのウェブサイトを見てみると、 第二位株主がオリックスで、主要取引 先はリクルートと記されていた。総合 規制改革会議は首相の諮問機関。小泉 総理が提言を尊重するので政策への影 響力は大きい。ビジネスでつながりを もつ三人がそろって委員というのは問
題ではないか。城島氏は厚生労働大臣 に質した。城島氏は国会の外で思わぬ 反撃に遭う。奥谷氏自らが議員会館の 部屋を訪ね激しく抗議してきた。抗議 は執拗で、面談のあとも、衆議院厚生 労働委員長宛に内容証明郵便を送付し、 「不適切な部分を速記録から削除」す ること、城島議員を「悪質な場合は処 分」することを求めてきた。だがこれ で終わりではなかった。追い討ちをか けるように、総合規制改革会議議長の 宮内氏も抗議文を送りつけてきた。 「貴職の見解を問いたい」 「総合規制 改革会議に対しての大変な侮辱であ る」 「到底承服できるものではない」 ……まるで目下の者を叱責しているか のような文章だった。 憲法第五一条は国会議員に国会での 発言の責任を問われないという免責特 権を与えている。抗議を逆手にとって 問題にしようと城島氏が考えていた矢 先、後に大臣にもなる自民党の有力議 員が声を潜めるように忠告してきた。 「城島さん、あなたのいうことはその とおりだよ。でもね、宮内義彦はいま 日本の最高権力者だ。戦ってもいいこ とは何もない」 。ぼくは「郵政民営化 ビジネスは政官業の癒着よりひどいじ ゃないか」と指摘して、宮内さんや奥 谷さんの猛烈な怒りを買った。ずばり 本質を衝かれたから彼らはあんなに激 しく怒ったんだと思いますよ。過剰反
応の背後に利権の存在があるのではな いか。城島氏は郵政民営化の利権につ いて調べる決意を固めていたが、頓挫 した。〇五年九月の「郵政選挙」で落 選してしまったからだ。奥谷氏は郵政 民営化後の日本郵政株式会社の社外取 締役に就任している。郵政審議会委員 を務めるなど郵政事業とは縁が深いが、 奥谷氏が経営する人材派遣会社ザ・ア ールが日本郵政公社からマナー研修な ど総額七億円近い仕事を受注していた ことが明らかになっている。オリック ス不動産が「かんぽの宿一括譲渡」を 落札したことに端を発したかんぽの宿 騒動で、宮内氏が渦中の人になったこ とは記憶に新しいところだ。郵政事業 にからんで両氏が仲良く登場してきた のは偶然だろうか。かんぽの宿一括売 却はまさに郵政資産の民間市場への放 出だが、郵政資産の売却には前史があ る。日本郵政公社(郵政公社)時代の 不動産の大量売却だ。郵政公社は二〇 〇三年四月に発足した。政府が全額出 資する国営企業で、郵政事業庁から郵 便、郵便貯金、簡易保険を引き継いだ ものの、郵政民営化が蒸し返された 「郵政選挙」で小泉政権が大勝して、 郵政事業は分割された株式会社にゆだ ねられて短命に終わる。日本郵政株式 会社にとって替わられる形で郵政公社 は〇七年九月に解散した。活動期問は わずか四年半だったが、この問、保有
する不動産を大量に売りさばいていた。 売却した不動産は優に六〇〇件を超え る。北は北海道から南は沖縄まで、土 地や建物を短期問に大量に売れたのは、 「バルクセール」という売却手法に依 るところが大きい。たくさんの不動産 をひとまとめにして売る方法だ。もと もと不良資産を大量に抱えた銀行が不 良資産の処理を迅速に進めるために用 いた方法で、買い手の付きにくい不良 物件と資産価値の高い物件を抱き合わ せて売りに出す。米国でも日本でも、 不良債権問題が深刻化した時期、不良 資産を金融機関から早く切り離すため の資産流動化策が打ち出され、バルク セールなどの取引がしやすくなるよう 制度的な環境が整えられた。もっとも、 郵政公社がバルクセールで売却した不 動産は全国各地の社宅や郵便局舎建て 替え用地などで、東京や大阪あるいは 地方都市の一等地もたくさん含まれる。 不良資産の処分と同じ方法を逃んだの はなぜか、その経緯はいま一つはっき りしない。二〇〇四年一〇月、郵政公 社は唐突に「不動産売却促進委員会」 なるものを立ち上げている。郵政公社 の高橋俊裕副総裁 ( トヨタ出身)が委 員長、執行役貝七人が委員という構成 だ。初会合の議事録に、委員の奇妙な 発言が記されている。 「この委員会で 何を決めるのか。バルク売却すること を決定するのか。なぜバルク売却する
のか」 。こうした発言が出たのは、初 会合で「バルクセールの必要性」を説 く資料がいきなり委員に配られたから だ。資料を作成した事務局は不動産売 却を批当する施設部門。 「売れ残しを なくすために行なう。資料の売れ筋欄 にあるようになかなか売れない物件も ある。これを売れやすい物件と併せて 売却する予定」と説明。しかし別の委 員だちからも、「情報公開はどうする のか」 「売却物件の全体額はいくらか。 データとしてないのか」などの声が相 次いでいる。ちなみに高橋委員長は出 張で欠席している。リクルートコスモ スが三回落札。結局、郵政公社は大型 バルクセールを三回実施する。ひとま とめで売りに出した不動産は〇五年三 月が六〇件、〇六年三月が一八六件、 そして〇七年三月に一七八件。合計四 二四件で売却総額は五〇〇億円近くに のぼる。驚くことに、すべて同じ企業 グループが落札している。リクルート コスモス(現在はコスモス・イニシ ア)を代表とするグループだ。郵政公 社から一括購入した不動産は落札した 企業グループ内で分配される。どの企 業に何件渡ったかを調べると、リクル ートコスモスは大きな不動産を収得し てはいるものの物件数は少ない。残る 多数をほかのメンバーが購人している わけだが、転売しているケースがほと んどで、二回三回と転売が繰り返され
ている例も珍しくない。不動産の流れ を追いかけると、奇妙な事実が顔を覗 かせる。郵政公社から物件を購入した メンバー企業が購入直後に会社ごとフ ァンドに買収されていたり、転売リレ ーに登場する実態不明の会社を追跡す ると有名企業が後ろに控えていたり、 複雑怪奇な取引関係は民営化ビジネス の虚実を物語る。〇五年三月の初めて のバルクセールから見ていく。入札に はリクルートコスモス、ゴールドクレ スト、長谷工コーポレーションをそれ ぞれ代表とする三つの企業グループが 参加した。売却される不動産は六〇件。 リクルートコスモス・グループが一六 二億円で落札した。メンバー企業と購 入件数は次のとおり。株式会社リクル ートコスモス ( 一件 ) 、株式会社リーテ ック(五件)、株式会社穴吹工務店 (一件) 、株式会社穴吹不動産センタ ー ( 五件 ) 、有限会社CAM5(リクル ートコスモスとの共同購入、二件) 、 有限会社CAM6 ( 四六件 ) 、グループ 代表のリクルートコスモスは当時リク ルートグループに屈する不動産会社。 実はこのバルクセール直後にリクルー トグループから独立する。リーテック はリクルートコスモス出身の社長が二 〇〇〇年に設立した会社。穴吹工務店 は香川県高松市が本拠で、全国でマン ションの建設・販売や不動産売買など をしている。穴吹不動産センターはグループ会社だ。残る二つの有限会社、 CAM5とCAM6はリクルートコス モスが出資した特別目的会社 ( SPC、 特定の不動産取引のために設立された 会社) 。リクルートコスモスは大型物 件を獲得してはいるものの、購人物件 数は少ない。物件数でいえば、主役は 全体の七七%にあたる四六件を単独で 手に入れたCAM6だ。 CAM6に ついて、リクルートコスモスは「弊社 が設立したSPCに相違ない」という 関係証明書を郵政公社に提出している。 ところが郵政公社から不動産を購入し た直後に、ケネディクスという企業に 出資持分の五〇%を取得されている。 ケネディクスの関連会社になったわけ だが、まもなくケネディクスはCAM 6を「スティルウォーター・インベス トメント」と改称し、郵政不動産を次 々と転売している。ケネディクスは米 国の大手不動産会社ケネディ・ウィル ソン・インクの日本の拠点として九五 年に設立された。不動産や不良債権へ の投資を行なっている。CAM6はバ ルクセール前に設立されたが、設立時 から取締役(代表者)はケネディクス の中堅幹部社員で、郵政公社のバルク セールにケネディクスが投資すること はあらかじめ決まっていたとみていい。 CAM6の取締役には後に米国穀物メ ジャーのカーギルの関係者も就任して いる。カーギルからも出資を受けた可
能性がある。 ◎資金源はオリックス CAM6が購入した不動産を調べてみ て意外なことがわかった。購入した不 動産四六件のうち二二件がオリックス の担保に入っていた。福岡香椎用地 (郵政公社の評価額約二七億円) 、神 奈川県葉山用地(同約一八億円) 、北 海道函館用地(同約九億円)はいずれ も極度額二八億八〇〇〇万円の根抵当 権を売買日に仮登記。小さな物件はま とめて共同担保にしている。CAM6 が郵政公社の不動産を大量に買い付け ることができたのは、オリックスが資 金を提供していたからだった。落札し た企業グループにオリックスは入って いないが、全体のスキームの中にあら かじめ参加していたとみなしていいだ ろう。表には顔を見せない資金提供者 だ。いずれにしても、かんぽの宿問題 の四年も前から、オリックスは郵政資 産ビジネスと関わりをもっていたこと になる。リクルートコスモスは郵政公 社の初めてのバルクセールを落札した 二ヶ月後、リクルートグループからの 独立を発表する。ユニゾン・キャピタ ルが運営する三つのファンドが九〇億 円を出資、ユニゾンはリクルートコス モスの六〇%強の株を保有して筆頭株 主になり、経営権を掌握する。ユニゾ ン・キャピタルの創業者で代表の江原 仲好氏はゴールドマン・サックスで活
躍した経歴をもち、同社勤務峙代に日 本人として初めてパートナーに選ばれ ている。ところで、オリックスがリク ルートコスモスと資本関係をもつのも リクルートグループから独立したとき からで、優先株を引き受けて二〇億円 を出資している。ユニゾン・キャピタ ルの方とも接点がある。ちょうどリク ルートコスモスの経営権を握るころ、 ユニゾン・キャピタルは経営への助言 機関「エグゼクティブ・カウンシル」 を社内に設け、メンバーの一人として 宮内義彦氏を迎え入れた。リクルート コスモスはリクルートグループから独 立したあとも、郵政公社のバルクセー ルを立て続けに落札していく。参議院 で郵政関連法案が否決された後、 「郵 政民営化の是非を問う」と訴える小泉 総理が衆議院を解散、〇五年九月の総 選挙で大勝した。郵政関連法案の作成 を一手に取り仕切った竹中平蔵郵政民 営化担当大臣は総務大臣も兼任、郵政 公社を所管する総務省に乗り込む。大 臣は郵政公社の資産売却に関する権限 も持っていて、二億円以上の資産を売 却する場合、郵政公社は総務大臣の認 可を受けなければならない。完璧な郵 政民営化体制が敷かれるなかで実施さ れた二〇〇六年三月の郵政公社バルク セールは、最大規模のものとなった。 一括売却された不動産は一回目の三倍 を上回る一八六件。当時郵政公社で資
産売却を担当していた関係者は、売却 リストにたくさんの社宅が入っている のを発見して驚いた。 「どうしてこん なに社宅を売るのかと同僚に聞いたら、 社宅売却計画があるとかで、その初年 度なんだと言ってました。いつそんな 計画ができたのかはわかりません」 。 郵政公社の当時の内部資料を見ると、 二回目のバルクセールの核となる目玉 物件が記され、例えば東京では 「 国分 寺泉町社宅用地 」 、 「 旧赤坂一号社宅 」 、 「旧中目黒三丁目社宅」などが挙げら れ、いずれも地価が極めて高い。入札 前から問い合わせが殺到、実際の入札 には一一社が参加、住友不動産、野村 不動産、丸紅などのほか、オリックス ・リアルエステート(現オリックス不 動産)なども参加している。結果は、 リクルートコスモスのグループが再び 落札。落札額は二一二億円だった。 ●郵政民営化とは、駅前の一等地を財 閥がぶんどり合戦をすることだと揶揄 する向きがあった。東京駅前は三菱地 所とJR東日本、札幌は三井不動産、 名古屋は名工建設、博多はJR九州と の合弁で高層ビルが建った。大阪は、 住友が勧進元になってビルを建て、東 京でディズニーランドを経営するオリ エンタルランドが協力してカナダのサ ーカスの劇場を入れる話もあったが、 まだ更地のままである。 (つづく)

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